Rauber Kopsch Band1. 29

4. 手の関節Articuli manus, Gelenke der Hand(図424, 429432)

 手の関節は視骨手根関節・手根間関節・総手根中手関節・第1手根中手関節・豆状骨関節・中手指節関節・指関節である.

 最初の2つの関節が狭義の手関節である.なぜならこの両者がいっしょになって,手ぜんたいの運動のときに働くからである.

a)橈骨手根関節Articulus radiocarpicus(近位手関節Proximales Handgelenk)

 この関節を構成しているのは手根骨のうち骨間手根間靱帯Ligg. intercarpica interosseaによってたがいに結合される近位列の骨(舟状骨・月状骨・三角骨)と橈骨であって,それになお関節円板が加わる.

 関節面は橈骨の手根関節面Facies articularis carpicaならびに関節円板の遠位面と,舟状骨・月状骨・三角骨の近位関節面とである.

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 前腕の関節面は1つの浅い卵円形の関節窩をなし,その長軸は横の方向にあって4~5cm, 短軸は1.5~2cmである.曲率半径は橈尺方向で4cm, 背掌方向で約2cmである.また橈尺方向(横の方向)の弯曲は中心角約70°,背掌方向(前後の方向)のそれは関節面の中央で中心角約65.の孤に相当している.橈骨の手根関節面は1つの隆線によって2つの小面に分けられており,その1つは舟状骨に,他は月状骨に対応する(図424).軟骨の厚さは各場所によって非常にまちまちである(0.8~1,15mm).この関節窩に接して関節頭として滑り動くのは舟状骨・月状骨・三角骨の近位面であって,これらの面はゆるやかな骨間手根間靱帯Ligg. intercarpica interossea(この靱帯は線維軟骨で被われる)によって結合されている.軟骨の厚さは舟状骨では0.8mm,月状骨では1.1 mm,三角骨ではたった0.2mmである.三角骨の関節面の状態と,それがどの程度に関節形成に与かるかは,大いに変化に富んでいる.関節頭は横の方向(橈尺方向)の弯曲が関節窩のそれよりも強くて,曲率半径は3cm,中心角約110°の孤に相当している.背掌方向の弯曲とその中心角は3つの手根骨でそれぞれ異なっている.

関節包はひろくて薄く,この関節における骨と軟骨の境界のすべてに密接して起っている.関節腔はしばしば下橈尺関節および手根間関節とつながっている.手根間関節とは舟状骨と月状骨のあいだの隙間によって通じていることが多い.さらに豆状骨関節との結合もしばしば見られる.滑膜ヒダの数と大きさは非常にまちまちである.

 特別の装置としては背側に1つ,掌側に2つの補強靱帯がある.すなわち背側橈骨手根靱帯Lig. radiocarpicum dorsaleは橈骨から起って斜めに遠位尺側方に走り,三角骨の背面に付く.また掌側橈骨手根靱帯Lig. radiocarpicum volareは前者よりはるかに強い靱帯で,橈骨の茎状突起と税骨の遠位縁から起る.この靱帯は幅のひろい隙間によっていくつもの部分に分れており,それらが斜めに遠位尺側方へ走って,月状骨・三角骨ならびに有頭骨・有鈎骨に付藩している.最後に堂側尺骨手根靱帯Lig. ulnocarpicum volareは尺骨の茎状突起の基部と,関節円板の掌側縁から起り,三角骨と月状骨に付く(図430).

 この関節の血管は背側および掌側手根動静脈網からくる.神経は正中神経の掌側前腕骨間神経と,尺骨神経の深枝からくるほか,さらに橈骨神経の背側前腕骨間神経と尺骨神経の手背枝からもきている.

b)手根間関節Articulus intercarpicus(遠位手関節distales Handgelenk)

 この関節をつくる骨は骨間手根間靱帯によって結合される近位列の手根骨(豆状骨を除く)と,同じく骨間靱帯によって結合される遠位列の手根骨である.

 関節面は舟状骨・月状骨・三角骨の遠位関節面と,大多角骨・小多角骨・有頭骨・有鈎骨の近位関節面である.

