Rauber Kopsch Band1. 55

B.大循環の静脈Venen des großen Kreislaufes

 大循環の静脈は本来3つの部からなっている.

a)心臓の静脈系

b)上大静脈系

c)下大静脈系

a) 心臓の静脈Venae cordis, Herzvenen(図633, 635)

 心臓のすべての静脈は直接に心臓に開口し,しかも左心室か右心室に開く若干の細小静脈を除いてはすべて右心房に開口している.

1. 冠状静脈洞Sinus coronarius.心臓の静脈は前心静脈と細小心静脈を除いては1本のかなり太い幹である大心静脈V. cordis magnaと,その続きの冠状静脈洞Sinus coronariusに集まり,その血液は右心房の後部で下大静脈と右房室口のあいだの隅のところに注がれている.大心静脈の冠状静脈洞への移行部は左心房の幅のほぼまんなかに当たっており,ここに2枚の帆状弁からなる弁装置がある.

 冠状静脈洞は大心静脈の終りの部分で,心房の筋肉内に包まれており,以前にあった左上大静脈V. cava cranialis sinistra のなごりである.2つの静脈部が相合する境のところに単一または重複した弁がある.縦の枝が開口するところにもしばしば単一の弁が見られる.

2. 大心静脈V. cordis magna.大心静脈は心尖のところで始まり,そこでは心臓後面の静脈との吻合がある.前室間溝のなかを次第に太くなりながら心室底にすすみ,ついで冠状溝のなかを左かつ後方に向い,最後に冠状静脈洞に移行する.

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 前室間溝の中では左右の心室および中隔からの枝を受ける.水平に走るところでは左心房と左心室からの枝が大心静脈にはいっている.左心室の左縁では左心室からのかなり太い枝がこれに入る.

3. 左心室後静脈V. dorsalis ventriculi(cordis) sinistri.これは左心室の後面で後室間溝の左側を走り,冠状静脈洞の初めの部分に開口する.

4. 後心室間溝静脈V. interventricularis dorsalis cordis.これは心室の後室間溝の中を冠状静脈洞にすすむが,ときには独立して冠状静脈洞のそばで右心房に開口する.

5. 小心静脈V. cordis parva.小心静脈は右心房と右心室との後面にある何本かの小静脈が集まってつくる小幹で,後面の冠状溝で右の部分を走り,冠状静脈洞かあるいは直接に右心房に開口する.

 心臓の静脈の枝は一般に動脈の通路に伴っている.例外的には1本の動脈が2本の静脈を伴うが,ただ1本の静脈を伴う方が普通である.

6. 左心房斜静脈V. obliqua atrii sinistri.これは冠状静脈洞と同じく左上大静脈のなごりである.この静脈は左上大静脈が閉鎖してできた靱帯,すなわち左上大静脈靱帯Lig. venae cavae sinistraeを含んでいる心膜嚢のしわのところで始まり,左心房の後面の上を斜めに左から右へ走り,弁をともなわずに冠状静脈洞に合する.これはたいてい細い静脈である.

7. 前心静脈Vv. cordis ventrales.1本または2本以上の細い静脈で右心室の前壁にあり,右心房の前縁に開口する.

8. 細小心静脈Vv. cordis minimaeは非常に細い静脈で,左右の心房と心室に直接(細小心静脈孔Foramina venarum minimarumをへて)開口している.この静脈は左右の心房の壁と心房中隔の壁にもっとも数が多い.

 変異:L. von Davidaは心臓の2~3本の静脈が上大静脈の終りの部分に開口しているのを記載した.Z. Anat. u. Entw., 68. Bd.,1923.

b) 上大静脈の領域

 概説:上大静脈は大動脈弓と下行性の胸大動脈が枝を送る全領域からの血液をほとんど正確に集めている.だからその根は頭部,頚部,胸部および上肢に広がっている.これらの根は右縦胸静脈を除いてすべて下頚部に向い,そこで左右各側まず1本の腕頭静脈という共通の幹に集まる.

1. 上大静脈Vena cava cranialis(図600, 690)

 上大静脈の幹は胸骨の右縁のそばで,右の第1肋軟骨のすぐ後下方で,左右の腕頭静脈が合流してできあがる.

