Rauber Kopsch Band2. 49

脳と脊髄とにおける伝導路の概観

(この章はBechterewが第7版のために書き改めた.その後の版ではいつもわずかしか変えなかったのであるが,第15版の第3巻を新しく印刷するときにかなり大きい変更をなし,第16版ではR. Richter (Potsdam)の価値甚大な共同執筆により本文および図が特に大きく改められたのである.(原著註))

A. 大脳皮質の中枢

 大脳皮質の個々の領域の解剖学的構造は細胞の層形成(細胞構築Cytoarchitektonik)からも神経線維の分布(髄構築Myeloarchitektonik)からも決して一様ではなくて,場所によって大なり小なりの差異が存在する(412頁参照).さらに個々の伝導路の経過を研究することによって,大脳皮質の一定の領域はこれに入り(求皮質性の)またこれから出てゆく(遠皮質性の)一定り伝導路をもつことが明かにされている.

 個々の感覚器と一定の筋群には大脳皮質の空間的に境された一定の領域が対応している.この領域は領域Sphären,皮質領Rindenfelder,(精神作用のPsychisch)中枢Zentrenと呼ばれる.そのはたらきによって運動性の中枢motorische Zentrenと知覚性の中枢sensorische Zentrenとを区別することができる.また位置によって中心部,後頭部,側頭部および海馬部を区別し,これらの各部のあいだをたがいに隔てている広い区域のはたらきは目下のところまだわかっていない.その広い区域をFlechsigは皮質性連合中枢kortikate Assoziationszentrenと名づけたのである.

1. 中心部(前頭頭頂部)zentrale(frontoparietale) Zone

 これは中心前,後両回と中心勇小葉ならびに上,中,下3つの前頭回の後部および上頭頂小葉を包含している.そのうちで中心前回Gyrus praecentralis,中心傍小葉,これらと境を接する3つの前頭回の後部と頭頂弁蓋は筋運動中枢moromotorische Zentrenを有っている.くわしくいうとこの中枢は次のように分れる.中心勇小葉の前方部(図495)と中心前回の上部(図494)とには下肢の筋肉のための中枢があり,次いで上から下へ順次に体幹の筋,上肢,前腕,手,指の諸筋,口の筋,舌の筋の中枢がならんでいる.頭頂弁蓋には喉頭筋,咀嚼筋,咽頭筋の中枢がある.

 中前頭回の後部には字を書くときに必要な腕と手の筋の細かい運動の中枢がある.同じ中前頭回でさらに前方には頭の運動と眼球運動との中枢がある.

 別の意見によると書字中枢は中心前回で,手と指の運動の中枢のなかにあるという.しかし字を書くときには手と指の筋だけが活動するのではないということを考えるべきである.

 運動性言語中枢motorisches Sprachzentrum(ブローカの中枢Brocasche Stelte)は外側大脳裂の上行枝の周囲にあり,しかも右利きの人では左の半球に,左利きの人では右の半球にある.

 これが発音に必要なロ唇,口蓋,舌,喉頭の諸筋の比較的繊細な運動の中枢であるが,これらの筋の比較的粗大な運動の中枢は中心前回と頭頂弁蓋とにある.

 中心後回と上頭頂小葉とには筋覚の中枢があり,これが体感覚領域Körperfühlsphäreである.

 中心部の求皮質性の伝導路としては次のものがある:すなわち求心性の後根線維の続き,求心性の迷走神経線維の続きならびに舌咽神経,三叉神経,前庭神経の求心性線維の続きであり,これらの線維は脊髄,延髄,小脳,脳幹においてそれぞれ相当する核でニューロンを変えて上行し大脳皮質に達する.

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 遠皮質性の伝導路は次のものである:すなわち錐体路とその他の遠皮質性の線維であり,後者はけっきょく前根細胞と運動性の脳神経核とに達するが,その途中で脳幹,小脳,延髄および脊髄の諸核において中断されている(図507, 508).

[図494]大脳皮質の運動性領域(赤)と知覚性領域(青) ( 4/5) (Ziehenによる皮質領)

左の大脳半球を側方,且ついくらか上方からみる.