 近位列の手根骨の関節面は横の方向に波状を呈し,その波状弯曲はまず橈側1/3の部分では凸で,中央ほぼ2/3の部分は深く陥凹し,尺側の一番はしの部分はまた凸になっている.背掌方向での弯曲はそれぞれの骨ではなはだ異なっている,軟骨の厚さもまた非常にまちまちである(詳しくはWerner)を参照されたい)(Werner, H. :Die Dicke der menschIichen GeIenkknorpel, Inaugural-Dissertation Berlin 1897. (原著註)),遠位列の関節面は近位列のそれとは逆の弯曲を示していて,大小の多角骨は凹面をもって舟状骨の凸面に対している.また有頭骨と有鈎骨によって,近位方へ強く突出する関節頭がつくられて,これが舟状骨・月状骨・三角骨によってつくられる深い関節窩にはまっている.この関節頭は深く掌側へ, 月状骨および三角骨の下へはいり込んでいる.それぞれの骨の面の弯曲は非常にまちまちで,軟骨の厚さも不定である(くわしくはFickおよびWernerを参照されたい).

 関節包は関節軟骨の縁に沿って付いており,背側で弛緩し,掌側で緊張している.

 関節腔は陥凹に富み,しばしば(月状骨と舟状骨のあいだの隙間にょって)橈骨手根関節に通じ,また総手根中手関節ともつながっている.滑膜襞は多数みとめられる.横走する大ぎなひだが背側壁と掌側壁とに1つずつ存在する.

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 特別な装置としては背側と掌側に補強靱帯があって,背側および掌側手根間靱帯Ligg. intercarpica dorsalia, voiariaとよばれる.掌側の補強靱帯のうち,有頭骨から四周へ放散する線維束をまとめて放線状掌側手根靱帯Lig. carpi volare radiatumという.

 月状骨からは靱帯が1つも起らない(H. Virchow, Fick).掌側靱帯としては,そのほかに舟状骨から大多角骨にいたるものがある.また掌側橈骨手根靱帯の有頭骨に達する線維束も,遠位手関節の補強に役だっている.背側の補強靱帯は尺側より橈側でいっそう強力である.三角骨からは強い線維束が有鈎骨に達するが,舟状骨の背側面からは近位方へも遠位方へも,いうに足るほどの線維束は出ていない.これに対して舟状骨の背面の粗な隆起線から三角骨へと横走する1つの靱帯が張っており,これを背側手根弓状靱帯Lig. arcuatum carpi dorsale, "Bogenband"(Fick)とよぶ.この靱帯は有頭骨と有鈎骨によってつくられる遠位列の関節頭の上を越えて横に伸び,この関節頭をその関節窩の中へ上からおさえつけている.この靱帯から少数の線維束が遠位方へ枝分れして,遠位列のいろいろな骨に至っている.H. Virchowはこれらを手根間靱帯に算入していないが,Fickはそれに属すべきものと考えている.

 この関節の血管および神経は橈骨手根関節の場合と同じである.

[図429] 中指の軸を通る手の断面(1/3) 1. 橈骨,2. 月状骨,3. 有頭骨,4. 第3中手骨,5. 基節骨,6. 中節骨,7. 末節骨.

 手関節の力学:R. Fick(Handbuch, Bd. III,1911)によれば,両手関節においては骨の組合せが,有頭骨の中央を回転中心とする一種の球関節をなすようにできていて,そのため死体ではほとんどすべての方向に動かすことがでぎる.しかし生体で,能動的すなわち意識的に中手を前腕に対して縦軸を中心に回旋(回内および回外)することは不可能である.しかし手じしんは背・掌・橈・尺側いずれのがわへも動かすことができるばかりでなく,任意の斜めの方向にもまげることができる.これらすべての運動にさいして両方の主な関節にずれが起り,またその運動が大きい場合には,両列の各骨のあいだの小さい関節面にもずれが生じる.