 局所解剖:右側に軽く凸の弓を画いて曲りながら,胸骨の右側を大動脈の右において心底に向かってすすみ,短い経過ののちに右の第3胸肋関節の下縁のところで右心房に入る.すでに第2肋骨の高さでこの静脈は心膜によって不完全に包まれる.右側は胸膜の縦隔部で被われ,また右肺に策している.左側には上行大動脈があり,また下行するうちにその後方にある右肺根の諸成分と交叉する.また右側には右の横隔神経が下方にすすんでいる.上大静脈は弁を持つていない.

 心膜嚢にはいる直前に後方からくる右縦胸静脈を受け入れ,それを介して下大静脈と結合している.

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 上大静脈の幹に礪そのほかにすぐそばにある心膜静脈前縦隔静脈Vv. pericardiacae et mediastinales ventralesからの細い枝がはいるだけであるが,またときには太い右内胸静脈もはいっている.

 変異:非常にまれに上大静脈の幹が上方の右肺静脈を受け入れている.

2. 腕頭静脈Venae brachiocephalicae(dextra et sinistra) (図600, 690)

 この静脈は頭部と頚部と上肢の血液を集めていて,弁を持つていない.胸鎖関節の後で内頚静脈と鎖骨下静脈とが合してできあがる.その初まりのところから右第1肋軟骨の内側端の下縁に向かってすすみ,ここで左右のものがほとんどたがいに直角をなして合して大静脈となる.

 右腕頭静脈V. brachiocephalica dextraは非常に短くて,ほぼ垂直に走り,その右側は胸膜嚢と右肺尖に接している.

 左腕頭静脈V. brachiocephalica sinistraは右腕頭動脈のおよそ3倍ほどの長さがあり胸骨柄の上部の後方をやや下方に向い左から右に走っている.胸骨柄の上部とは縦走する舌骨筋群の起始部のみによって隔てられている.そのさい大動脈弓から出る諸枝の上に直ぐに接しており,しかも大動脈弓のいちばん高い所にのっている.

 変異:まれに左右の腕頭静脈が別々に右心房に入る.

 腕頭静脈は次の諸静脈を受け入れている.

a)下甲状腺静脈,最下甲状腺静脈Vv. thyreoideae caudales, V. thyreoidea ima.これらの静脈は不対甲状腺静脈叢Plexus thyreoideus imparから出ているが,この静脈叢は甲状腺の下部をしめて,気管の前面に接していて,また下喉頭静脈V. laryngica caudalisをも受け入れている.この静脈叢からは2本あるいは3本の静脈が出ていて,そのうち右方のものは軽く右にまがって,右腕頭静脈かそれよりまれに上大静脈に開口する.一方左のものと,もし存在するときは中央にある最下甲状腺静脈V. thyreoidea imaも,左腕頭静脈にいたり,これに注いでいる.これらの静脈はたいていたがいにつながりあっている.

 下甲状腺静脈はときとして内頚静脈にも開口する.

b)多数の小枝が縦隔にある諸器官がら来ている.すなわち胸腺静脈Vv. thymicae,心膜静脈Vv. pericardiacae,上横隔静脈Vv. phrenicae thoracicae,前縦隔静脈Vv. mediastinales ventrales,前気管支静脈Vv. bronchales ventrales,気管静脈Vv. tracheales,食道静脈Vv. oesophagicaeである.

c)椎骨静脈V. vertebralisは後頭骨のところで始まるが,そこでときとして後頭静脈とつづき,さらに1本の細い枝を介して導出静脈とつながっている.椎骨静脈はたいてい1本,まれに2本あって,椎骨動脈に伴って上から6つ,または7つ全部の頚椎の肋横突起孔を通り,動脈の周囲で静脈叢を作っている.そして椎骨静脈はかなり太い血管となって,多くのばあい腕頭静脈の上端に開口する,その途中で大後頭孔と椎間孔を通ってやって来る脊柱管の静脈叢からの流れを受け入れ,また後頭下静脈叢Plexus venosus suboccipitalisとつながっている.しばしばこの静脈の下端のところに深頚筋の前面からくるもう1つの静脈が開口している.

d)深頚静脈V. cervicalis profunda.深頚静脈は項筋の深層の上を横突後頭筋に被われて軽くうねりながら,後頭部から下方に向かって走り,通常これより細い椎骨静脈と結合している.それよりまれに直接に腕頭静脈とつながっている.またすぐ近くの頚静脈叢ともつづいている.

e)内胸静脈V. thoracica interna.開口部の近くでは1本であるがそのほかのところは重複していて,同名動脈の両側を走る.この静脈は上腹壁静脈Vena epigastrica cranialisをもって始まり,上腹壁静脈はさらに腹皮下静脈Vv. subcutaneae abdominisを受け入れている.

