Rauber Kopsch Band1. 23

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B.関節学各論Spezielle Gelenklehre

I. 脊柱の連結Juncturae columnae vertebralis

1.各脊椎間の靱帯

1. 椎間円板 Disci intervertebrales, Zwischenwirbelscheiben(成人でふつう23個ある) (図381, 383, 385, 386, 392395).

 第2頚椎から仙骨に至るまで,それぞれ2つずつの椎体を結合するもので,次の諸部分からなっている:

1. 椎体の上下面に接する2つの軟骨層

2. 線維軟骨と結合組織とでできている外方の輪状の層すなわち線維輪Anulus fbrosus, Faserring.

3. 中央の軟かい核. これは髄核Nucleus pulposus, Gallertkernとよばれ,線維軟骨と脊索の膨大した遺残とからなる(図381, 383).

 ただしこれら各部はたがいにはっきり区分けされているのではなくて,全く自然に移行し合っている.

 仙骨も初めには他の脊椎間と同じような椎間円板をもっているのであるが,各仙椎の骨結合が時を追つて仙骨の下部から上部へと進行するにつれて,椎間円板が完全に退化してしまうのである.

 仙骨と尾骨の間にも, また個々の仙椎が骨結合していない場合にはそれらの間にも椎間円板があるが,そこには髄核が存在しない.

 仙骨と第1尾椎のあいだの結合は仙尾結合Symphysis sacrococcygicaとよばれる.

 頚椎の椎体には外側に椎体間関節Zwischenzvirbelkörpergelenke(Luschka)という小さい関節がある.

 形と大きさ:椎間円板の形は椎体の形と全く一致し,頚部と腰部ではソラマメ型で,胸部ではハート型である.頚部と腰部では椎間円板は前の方がうしろの方よりずっと厚い.この厚さのちがいは腰椎と仙骨のあいだの椎間円板でとくに大きい.椎間円板の厚さは胸部脊柱の中ほどで最もうすく,腰部で最も厚い.すべての椎間円板の厚さを合わせると可動脊柱の全長の1/4をこえる.

 結合様式とはたらき:椎間円板による2つの椎体の結合は一種の軟骨結合である.椎間円板は各椎体をしっかり結合しながらも, かなりの運動性をゆるし,クッションとしても働いているのである.

2. [椎]弓間靱帯Ligamenta interarcualia(成人では23ある).

 この靱帯は第2頚椎以下,1つの椎弓から次の椎弓へと伸びている.ほとんど完全に弾性組織からなるので,黄色い色調を呈している.この靱帯は関節包とともに,脊柱管を椎間孔だけを残して完全に閉鎖している.その中央部がいちばん厚くて,外側縁は頚部脊柱では関節突起にまで達している.胸部および腰部脊柱では関節突起の関節包のなかにまで続いている(図401, 403).

 結合様式とはたらき:弓間靱帯による2つの椎弓の結合は弾性靱帯結合である.脊柱の屈曲や回旋にさいして,この靱帯が引き伸ばされ,その後ふたたびちぢむ. そのさいこの靱帯はしわが寄つたりすることがないのであるが,このような性質はもし膠原線維性結合組織でできていたら無理であろう.

3. 棘[突]間靱帯Ligamenta interspinalia (図383, 385, 386).

 相隣る2つずつの棘突起のあいだの空間は,この突旭の根から尖端まで,膠原線維とわずかの弾性線維からなる靱帯で占められている.この靱帯は腰部で最もよく発達している.

[図381] 椎間円板(×1)横断.

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4. 棘[突]上靱帯Ligamentum supraspinale (図383, 385, 400).

 この靱帯は棘突起の尖端をたがいに結合する強固な縦走線維束からなる.棘突起の尖端の上をこえて伸びているので,第7頚椎から仙骨まで一体をなしている.

 頚部では棘上靱帯のかわりにきれいに交錯した線維束の集りである項中隔Septum nuchae, Nackenbandが存在する(図386).項中隔は両側の筋群を分ける三角形のうすい中隔であって,弾性線維と膠原線維からなり,第7頚椎の棘突起から外後頭隆起にまで張られている.項中隔は上にゆくほど前後幅を増して外後頭稜の全体に付着する.各棘突起から強力な線維束が項中隔の全体の線維塊のなかに放射状にだされている.

