Rauber Kopsch Band2. 19

D. 尿道Urethra, Harnröhre

 男女の生殖器の項を参照のこと.

腎上体(副腎)Corpus suprarenale, Nebenniere(図166, 233238)

 腎上体は左右2つある扁平な器官で,それぞれのがわの腎臓の上端の近くにある.腎臓と腎上体のあいだは脂肪組織が境をしている.左右の腎上体の形がいくらか違っていて,左のものは半月形に近くて右のは三角形である.左右の腎上体にはそれぞれ前面後面Faclesventralis, Facles dorsalisがあり,またくぼんだ腎面Facles renalis,と上縁・内側縁Margo cranialis, Margo medialisがある.後面に腎上体門Hilus corporis suprarenalisがある.

 被膜をとおして深黄色ないし褐色がかった皮質Substantia corticalis, Rindensubstanzがすいて見えるので,腎上体は黄色をおびている,皮質は切断面ではかたくて条がついており,わずかな髄質のまわりをとり囲んでいる.髄質Substantia medullaris, Marksubstanzはやわらかくて粘土状の感じがあり,成人では灰色をしている.

 おのおのの腎上体は丈夫な線維性の被膜で包まれている.被膜は皮質と密につながっているので皮質を損なうことなしにこれをはがすことはできない.被膜からは豊富な線維性の突起が内部に入りこんでいる.

 腎上体の重量は11grから18grである.若い人や,子供,あるいは胎児では相対的の重量が大きい.長さは4~6cm,幅は2~3cmのあいだにある. Hammarによれば重量は3.5~8.5grしかないという.皮質と髄質との比は6.5~17. 6:1である.(Hammar, A., Z. mikr.-anat. Forsch.,1. Bd.,1924).(日本人の腎上体の重量は平均男7.5gr,女7.05 grである.長さは平均2.7 cmから3.26 cm,幅は5.3cmから5.68cm,厚さは4.4 cmから5.5 cmである(羽太鋭治,日病理会誌,1918).また成人の腎上体の平均重量は男では右8.71gr,左9.26 gr,女では右7.98 gr,左8.29gr(岡睦,京都医誌38巻, 昭和16年下),あるいは(佐藤文一,東京医大誌8巻3号)男では右5.94gr,左6.39 gr,女では右5.01gr,左5.25grである.)

 皮質は中胚葉に由来し,髄質は交感神経に由来する.

 局所解剖:I. 全身に対する位置の関係:腎上体は上腹部の外側部にある.II. 骨格との位置関係:第11胸椎の高さにおいて脊柱の横にある.III. ほかの諸器官との位置関係:左右の腎上体は内側は横隔膜の腰部,下方は腎臓の上端, 後方は横隔膜にそれぞれ接している.右の腎上体の前方には肝臓があり,内側には下大静脈と十二指腸がある.左の腎上体は大動脈の近くにあり,膵臓と脾臓に接しており,前方は網嚢によって胃と隔てられている.左右の腎上体の存在する領域に腹腔神経叢の大きな神経節群がある.

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腎上体の微細構造(図271, 272)

 皮質Substantia corticalis, Rindensubstanzは3層からできていて,その3層は外方から内方に向かって球状帯Zona glomerulosa(multiformis, Bachmann),束状帯Zona fasciculata,網状帯Zona reticularisとよばれる.すなわち皮質の細胞は外層では小さな団塊を作り,中層では柱をなして並び,内層では網状の索をなして並んでいる.それと共に網胞の形も円みをおびた多角形から長い円柱形までの移行がある.原形質は多数の褐色がかった色素とリポイドの小粒をもっている.色素は主として外方の層にあり,また髄質の近くの細胞にある.細胞の間には太い毛細管がある.

[図271]腎上体27才の男(横断)

 髄質Substantia medullaris, Marksubstanzははなはだ多数の血管,とくに静脈をもっている.繊細な網のなかに大きな細胞があって,その一部は短い突起をもっている.この細胞は青白くて,細かい粒子性を呈し,大きな核と多量の脂肪粒,および色素粒子をもっている.これらの細胞はクローム塩を盛んにとる性質をもっている.それゆえクローム親性細胞chromaffine Zellenと名づけられている.

 腎上体の動脈は一部は大動脈から直接に(腎上体動脈),一部は下横隔動脈(腎上体枝),一部は腎動脈(腎上体枝)から来ている.動脈はこの器官のなかに広がって,細胞の集りを毛細管で取り囲み,ついで普通は一本の左と右の腎上体静脈となって腎上体の門から出てゆく.腎上体静脈は右は下大静脈に,左は腎静脈に開口している.

 リンパ管は被膜と実質のなかで豊富な網を作っている.毛細リンパ管から集まってくる枝は一部は被膜のリンパの幹に移行し,一部は腎上体静脈を取り巻くリンパ管網に開いている.この網から門の近くで2本の幹が出て,静脈といっしょに外に出てゆく.

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 神経はたくさんあるが,大部分は無髄である.これらの神経は腹腔神経節の外側部から出て,それに横隔神経叢からの細い枝が加わっている.また小さな神経節をもっている.そして腎上体を放射状に貫いて,その内部で神経叢を作っている.ここには神経細胞が大小の群をなして散在している.近年の研究によると髄質の分枝した細胞が神経線維とつながっていて,つまりこの細胞は神経細胞と考えられるのである.

 副腎間体Corpora interrenalia accessoria, accessorische Nebenniereのみられることがはなはだしばしばである.これは皮質のみからできていることが多く,本来の腎上体の近くや,もっと下方で精巣,卵巣のところや,子宮広ヒダにもある.

 年令差と男女の差は皮質にみられる(Stieve 1946).20~50才の男は同年令の女にくらべて網状帯の幅がせまい.年をとったための変化は主に束状帯に起り,細胞索が秩序を失って,その細胞はいっそう大きくなり,リポイドも多くなる.若干のものは脂肪細胞の形をとっている.

[図272]腎上体皮質の束状帯の一部 27才の男

 Eggeling, H. von, Anat. Anz.,1. Bd.,1902, -Kumita, Arch. Anat. Phy.,1909--Hett, I., Z. mikr.-anat. Forsch., 3. Bd.,1925.

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最終更新日 13/02/03

 

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