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また他側の同名静脈とつながり,肋軟骨の後,胸膜の肋椎部の前を上方に行き,臓側枝を除く同名動脈のすべての枝に伴っている.臓側枝に相当する静脈は直接に腕頭静脈に入るか,あるいは上大静脈に開いているのが常である.ときとして右内胸静脈も上大静脈じしんにはいっている.

f)最上肋間静脈V. intercostalis suprema.この静脈は左右において全く同じようにはなっていない.右最上肋間静脈は第1だけかあるいは第1と第2,ときとしては第3までの胸分節の静脈をとり入れて,右腕頭静脈か上大静脈に開口し,それ以下の分節の静脈,あるいは右縦胸静脈とつながっている.

 左最上肋間静脈は左の縦胸静脈の広がりかたによって太さが異なっている.これはたいてい胸部上方の第1から第3,または第4までの分節静脈を受け入れ,ついで普通は左気管支静脈を前もって合せたのち,脊柱から左の腕頭静脈に向かっている.この静脈はさまざまな形をとって左右の縦胸静脈とつながっている.

3. 内頚静脈Vena jugularis interna(図680682)

 この静脈は頚静脈孔の後部の比較的広いところで漏斗状に広がった頚静脈上球Bulbus cranialis v. jugularisをもって始まり,内頚動脈のすぐ近くを下方にすすむ.そのさい初めは内頚動脈のうしろにあるが,ついでその外側にいたり,舌骨の大角のところで顔面静脈V. facialisを受け入れる.さらに総頚動脈の前外側で中頚筋膜に被われて下行し,胸鎖関節のうしろにある鎖骨下静脈との合流点に向かってすすみ,ここで内頚静脈弁膜球Bulbus valvularis venae jugularis internaeを作っている.この弁膜球は単一または2つの部分からなる弁で上方を仕切られている.

 ときとしてこの弁は鎖骨下静脈と内頚静脈とが合する角のところにある.また上方に2部に分れた弁があり,下方に単一弁のあることもある.右の弁膜球はたいてい左のよりも大きい.

 頚静脈上球には脳硬膜のS状静脈洞および蝸牛小管静脈Vena canaliculi cochleaeが開口し,またまれに下錐体静脈洞が開いている.またそれよりいっそうしばしば頚静脈上球が舌下神経管静脈網とつながっている.

 こうして内頚静脈は頭蓋腔からの血液の大部分を導きだしているが,頭蓋腔内の静脈血は左右の内頚静脈のみによって独占的に導きだされているのではなく,一部はもっと細い何本かの静脈によるのである.しかしとにかく左右の内頚動脈および椎骨動脈とによって頭蓋腔内の諸構造に送りこまれた血液のほとんど大部分が内頚静脈を通って戻るのである.多数の細い連絡路が頭蓋腔の静脈洞と外面の静脈とを連ねていて,これらは一部は直接に導出静脈を通り,また一部は板間静脈によって仲だちされている.--Hansberg, Z. Ohrenheilk.,1903.

 頭蓋腔と顔面静脈からの血液のほかに,内頚静脈はなお咽頭・舌・喉頭ときには甲状腺からの血液も受け入れている.

a)咽頭静脈Vv. pharyngicae.咽頭静脈は咽頭の後壁と外側壁において咽頭静脈叢Plexus pharyngicusから出る.咽頭静脈叢はその近くにある耳管・口蓋帆・およびこれらに関係のある筋の静脈とつながり,また翼突管静脈V. canalis pterygoideiを受け入れている.咽頭静脈はたいてい内頚静脈の幹にはいる.またときにはその付近の静脈と結合して,かくて内頚静脈の幹に入り,または頚部にあるそのほかの静脈幹に達している.咽頭静脈叢は翼突筋静脈叢や椎骨静脈叢につながっている.