 動物では項中隔がほとんど純粋に弾性組織性であり,膠原線維を非常に多く含むヒトの項中隔よりずっと強くできている.

5. 横突間靱帯Ligamenta intertransversaria:

 各横突起間の線維性の結合で,全体として発達が弱い.

 腰部ではかなり厚い膜をなし,胸部では筋肉と密接な関係をもつ細い線維束からなり,頚部ではわずかな線維から威つている(図400).

 最下の仙椎の横突起(外側部)は第1尾椎の横突起と外側仙尾靱帯Lig. sacrococcygicum lateraleによって結合されている(図384).この靱帯の骨化は第1尾椎の仙骨への同化の現われの一部である.

6. 椎間関節の関節包Capsulae articulares articulorum intervertebralium.

 関節突起の縁から起って,両関節面のあいだにある関節腔を包むものである(図385, 397, 398, 401, 403).脊柱の頚部では胸部や腰部よりこの関節包がゆるくて広い.

 仙骨角と尾骨角とは仙尾関節靱帯Ligg. sacrococcygica articulariaによって結ばれている.尾骨の横突起と仙骨の外側部とのあいだには外側仙尾靱帯Lig. sacrococcygicum laterale(図384)がある.

2.脊柱全体の靱帯

I. 前縦靱帯Ligamentum longitudinale commune ventrale

 この靱帯(図393, 395)は椎体の前面にあって,後頭骨の体と環椎の前結節から起り,第1仙椎まで伸びており,下にゆくほど幅を増して強大になる.一番深くにある線維は隣りあう脊椎どうしを結ぶだけであるが,表層の部分は4~5個の脊椎をまたいで伸びている.この靱帯と椎体との結合は強固であるが(Poirier, Fick),椎間円板とはあまりしっかり結合せずに,その上をとび越えている.--椎体の側面にもこれに相当する何本かの線維束が細いパラパラの束をなして,隣りあう脊椎どうしを結んでいる. 前縦靱帯は仙骨の第2仙椎の前面で骨膜と結合して一旦終り,仙尾結合にいたってまた前仙尾靱帯Lig. sacrococcygicum ventraleとして現れる.しかし前縦靱帯が仙骨の全長を走ることも時どきある.

II. 後縦靱帯Ligarnentum longitudinale commune dorsale

 この靱帯(図392, 394)は脊柱管の前壁, すなわち椎体の後面に接しており,前縦靱帯より弱い.そして上部では下部よりも幅が広い.頭蓋腔内で後頭骨の体から起り,仙骨にまで伸びている.頚部では幅が一様であるが,これに反して胸部と腰部では椎間円板のところで幅を増し,椎体の中央のところで幅がせまくなっている.この靱帯は椎体の縁および椎間円板とは固く結合しているが,椎体の中央部ではこの靱帯の下に著しい隙間があって,そこはとくに静脈叢によって占められている.

 仙骨と尾骨のあいだでは深後仙尾靱帯Lig. sacrococcygicum dorsale profundumがこの靱帯のつづぎとしてみられる.深後仙尾靱帯は痕跡的な椎弓に相当する浅後仙尾靱帯Lig. sacrococcygicum dorsale superficialeという線維束で被われている.

 最後の尾椎から皮膚へ尾骨皮膚支帯Retinaculum caudale cutisという線維索が走り,そのために皮膚に尾骨窩Foveola coccygicaと呼ばれるくぼみができていることが稀でない.

 脊椎の靱帯と椎間関節に分布する血管および神経:多数の小血管が椎骨動脈ならびに肋間動脈・腰動脈・仙骨動脈から来ている.神経は脊髄神経から来る.

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[図382] 椎弓と弓間靱帯(4/5) 椎弓根を鋸で切って椎弓の前面を示す.