 手の側屈運動Randbezvegungすなわちいわゆる橈屈尺屈Radial-und Ulnarabduktionにおける過程は,はなはだ複雑なものである.というのはこの場合,手根骨の両列の回転は1つの垂直軸(掌背方向の軸)を中心とする単純なものではなくて,両列がそれぞれ別の,しかも3つの主方向に対して斜めの軸を中心として回転するのである.すなわちR. Fickが生体においてレソトゲン線によって示したところによると,橈屈においては近位列の手根骨には側方へのずればかりでなく,掌側への屈曲と回内が同時に起るのである.この掌屈と回内運動は,手を橈屈するとき舟状骨が掌側へ,三角骨が背側へ移動し,ために三角骨が手背に凸出することによって,生体でも認めることができる.近位列のこのような運動は,橈屈のさいに大多角骨がそれに付着する筋によってひつばられて,橈骨の遠位端に向ってひきよせられるということを考えに入れると,容易に理解できる.それによって大多角骨は舟状骨(大多角骨は舟状骨の遠位面に背橈側において接している)の橈側部を排除しようとして,これを尺側へ押しやり,さらにこれを近位方および掌側方へ傾ける.こうして舟状骨は側屈と掌屈と回内をつきまぜた1つの回転をすることになり,舟状骨と結合する月状骨と三角骨もこれらの運動をともにせねばならないのである.尺屈のさいは以上と反対の蓮動がおこる.

 手の掌屈と背屈における運動の過程はもっと簡単なもので,この場合には手根骨の両列が,有頭骨の頭を通って横走する1つの軸のまわりを,だいたい同一の向きに回転する(R. Fick).

c)豆状骨関節Articulus ossis pisiformis, Erbsenbeingelenk(図430, 432)

 この関節をつくっている骨は三角骨と豆状骨である.

 両骨の関節面はたがいに大きさが一致しており,形はたいてい卵円形で,豆状骨の関節面は軽くくぼんでいるのに対して,三角骨のそれはほとんど弯曲していない.

 関節包はゆるくて薄い.そのため豆状骨は非常に大きい運動性をもっている.関節包は遠位縁を除いて,両関節面の縁のすぐきわに付いている.関節腔は全例の1/3近くまで橈骨手根関節と通じている.

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 特殊な装置として開節そのものには何もないが,豆状骨に起始あるいは停止する3つの靱帯があって,その運動に影響をあたえている.まず豆状骨に停止する,尺側手根屈筋腱の延長ともいうべき2つの靱帯があって,その1つは豆鈎靱帯Lig. pisohamatumとよばれ,有鈎骨鈎にいたり,もう1つは[]中手靱帯Lig. pisometacarpicumとよばれて第4および第5中手骨の底につく.さらになお有頭骨にいたる線維束があって,これは放線状掌側手根靱帯の一部をなすものである.

d)第1手根中手関節Articulus cairpometacarpicus I.

 母指の手根中手関節(図430432)をつくっている骨は大多角骨と第1中手骨である.

 両骨の関節面はともに鞍状面である.

 大多角骨の関節面の弯曲は背掌方向に凸で,橈尺方向に凹である.第1中手骨では凹凸の関係がこれと逆になっている.

[図430] 右手の掌側の靱帯(4/5)

 関節包は広くてゆるやかであるが,丈夫にできている.背側の方が掌側の方より強く発達している.

 関節包は軟骨縁にかなり密接したところに付いているが,ただ中手骨の尺側部では軟骨縁から多少はなれたところに付く(4mm, Fick).

 関節腔は周りを完全に閉鎖されていて,他のいかなる関節ともつながっていない.

 1手根中手関節の力学:この関節は人体でもっとも完全な鞍関節Sattelgelenkである.しかしこの関節に可能な運動についてみると,その関節包が広くて丈夫であるために,球関節とみなすことができる.

e)総手根中手関節Articulus carpometacarplcus commums

 この関節をつくっている骨(図430432)は大および小多角骨・有頭骨・有鈎骨・第2~5中手骨である.

 関節面はいま述べた手根骨の遠位関節面と,第2以下の中手骨底の関節面である.

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[図431] 右手の背側の靱帯(4/5)

 Fickはこの非常に不規則な関節面全体をmodifizierte Sattelgelenkfldichen(修飾された鞍関節面)と呼んでいるが,これは有鈎骨と第5中手骨のあいだの関節で特にはっきりしている.