 Elzeは(Anat. Anz., 51. Bd.,1918)前・後咽頭食道静脈叢Plexus pharyngooesophagicus ventralis, dorsalisという前方と後方の静脈網が咽頭の喉頭部の粘膜下組織にあることを記載した.後方の静脈網の血液は咽頭静脈叢にいたり,前方の静脈網の血液は上喉頭静脈に達する(Elze u. Beck, Z. Ohrenheilk., 77. Bd.,1918).

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[図681] 頭部の静脈(I) 浅層の静脈

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[図682] 頭部の静脈(II) 顔面深層の静脈. 頬骨弓,下顎枝,咬筋,外側翼突筋を取り除き,また側頭筋の一部を取り除いて翼突筋静脈叢が見えるようにしてある.眼窩の内容は除去してある.

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b)舌静脈Vv. linguales.舌静脈の分布はだいたい舌動脈のそれと同じであるが,枝の太さの関係が異なっている.またこれらの枝のすべてが合して1本の幹となっていることはまれである.

α. 舌背静脈Vv. dorsales linguae.これは2本または1本のかなり太い静脈で,舌のよく発達した静脈網から発している.この静脈網は主に舌背の背側部に力つよく広がって,側方は扁桃のところまで伸びている.舌背静脈は下顎後静脈に達する.

β. 舌下静脈V. sublingualis.たいていは太い静脈であって,舌骨舌筋の外側面を後方に走り,近くにある唾液腺からの枝や顎下腺管をとりまく静脈叢からの枝を受けとり,多くのばあい顔面静脈に開口している.1本の太い枝である舌下神経伴行静脈Vena comitans n. hypoglossiはその名前のごとく舌下神経に伴っている.

 舌静脈の何れかの枝が上方は咽頭静脈叢,下方は上甲状腺静脈とつながっている.舌静脈は単一の幹をもって,あるいは別々の幹で内頚静脈に開口するのが普通であるが,時として別々の幹をもって顔面静脈にはいっていることもある.

c)胸鎖乳突筋静脈V. sternocleidomastoideaは同名動脈とともに走り,しばしば上甲状腺静脈に開口している.

d)上甲状腺静脈Vv. thyreoideae craniales.この静脈は甲状腺の上部から出てほとんどま横に外側へ走って内頚静脈にいたる.その前にこの静脈の上部をなすものがなお上咽頭静脈V. laryngica cranialisを受けとるが,後者は喉頭の内部からの血液を集め舌骨甲状膜を貫いて外に出るのである.ときとして上喉頭静脈が直接に内頚静脈にはいっている.

e)顔面静脈V. facialis(図680, 681, 682).顔面静脈はその分布が外頚動脈の分布と大部分一致している.

下顎角のところで下顎後静脈を受けとる.頬筋の外面では深面顔静脈V. facialis profundaと頬筋静脈V. bucinatoriaによって2つの主な幹の間のつながりがある.顔面静脈の終りの部分はおよそ5mmの太さで,外頚動脈の外側を広頚筋だけに被われてその開口部に達する.

 この静脈は内眼角のところで前頭静脈と上眼静脈とが合流して眼角静脈V. angularis(図682)となって始まり,顔の側面上を斜めに走って咬筋の前縁に達する.

したがって顔面動脈と同じ方向を持つているが,うねらずにむしろひき延ばされた状態であり,動脈よりも後方に引つこんでいる.下顎の下縁で(そこに最初め弁がある)強く後方に曲り,顎下腺の被膜の上にのっていて,下顎後静脈を受けとるのである.

 次の諸枝が集まって顔面静脈を作っている.(図681, 682)

α. 前頭静脈Vv. frontales.内側前頭静脈は前頭部を斜めに鼻根に向かって下行し,上方で側頭静脈とつづいている.内側前頭静脈の最下部は他側の同名静脈とほとんど平行して走り,多くは横走する吻合をもってたがいにつながっている.ときには左右の内側前頭静脈が短い共通の幹をなしていて,鼻根のところでふたたび2本に分れている.この静脈は眉の付近と鼻背,および上眼瞼からの枝を受けとる.外側前頭静脈は側頭静脈とつながっている.