[図383] 第1~3腰椎とその靱帯の正中断(4/5)

[図384] 仙尾靱帯 後面(4/5)

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全体としての脊柱

 脊柱の長さはR. Fickによれば成人で(弯曲に沿って)72~75cmあり,身長の約45%に当る. (日本人では長谷部(1913)によれば男75.7cm, 女68.5 cmでいずれも身長の47%に当る.また植苗(解剖学雑誌1巻3号,1928)によれば男75.1cm, 女70.6 cmでいずれも身長の48%に当る.)そのうち11~14cmが頚部脊柱,27~30 cmが胸部脊柱,17~19cmが腰部脊柱,12~16cmが仙骨部である.

 脊柱の高さ(軸椎の歯突起の尖端と尾骨の尖端との間の直線距離)はKrauseによれば男60~70cm,女66~69cmで,これは全身長の約40%すなわち2/5に当るが,もちろんこの関係は一定ではない. Hasseによれば背の高い人は一般に下肢が長くて胴が比較的短い.

 胎児やごく幼い子供では脊柱の相対的な長さが大きいが,そののち成長とともに体肢がどんどん伸びるのに対して脊柱はあまり伸びず,思春期になってようやく両者のへだたりが均らされるのである.脊柱はドイツ人では23才,イギリス人およびフランス人では28~30才になってようやく決定的な長さに達するという.

 老人では脊柱の長さはかなり減少するのであって,その短縮は50才から90才までに7cmにも達することがある.その原因は弯曲が強くなることと,椎間円板の厚さが減ることである.

 起立時と横臥時の長さの差はH. V. Meyerによれば1.5~3.0cmである.

[図385]腰部脊柱とその靱帯 左側からみる(7/10) (第12胸椎と第1~4腰椎.第3・第4腰椎間関節包は切り開いてある)

[図386] 項中隔 左側からみる(7/12)

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脊柱の力学(図387391)

a) 脊柱の節構造

 脊柱は骨と靱帯で構成された一種の"不動結合性連鎖synarthrotische Kette"(R. Fick)ともいうべきものである.脊柱にはそれぞれの使命をもった一連の椎体すなわち椎体柱Wirbelkörpersäuleと一連の椎弓すなわち稚弓板Bogenplatteとが区別される.両者とも靱帯装置をもっており,前者は節のある1本の柱,後者は節のある1枚の板をなしている.椎体柱は体重を支える役目をなし,また椎間円板によって運動の大きさに対して決定権をもつ.これに対して椎弓板は運動の軌道と方向を決定するのである.そして両者がたがいに制限し合っている.

 仙骨は寛骨とかたく結合して骨盤をなしているので運動不能である.上位24個の脊椎も多数の靱帯結合によってその可動性が大いに制限されているので,隣りあう脊椎の相互間ではごくわずかしか動き得ない.しかしそれぞれではごくわずかな運動でも,それが24も集ると,脊柱全体の大きなはたらきが可能となるのである.

[図387] 脊柱の節構造の模型図

[図388] 脊柱の太さの増減

[図389] 固定されたテコとバネ装置 a固定台,hテコの腕,fまげられたバネ,pとp’荷重.

[図390] ヒトの脊柱と正中面上でのその弯曲を示す模型図(h背方, v腹方)直立位で環椎の前結節aを通る鉛直線 vは,第7頚椎 b,第9胸椎c,第3仙椎の屈曲部d,尾骨の尖端 eを通る.p岬角, s恥骨結合,1,2,3はそれぞれ頚,胸,腰部弯曲(腰 部弯曲は cまで達しない),4仙尾骨弯曲,h水平線,n規準結合線(すなわち恥骨結合上縁のうちがわと第3仙椎の中央とを結ぶ線),30°規準結合線が水平線となす傾角.

 脊柱の運動はすべてのがわへ可能であるが,主要運動は次のものである.

1. 正中面内での屈曲と伸展(前屈Anteflexionと後屈Retrroflexion)

2. 前額面内での屈曲と伸展(側屈Laterallflexion〉

3. 回旋運動(捩転Torsionと逆の方向への捩転,Retorsion)

4. バネ運動一脊柱が弯曲しているためにこれが可能である.

 これらの運動の大きさは脊柱の各部分によって異なり,また死体では生体におけるよりも大きく,さらに個人的に大きい差がある.

