Rauber Kopsch Band1. 25

III.肋骨と胸骨の関節(図400404, 408)

 肋骨の結合は肋椎関節Articuli costovertebralesと胸肋連結Juncturae sternocostalesに分けられる.肋椎関節はa)肋骨小頭関節Articuli capitulorum(椎体との結合)および b)肋横突関節Articuli costotransversarii(横突起との結合)である.また胸肋連結は胸骨との結合である.

 そのほかになお, 各肋硬骨とそれに付属の肋軟骨とのあいだの結合,および第5~第9肋軟骨相互間の結合すなわち肋軟骨間結合Articuli intercartilagineiがある.

1.肋骨小頭関節Articuli capitulorum(図400, 401, 403, 404)

 関節面は胸椎体の肋骨窩Foveae costalesと肋骨小頭の関節面Facies articulares capituli costaeである.

 両面1: 0.5~1 mmの厚さの線維軟骨で被われている関節包はうすくて,両関節面の縁のすぐきわに付着している.

 特殊な装置としては第2~第10肋骨に線維軟骨性の関節間肋骨小頭靱帯Lig. capituli costae interarticulareがある.これは肋骨小頭の関節面を上下に分ける肋骨小頭稜Crista capituli costaeから起って椎間円板に至るもので,関節腔を2室に分けている.つまりここには2室性関節がみられるのである.

 関節包の前面は放射状に走る線維性補強靱帯で被われている.これが放線状肋骨小頭靱帯Lig. capituli costae radiatumとよばれるもので,肋骨小頭から起って線維が扇状にひろがり,この関節に関係する両脊椎および椎間円板に付着している(図404).

2.肋横突関節Articuli costotransversarii(図400, 401, 403)

 第1~第10肋骨のもつ関節面は肋骨結節の関節面 Facies articularis tuberculi costaeと横突起の肋骨窩Fovea costalis processus transversiであって,ともに0.3~1.3mmの厚さの硝子軟骨で被われている.関節包はうすくて,関節面の縁のずぐきわに付いている.

 特殊の装置は多数の靱帯のかたちで存在する.短くて太い肋骨結節靱帯Lig. tuberculi costaeは横突起の尖端から起ってほず横の方向に肋骨結節にいたり,関節包の後面を被っている.さらに補強をあたえているのがおよび外肋横突靱帯Lig. costotransversarium internum, externumと肋頚靱帯Ligg. colli costaeである.後者は短く太い線維束からなり,肋骨頚とそれに対応する横突起とを結合している.

 肋頚靱帯と横突起と肋骨頚のあいだに肋横突孔Foramen costotransversariumという隙間が残されている.これは形態学上重要なもので頚椎の肋横突孔に相当するのである.

 内肋横突靱帯は肋骨頚の上縁から広く起って上方に向い.ひとつ上の横突起と肋骨との下縁に付く.これにくらべると外肋横突靱帯はずっと貧弱で,肋骨頚の後面から起って,ひとつ上の横突起と関節突起との基部にいたる.

3.胸肋連結Juncturae sternocostales(図402, 408)

 第1~第7肋骨の結合は一部は軟骨結合,一部は関節である.

 関節面は第1~第7肋軟骨の前端と,胸骨の肋骨切痕である.後者は硝子軟骨のしばしば厚いおおいをかぶっている.関節包のはたらきをしているのは肋軟骨から起って胸骨の骨膜に移行する軟骨膜である(Fick).

S. 276

[図400]隣接する脊椎間および脊椎と肋骨のあいだの靱帯 後面(7/10),第8~第12胸椎と第8~12肋骨.

[図401]第9肋骨と第8および第9胸椎との関節結合(11/12)上からみる.

S. 277

裂隙状のせまい関節腔がたいてい第2~第5肋骨の胸肋関節Articuli sternocostalesにのみ存在している.なぜなら第1肋骨の軟骨はほとんど常に[1肋骨の]胸肋軟骨結合Synchondrosis sternocostalis costae primaeによって,また第6および第7肋骨はしばしば軟骨結合によって,直接に胸骨と結合しているからである.

 特殊な装置として関節内胸肋靱帯Lig. sternocostale intraarticulare(図402, 408)が挙げられる.