β. 眼角静脈V. angularis.これは顔面静脈の初まりの部分で,前頭静脈と同じく上眼静脈V. ophthalmica superiorの前端につづいている.しかし顔面の浅層の静脈血は上眼静脈の方には流れてゆかないで,後者の血液が顔面壁の静脈に流れるのである.眼角静脈はその初まりのところで何本かの上眼瞼静脈Vv. palpebrales superioresを受け入れる.

γ. 外鼻静脈Vv. nasales externae.鼻からやつ丁来て顔面静脈の内側に開口する.

δ. 下眼瞼静脈Vv. palpebrales inferiores.この静脈は下眼瞼の静脈叢からはじまり内側かつ下方に走って顔面静脈に注ぐ.

ε. 上唇静脈V. labialis maxillaris. 上唇からおこる.

ζ. 深顔面静脈V. facialis profunda.上顎骨の上を後から前に走って,翼突筋静脈叢を顔面静脈とつないでいる.頬筋静脈V. bucinatoriaは頗筋の上を走って,やはり翼突筋静脈叢を顔面静脈につないでいる.

η. 下唇静脈,咬筋静脈,耳下腺枝Vv. labialis mandibularis, massetericae, Rami parotidici.これらは口角の下方で顔面静脈の幹にはいる.

θ. オトガイ下静脈V. submentalis.これはかなり太い静脈であることが多く,オトガイの下ではじまって,口腔底の諸筋と舌下腺からの枝を受けとるが,しばしば顎下腺からの枝も受けており,下顎の下縁で顔面静脈に開口する.

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ι. 口蓋静脈V. palatina.この静脈は扁桃および軟口蓋の周囲から咽頭の側壁を通って血液を顔面静脈に導いている.

f)下顎後静脈V. retromandibularis.これは耳介の前を下方へ走って下顎角にいたり,その途中で次の枝を受けている.

α. 浅側頭静脈Vv. temporales superficiales.これは頭蓋の外側面の上部で弓状をなしてはじまり,前頭静脈・後頭静脈・および他側の同名静脈とつながっている.頭頂部では頭頂導出静脈もこれに合する.側頭筋膜の上を耳介の前に下行するが,そのさい1本の静脈をなしていたり,前と後の2つの小幹に分れていて頬骨弓の根のところでいっしょになったりする.

β. 中側頭静脈V. temporalis media.これは側頭筋の筋肉内ではじまって筋膜下を頬骨弓に向かって下行し,そこで筋膜を貫いて浅側頭静脈と合する.

γ. 耳下腺枝Rr. parotidici.耳下腺から来るなん本かの小枝である.

δ. 顎関節静脈Vv. articulares mandibulae.顎関節の周りにある静脈網から始まる.この静脈網は鼓室:静脈Vv. tympanicaeを受け入れている.

ε. 耳介前静脈Vv. praeauriculares. 耳介と外耳二道から来る.

ζ. 顔面横静脈V. transversa faciei.顔面の側方部から来て頬骨弓の下を通る.

η. 茎乳突孔静脈V. stylomastoidea.茎乳突孔から来る.

θ. 顎静脈V. maxillaris.これは顎動脈の大部分に相当している.3本ないし4本の深側頭静脈Vv. temporales profundaeは側頭筋から来る.さらに翼突筋枝Rr. pterygoidei,咬筋枝Rr. masseterici,頬筋枝Rr. bucinatoriiがそれぞれ同名の筋から出て側頭下窩のなかで側頭筋・内側翼突筋・外側翼突筋のあいだで重要な翼突筋静脈叢Plexus pterygoideusを作っている.その静脈叢にはさらに内鼻静脈Vv. nasales internae,硬膜静脈Vv. meningicaeおよび上顎枝Rr. maxillares,下顎枝Rr. mandibularesが注いでいる.

 この大きな静脈叢は破裂孔導出静脈および卵円孔静脈網によって海綿静脈洞とつながっている.この静脈叢から出る流れは一部は顎静脈と深顔面静脈を通り,一部は比較的小さい静脈を経て内頚静脈に開いている.

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最終更新日 13/02/04

 

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