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 前屈後屈の運動範囲は頚部で最も大きく,腰部では後方へは頚部と同じ程度にまがるが,前方へは頚部の1/3にも達しない.胸部では前屈・後屈が最も小さく,しかも下部胸椎に限られており,ここでは後屈が最も小さく,前屈はそれよりや・大きい.

 屈曲と伸展の回転軸は,髄核の中央を通って左右にのびる水平の線である.しかし頚部ではこの軸がそれそれ下位の椎体の中央を通る.

 側屈は頚部で各側に約30°,胸部で約1000(肋骨を取りさった場合),腰部で約35°である.その回転軸・は髄核の中央をまっすぐ前後の方向に貫く.

 捩転は頚部で各側へ45°,胸部で40°,腰部で5°である.従って全脊柱は各側へ90°ねじれることになる.

 Weberによれば生体では体(脊柱と頭)の回旋は,両足でしっかり立っている場合, 各側へ180°である.そのうち72°は股関節・膝関節・足関節の分であるから,頭と脊柱の回旋としては各側へ約108°という数値が残ることになる.そのうち頭の回旋として各側へ約30. なので,これをさしひくと,脊柱の捩転角として78°が残るのである.

b) 脊柱の太さの増減(図388)

 脊柱は節をもった柱をなすが,この柱はどの場所でも同じ横断面をもつものでないことは,周知の通りである.横断面の形と径はすでに述べたような特有の消長を示す.しかし普遍的な見方をすれば,脊柱の形はこれと同様の負荷と固定の条件下にあって,しかもどの横断面にも均一な抗張力をもっようにでぎた物体の形にほかならないことが容易に認識される.

 このようなわけで,脊柱にはどの横断面にも危険な弱点がないようにできている.かりに脊柱がまっすぐだとしたら,人の脊柱では下部腰椎に弱点が存在することになるだろう.これに対処するために腰椎は横断面が大きいことを特徴としているのである.脊柱の径はそれより下の方では急激に減じてゆく.

c) 脊柱の弯曲(図208210, 390, 391)

 脊柱は節をもつ柱であり,また均等な抵抗力をもつ物鉢の原理に従ってつくられた柱であるだけでなく,さらに次に述べるような弯曲を示すものである.

α)正中面内の弯曲:前弯Lordoseと後弯Kyphose

 頚部・胸部・腰部の脊柱および仙尾骨には正中面内での弯曲がある.頚部と腰部の弯曲は前方に凸すなわち前弯であるが,胸部と仙骨の弯曲は前方に凹すなわち後弯である.

 これらの弯曲については新しい原理が問題となる.すなわち脊柱は何回か弯曲したバネと,固定されたテコの原理によって,荷重をさsえるのである.図389でhは水平におかれたテコで,a点で固定され,荷重pがかけられている.このテコの腕を,a点における固定はそのままにして,曲げてバネにすることもできる.荷重pが自由端にかけられている点は変りないが,今度はその重力線が他側に,すなわち支点aの後方に落ちる.こうなると弯曲したテコの腕は弾力のある抵抗で荷重を支えるようになる.そして荷重と弾性抵抗が等しいとき,この装置に平衡状聾がおとずれる.

 このことは立っている人の弯曲した脊柱についても認められる.人の脊柱の正中面内での弯曲は図390に示した.まず cpdという部分を見て,前の図のバネfとくらべていただきたい.脊柱のdp部分は仙椎の上半で,仙腸関節によって骨盤に固定されている.その次に来るのが重要な部分pcである.  c点は第9胸椎の椎体に相当する.この点は上肢をつけた体幹全体の重心にあたるので非常に重要な場所である.従って今述べた大ぎな身体部分の重さがこの点に集中すると考えることができる.つまりこの重さは c点においてバネpcに作用するのである.重力線は岬角のはるか後方,固定部の後縁に落ちる.バネpcはこの装置が体重と弾力との平衡状態になるまで,体重によって緊張させられるわけである.そしてその後は不安定でなく安定な平衡状態にはいるのである.一般に各仙椎が骨結合をしていることと,特殊な点としての仙骨の屈曲点d(第3仙椎の中央にあって関節部すなわち固定部の下端に当る)とを説明するヒントがここに見出されるのである.