 関節包は関節面の縁に沿って付着しており,また手根間関節の関節包とつづいている.

 関節包は第2および第3中手骨では強く張っているが,第4中手骨ではそれよりゆるく張っており,第5中手骨では最も広くなっている.

 関節腔は手根間関節とつづいている.

 関節腔は第2および第3中手骨のところで狭く,第4中手骨のところではそれより広く,第5中手骨のところで最も広くなっている.

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 特別の装置としては背側と掌側に補強靱帯があって,背側および掌側手根中手靱帯Ligg. carpometacarpica dorsalia, volariaとよばれる.

 掌側手根中手靱帯では横走する線維の方が遠位方へ向う線維よりも強くて,その一部は放線状掌側手根靱帯の形成に参加している.背側手根中手靱帯は短くて丈夫な線維束の集りで,主として遠位方へ走っている.

 手根中手関節の力学:第4および第5指の関節は鞍関節で,第2および第3揖のは半関節Amphiarthrosisである.第2および第3中手骨は大小の両多角骨および有頭骨とともに1つの機能単位をなしている.

 最も運動性の小さいのはR. Fickによれば中指の中手骨で,その次が示指である.第4および第5中手骨はそれより多少自由な「ぐらつき運動」"Wackelbewegung"をする.

 第2~第5中手骨の底の側面はたがいに接していて,そのあいだに3つの関節がある.これは以前Articulationes intermetacarpeae(中手間関節)とよばれた.この関節と総手根中手関節とは,関節腔および関節包がたがいにつながりあっている.

 特別の装置として背側と掌側につよい補強靱帯がある.すなわち背側および掌側中手骨底靱帯Ligg. basium ossium metacarpi dorsalia, volariaとよばれるものは第2~第5中手骨の底のあいだを横に結ぷもので,さらに骨間中手骨底靱帯Ligg. basium ossium metacarpi interosseaという骨間靱帯が関節の遠位がわに張っている.

 d)およびe)に挙げた関節の血管神経は,近隣の血管と神経からくる.

 橈側および尺側手根隆起(210頁参照)のあいだにある手根溝Sulcus carpiは強い横手根靱帯Lig. carpi transversumで橋わたしされている.すなわちこの靱帯は両手根隆起に付着して,手根溝を手根管Canalis carpiという完全な管にし,また母指球および小指球の多数の筋の起始部をなしている.なおこの靱帯は手根骨によって形成される円蓋の張材の役目をするとともに,手根管の中の諸器官を保護している.

 橈側手根屈箭の腱の終末部は,掌側手根間靱帯によってつくられる1つの管の中にある.この管を橈側手根屈筋腱管Canalis tendinis m, flexoris carpi radialisという(図430).

 各々の中手骨のあいだにある4つの骨間隙を中手骨間隙Spatia interossea metacarpiとよぶ.

f) 中手指節関節Articuli metacarpophalangici(図429, 431)

 この関節をつくっている骨は,5つの中手骨と各指の基節骨である.関節面は中手骨の小頭と,基節骨の底のくぼみである.

 中手骨の関節小頭はほぼ球形であるが,橈尺両側面を切り落されている.曲率半径は第2~第5中手骨では約7~9mmであるが,関節面の掌側部では曲率がさらに弱くなっている.関節面は背掌方向に中心角約180°の弧をなしている.軟骨の厚さは骨それぞれに異なっている(第2中手骨で0.5~0.8mm,第3中手骨で0.7~1.4mm,第4と第5中手骨で0.5~0.9 mm).軟骨がもっとも厚いのは,関節面の掌側3分の1と中央3分の1のさかい目のところである.基節骨の関節窩は長軸を横にした卵円形で,小頭より小さくて浅い.曲率半径はFickによれば26 mmくらいある.この面の弯曲に対する中心角は20°,軟骨の厚さは第2指で0.5~0.8mm,第3指0.7~0.9mm,第4指0.5~0.7mm,第5指0.5~0.9 mmである.

