Rauber Kopsch Band2. 47

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f)大脳半球の白質

 すでに365頁に述べたように,大脳半球の白質には次の種類の神経線維がある:すなわち交連線維と連合線維と投射線維とである.

1. 交連線維Kommissurenfasernは脳梁と前卒連のなかに含まれる.

a)脳梁線維Balkenfasernは非常に細いものである.この線維は前頭葉の底部と側頭葉の前方部と海馬足とを除いて(これらの部分には前交連が分布する),一側の大脳半球の皮質全体から始まり,他側の半球に終わっている.

 脳梁線維の多くのものははなはだ細いいく本かの側枝を出す.脳梁線維はおそらく大脳半球の対称的な2点をたがいに結合するだけではなく,それらの側枝によっていろいろな皮質層や皮質にある数多くのほかの細胞に影響をあたえるのである(図487).

b)前交連の線維にとっては脳梁線維のと同じ法則が適当に加減してあてはまるのである.

1. 連合線維Assoziationsfasernは大と小の錐体細胞および多形細胞の神経突起であって,これが白質の連合線維束に移行するめは(図439参照)多くは単純な形で行なわれる.しかしまたT字形に同じ大きさの2本の枝あるいは不同な大きさの2本の枝に分れるものもある(図488).後者のばあいには内方の枝が1本の脳梁線維となる.

 しかし到るところで次のことが確認される.それは多くの連合線維が皮質の一定点の細胞を他の数多くの細胞と結合するのであって,後者は1つの半球内で別の皮質領域にあり,おそらくは別の葉にさえも属しているのである(Cajal).人や高等な哺乳類では連合線維が白質の大部分をなしている.

 多くの連合線維にははなはだ細い側枝があって,これらの側枝は上行し,その上にあるいろいろな灰白皮質の諸層のなかを表在層にまで達して枝分れしている.これらの放線状側枝のほかに,白質内あるいは灰白質と白質との境のところに終るごとく見える側枝もある.白質にいたる側枝はたぶんそこにある数多くの下行性の原形質突起に接して終るのであろう(図489).

3. 投射線維Projektionsfasernは一部は求皮質性corticopetalに,一部は遠皮質性corticofugalに導いている.

a)遠皮質性の線維は(小さい哺乳動物の脳で研究した所によれば)皮質の全領域から起こって,集中して線条体を通りぬけ,大脳脚に達する.脳梁の高さでは1つの太い側枝を脳梁にあたえ(図487),次いで多くの束に分れて灰白質の集まっている部分を通過し,この灰白質に幾本かのきわめて細い側枝を送っている.また脳梁にも線条体の領域でも側枝をあたえることなく,その独自性を保って走りつづける軸索もある.上に述べた遠心性の線維はみな大脳皮質の大および小の錐体細胞から起り(図487C),またおそらくは皮質内の多形細胞の一部からも起るのであろう.それゆえこれらの線維の太さがいろいろと違うことが理解できる.

[図489]大脳皮質における神経突起の起始と終末 模型図(Cajal).

A 小錐体細胞;B 大錐体細胞;C, D多形細胞;E 他の中枢部から出てきた線維の終末;F 白質の側枝;G 白質のなかで枝分れする軸索(軸索の2分).

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 これらの投射線維の大部分はすでに間脳の神経核(視床,淡蒼球?,内外の両膝状体)に終る.その他の線維は中絶することなく大脳脚を通って中脳,後脳,延髄,脊髄に達する.これらの線維の大部分は随意運動の伝導路(錐体路,すなわち外側皮質脊髄路と前皮質脊髄路)となって終わっている(図404).

b)求皮質性線維corticopetale Fasern.連合線維のほかに,はるかに直径の大きい線維が灰白皮質のなかでやはり枝分れして終わっている.この線維はよく発達した終末分枝を灰白質に混入させており,この終末分枝は特に小錐体細胞を取りかこむのである.これらの枝分れは知覚性ニューロンの連鎖の最終端であるといえる(図404および489参照).

g) 大脳核Endhirnganglien

 尾状核Nucleus caudatusはそのあらゆる部分が均等に構成されているようにみえる.この核は厚い上衣に被われて,神経線維のほかに特に2種類の神経細胞をもっている.それは1. 比較的大きな(30µの)多極神経細胞でその神経起突は淡蒼球に達するもの,2. ずっと数が多くて小さい(15µの)多極神経細胞でその神経突起は線条体のなかにとどまるものである.

 レンズ核Nucleus lentiformis.被殻の構造は尾状核のそれと全く同じである.レンズ核の内方の両節(すなわち淡蒼球)が比較的淡い色をしているのは神経線維がいっそう豊富にあることによるのであり,また黄色い色素をもった数多くの神経細胞が散在することにもよるのである.この神経細胞はその構造が運動性の神経細胞に似ている.最も内方の節はふたたびやや暗くなってみえる.

レンズ核の3つの節は髄板Laminae medullaresという髄質の薄い板によって耳いに隔てられ,これらの髄板が個々の節の実質内に突起を送り,また内包を貫いて尾状核と結合するが,上方へは大脳半球の髄質と灰白皮質のなかに放散している.これに反してレンズ核の下がわでは2つの髄板がいっしょになって強大であり,かつ重要なレンズ核係蹄Ansa lenticularis, Linsenkernschtingeという線維束をつくり,この線維束はレンズ核の下面に沿って内側にすすみ,間もなく大脳脚の内側縁に達する.

 尾状核と被殻とは終脳に由来するもので,この両者は内包の線維束のあいだを貫く灰白質の条によってたがいにつながり(図430),こうしてできた断面上の線条構造に基いてこの両者を合せて線条体Corpus striatum(神経学者はこれを短くして“Striatum”とよぶ)というのである.これに対してレンズ核の淡蒼部(淡蒼球)Pars pallidaはかんたんに“Pallidum”と呼ばれる(図509).

 線条体の小さい神経細胞の突起はこの核の内部で終わって,その外に出ない.この小さい神経細胞は視床と視床下部からの興奮を受けとり(図509a, a),さらに興奮を大きな神経細胞に伝える.そしてこの大細胞の神経突起がさらに淡蒼球に伝えるのである(図509b, b).

 淡蒼球は線維を視床に送り(図509c),また視床からの線維を受けとる.淡蒼球に達する線維とこれから出る線維とは淡蒼球の下方でレンズ核係蹄を作る.淡蒼球からおこる線維はいろいろな核に達する(図509 d, e, f, g, h):すなわち同側の視床下核(d)と反対がわのそれ(e)に,fは赤核に,9は視床下核に達し,またh, hは黒核(黒質)に達し,またその逆の方向にも走る.

 前障Claustrumは特有な形の扁平な核で,レンズ核の外側にあって,下方は嗅野と扁桃核と外側嗅条とにつながり,すでに上述したように島皮質の多形細胞層が分離して生じたものであるというが,このことには異論がある.

 前障の細胞成分は主として紡錘形の細胞であって,この細胞の長軸は前障の表面に平行してのびている.

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 扁桃核Nucleus amygdalaeは淡蒼球の一部であるという説がある.この核は線維束によって海馬傍回鈎の皮質,外側嗅条, 嗅三角,前交連,視床と結合しているが,これらの結合線維の伝導方向は確実にされていない.

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最終更新日 13/02/03

 

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