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 ところで脊柱は単一の弯曲を示すものではなく,何度もまがったバネなのである.pcの部分につづいてcbの部分があり,さらにこれに baの部分が続く.頚部と胸部の弯曲は,それぞれ頭と上肢の重さを支えるバネとして役だっている.前方に凹の弯曲を示す胸部脊柱はまず胸部内臓を容れなければならず,この使命に最も適した形をしているのであって,この点は上述のバネとしての構造とよく両立している.上肢の重みが直接に胸部脊柱にかかるのは,胸骨と第1対の肋骨によってである.

 上に述べたことからわかるように,脊柱の両端間の距離はからだを水平に横たえると,直立姿勢でいっそう体重がかかっている場合より小さい.しかしからだから取り出された脊柱も,やはり圧力と張力の影響下にある.すなわち椎弓列を椎体柱から遊離させると,椎弓列は弾性線維性の弓間靱帯の取縮によって著しく短縮する(32~45mm).それをもとの長さにもどすのには約2kgの負荷を要する.つまり椎弓列はこれだけの弾力で椎体柱を圧しているわけである.じっさい椎体柱の頚部および腰部の弯曲は,椎弓列を分離すると薯しく弱くなる.このさいさらに前および後縦靱帯を除くと,椎体列はほとんどまっすぐになってしまう.

 新生児では脊柱のすべての弯曲がすでに存在してはいるが,完成しておらず,とくに岬角の突出がまだひくくて,腰部脊柱の弯曲の程度が相対的に弱い.

β)前額面内での弯曲:側弯Skoliose(図391)

 しばしば胸部脊柱(たいてい第3~第5胸椎のあたり)が右へ曲がっていることは,すでに古くから知られていた.この弯曲は,正中面内の諸弯曲と組みあって全体の弯曲像をつくるところの,前額面内の全弯曲系のほんの一端にすぎない.

 胸部の弯曲は右よりも左にまがっているものの方がいっそう稀である.左への弯曲があるときには(これは発育のとくに良い人に現われることがある),その上方および下方に続く弯曲も反対の側へ向いている.

γ)胎児の脊柱弯曲

 成人の体幹骨格における上述の弯曲を解釈するに当っては,また常にもっと早い時期の胎児における状態をかえりみる必要がある.新生児の脊柱については,正中面内のすべての弯曲がすでにわずかながら認められることをすでに記したが,これに反して側方への弯曲は,正常な新生児および生後2, 3年までの子供では,まだ存在しない(Gaupp).ところで胎生早期へとさかのぼって,胎児に存在する身体の弯曲をしらべると,次のような一般的結論を得ることは難くない.すなわちのちの脊柱に現われるすべての弯曲は,一部,はすでに胎児期に存在する身体の弯曲を,保存したり造りたしたりして,また一部はそれを造りなおしたり模様がえしたりして出来あがったものだということである.

δ)四足獣の脊柱

 一定の胎令の人胎児の脊柱弯曲は,四足獣の脊柱のかたちと非常によく似ている.

 この類似は結局, 両者とも腹方へ弯曲する腰部脊柱と,突出する岬角とをもたないことによるのである.こうして胸部・腹部および骨盤の内臓を包含する.腹方に凹の一大円蓋弓が存在するのである.直立したり立って歩いたりする成人示もつ前方に凸の腰部脊柱は,体幹の重心を仙腸関節と股関節軸より後方へ置こうという努力によって得られたものである.

[図391] 脊柱の右方への側弯(r)と左方への側弯(l)の模型図.m正中線,1,2,3,4はそれぞれ脊柱の頚部・胸部・腰部・仙骨部の側弯を誇張して示す.(Hasseによる)

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[図392] 後縦靱帯(1/3)

[図393] 前縦靱帯(1/3) H. Virchowの標本による.

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[図394] 後縦靱帯(4/5) (椎弓根のところを鋸で切ってある)

[図395] 前縦靱帯(4/5) H. Virchowの標本による.

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最終更新日 13/02/03

 

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