 関節包はゆるやかで,背側では軟骨縁のすぐきわに付くが,掌側では軟骨縁から多少はなれたところに付着している.関節腔はひろい.関節窩の周囲には1つの脂肪ヒダがある.

 特別の装置としてまず挙げるべきものは,非常によく発達した側副靱帯Ligamenta collateralia, Seitenbdihderである.

 関節の大きさとの関係からみれば,これは人体中もっとも強大な側副靱帯といえるだろう.この靱帯は中手骨小頭の側面でや〉背側にあるくぼみと高まりから起って,斜めに遠位掌側方へ向い.基節骨の関節窩縁の側面にある高まりに付く.橈側の側副靱帯は多くは尺側のものより強い.側副靱帯の起始のさらに少し掌側から起って弓状に走り,関節包の掌側面に扇状に散開する線維束があり,これを掌側副靱帯Ligg. accessoria volariaという.そのほか関節包の掌側面は,横走線維束からなる強い掌側線維軟骨板Lamina fibrocartilaginea volaris(Fick)によって補強されている.これは基節骨の関節窩の掌側縁だけから起っている.

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この掌側線維軟骨板は幅1cm, 長さ1.5 cmであり,多くの学者によって一種の関節唇と考えられている.その掌側面は屈筋腱の基盤をなし,近位端は側方で横小頭靱帯の中につずいている.

 [中手骨]小頭靱帯Ligg. capitulorum ossium metacarpi transversaは特別の位置を占めるものである.

 この靱帯はほぼ1cmの幅をもって,第2~第5中手骨の各小頭のあいだの掌側面に張っており,その背側にある中手指節関節の諸靱帯ならびに骨間筋の線維と結合している.またこの靱帯の掌側には虫様筋と指の掌側の血管・神経が走っている.この靱帯は第2~第5中手骨を散開する運動をさまたげる.

[図432] 左の手の関節(4/5) 凍結標本で背側部をヤスリで擦り取って関節を開いたもの.

 種子骨:第1中手指節関節の関節包内には通常2つの種子骨があり,そのうち橈側のもの(7~8mm)の方が尺側のもの(4~5mm)より大きいことが普通である.また全例の3/4において,小指の中手指節関節には尺側に1つの種子骨がある.その他の関節にも種子骨が現れることがある.

 5つの関節全部で最高7個,最低1個の種子骨が存在する(Pfitzner).

 中手指節関節の血管神経は,近隣の背側と掌側の血管および神経からくる.

 中手指節関節の力学:これらの関節は制限された球関節と見ることができる.ここに生じる運動は,指が中手骨の延長に向いている中央位を基準の位置とすると,次のものがある:背屈, 掌屈,指を伸展位および軽い掌屈位で橈側および尺側へ外転する運動.最後の運動は指を強く掌屈していると,側副靱帯が強く緊張するために不可能である.

 母指の中手指節関節では他の指におけるよりも運動性が小さいことが多い.

g)[手の]指関節 Articuli digitorurri manus

 基節骨と中節骨のあいだと,中節骨と末節骨のあいだとに,全部で9つの同じ構造の指関節がある(図431).

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 基節骨と中節骨の遠位端の関節面は,上腕骨滑車に似た滑車をなしている.一方中節骨と末節骨の底にあってこれに対応する面は浅い関節窩をなし,そこに1本の導隆線がある(図429, 431)

 関節包は関節窩では軟骨縁のすぐきわに付き,滑車では軟骨縁よりいくらかはなれて付いている.特別の装置としては強い側副靱帯Ligg. collateraliaがある.

 これは滑車の側面でやや背側方にあるくぼみから起って,斜めに掌側遠位方へ伸びて,相当する指節骨の底につく.関節包の背側壁は伸筋の背側腱膜とかたく結合している.掌側壁は中手指節関節のものと似た線維塊をふくんでいる.

 血管神経は近隣の指動静脈ならびに同神経からくる.

 指関節の力学:人体中でもっとも純粋な蝶番関節であって,ここで可能な運動は掌屈と背屈(屈曲と伸展)である.これらの運動は滑車の弯曲の軸を中心にして行われるのである.

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最終更新日 13/02/04

 

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