 この靱帯は線維軟骨板として,第2胸肋関節にはほとんど常に,第3胸肋関節にはわずか1/5例に,第4胸肋関節には1/10例に,ほかの関節にはいっそう稀に存在する.また補強靱帯として放線状胸肋靱帯Ligg. sternocostalis radiataがある.これは軟骨端から胸骨の前面へ放射状にひろがり,その下層および表層の線維ならびに他側のものと交叉し編み合って,胸骨膜Membrana sterniを形成している.

 これを前胸骨膜Membrana sterni ventralisと呼んで,胸骨後面にあって同じようにして構成されている後胸骨膜Membrana sterni dorsalisと対立させることがある.

 第6~第7肋骨の軟骨からは,これに相当するものとして肋剣靱帯Ligamenta costoensiformiaとよばれる補強靱帯が,剣状突起に向って内側下方へ伸びている.

4.肋軟骨間関節Articuli intercartilagihei (図402)

 第5または第6から第9までの肋軟骨は,たがいに関節突起を伸ばし合っていて,そこに関節をつくっており,その裂隙をまたぐようにして伸びだした軟骨膜が関節包をなしている.

5.肋硬骨と肋軟骨の不動結合Synarthroses costochondrales(Fick)

 肋硬骨とその肋軟骨とのあいだの結合である.成人ではその結合部で軟骨が石灰化している.となりの肋骨とのあいだには肋間靱帯Ligg. intercostalia(図400, 402)が張っている.これには外および内肋間靱帯Ligamenta intercostalia externa et internaが区別される.

 外肋間靱帯は最下の1つあるいは2つの肋間隙(ときに第1肋間隙も)には欠如する.この靱帯は外肋間筋のつづきにあり,いろいろ違ったぐあいに胸骨縁にまで伸びている.内肋間靱帯は同様に平らな, しかし存在の不定な線条として,内肋間筋の前部と外肋間筋の後部とを被っている.

 なお肋間靱帯の項でいうべぎことは,この靱帯がしばしば広く延びて,下部の肋骨から腰椎の肋骨突起の端や腸骨稜にまで張られていることである.肋骨突起からこの膜へ放射状の線維束が出ている.この膜を腰腱膜Aponeurosis lumbalisという.その中を比較的強い1つの線維束が,第1腰椎の肋骨突起から第12肋骨に達している.これが腰肋靱帯Ligamentum lumbocostaleである.

胸骨の各部の結合(図402, 408)

 胸骨結合Symphysis sterni.胸骨の柄と体のたがいに向き合った端は成入では表面を硝子軟骨層で被われ,両者の間にさらに軟かい線維軟骨層をはさんでおり,それも含めると全軟骨層の厚さは6mmに達する.この線維軟骨層の中に,裂隙状の関節腔ができていることもある.骨結合になっていることはむしろ稀である.

 これと似た線維軟骨性結合が胸骨体と剣状突起とのあいだにある.年をとると柄と体のあいだも,体と剣状突起のあいだも骨結合をするようになる.

胸郭の力学

 呼吸に役だつところの肋骨運動は挙上と下制にある.肋骨の挙上とともに肋軟骨が伸び,それによって胸骨が前方へ動かされる.肋骨の挙上と胸骨の前方移動の両者が胸郭をひろげるのである.

 肋骨の挙上は,小頭関節と肋横突関節に共通の1本の軸を中心にして,肋骨が回転することによって起る.つまりこれら両関節は一種の複合関節をなしており,力学的には肋骨後端の1個の回旋関節を構成するのである.

S. 278

[図402] 胸骨の関節結合

[図403] 第8肋骨と第7および第8胸推との関節結合(11/12)上方からみる.

S. 279

その回転軸は肋骨頚の縦軸に一致し(R. Fick),後外側に向っている.これらの関節の関節面が小さいわりに,肋骨前端における運動の幅がはなはだ大きいことは,肋骨が非常に長いからなのであって,小頭と頚の小さい運動に相当して,前端では大きい移動がおこるのである.

 この運動とともに,肋軟骨が胸骨に対して,前額方向の軸を中心としてねじれる.

 第11および第12肋骨は,いくらか後方へも動きうる.

[図404] 脊柱と肋骨をむすぶ靱帯(7/10) 前外側から.図400と同一の標本.

1-25

最終更新日 13/02/03

 

ページのトップへ戻る