2. 後頭部occipitale Zone

 これは鳥距溝の上下の両壁,楔部および後頭葉の外面に当たっている.--鳥距溝の両壁とその近くの周囲部は視覚中枢Sehzentrumであって,ここは(414頁参照)ヴィック・ダジール条の存在により(そのために有線領Area striataと呼ばれる),また細胞が特に多くの層を形成することにより目だつのである.

 視覚中枢の内部で網膜の定まった部位が視皮質の定まった部位に投射している(443頁参照).しかし黄斑の部位が特別に限局しているかどうかは疑わしい.

 その求皮質性伝導路は外側膝状体(および視床枕)を越えてくる視索により,なおまた視放線の膝状体皮質路により形成されている.膝状体皮質路は外側膝状体と視床枕から視覚中枢に達するのである(図504).

 その遠皮質性伝導路は上に述べたのとは逆の方向に進むもので,皮質視床路Tractus corticothamiciの線維よりなり,この伝導路は外側膝状体に達し,さらにその先は網膜にいたる.また視放線のふくむ遠皮質性の線維が外側膝状体,上丘および視床枕のなかでニューロンを換えて,動眼筋を支配する3つの神経の核と脊髄の前根とに達している.

 楔部と後頭葉の外側面ならびに上面とには視覚性の記憶像optische Erinnerungsbilderの場所がある.

 角回Gyrus angularisには視覚性言語中枢optisches Sptachzentrumがあり,またDöllkenによればものを見ることの本来の動作と結びついた眼球運動の中枢がここに存在する.

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[図495]大脳皮質の運動性領域(赤)と知覚性領域(青) ( 4/5) (皮質領はZiehenによる)

右の大脳脚を切断し,右の大脳半球の内側面および側頭葉と後頭葉との下面を示す.

3. 側頭部 temporale Zone

 聴覚中枢Hörzentrtimは横側頭回Gyri temporales transversiにある.聴覚性言語中枢(ウェルニッケの中枢Wernickesche Stelle)は横側頭回とこれに近接する上側頭回の頭頂弁蓋に向いあった部分とにある(図494).

 聴覚中枢の内部にいろいろな高さの音の皮質性局在があるかどうかは,いままでまだ確実なことがわかっていない.

 求皮質性の伝導路Corticopetalleitungは蝸牛神経の続きよりなっていて,これは1連をなす核(図501) (蝸牛神経腹側核および背側核,後脳オリーブ核,外側毛帯核)がらおこっている.これらの線維は根線維の直接のつづき(Held)といっしょになって(聴覚の)外側毛帯を作って,内側膝状体と下丘核に終る.ここで聴放線Hörstrahlungすなわち(聴覚の)膝状体皮質路Tractus geniculocorticalis(acusticus)が始まる.かくして各側の蝸牛が線維を両側の聴覚中枢に送るが,しかしそれも主として他側にいたる線維が多いのである.

 遠皮質性の伝導路Corticofagalleitungは次のものよりなる:すなわち 1. 側頭葉から下視床脚のなかを通って視床に達する線維,2. 側頭葉から淡蒼球に達する線維,3. 側頭弁蓋から黒核(その黒色部)にいたる線維,(側頭)皮質橋核路Tractus corticopontinus(temporalis),これは上側頭回と中側頭回とから出て橋核に終る.橋核からは伝導路がさらに小脳などに行く.

4. 海馬傍回と海馬足の部分

 海馬傍回鈎と海馬足には嗅覚と味覚の中枢がある.嗅傍野も梁下回も嗅覚中枢Geruchszentrumに属している.--Bechterewによれぼ(図499)皮質の味覚中枢は頭頂弁蓋にあるという.

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 嗅覚中枢Geruchszentrumへの求皮質性伝導路は嗅糸が初まりであって,これは嗅球の嗅糸球(図486)のなかでニューロンを換えたのちに,外側嗅条を通って海馬傍回鉤に達し,また内側嗅条をへて嗅傍野にいたり,そこから梁下回,外側縦条,歯状回を越えて同じく海馬傍回鉤に達する.

 味覚中枢Geschmackszentrumへの求皮質性伝導路は中間神経(鼓索のつづきをなす)と舌咽神経ならびに両者の線維で孤束のなかを下行して孤束核(=Nucleus, terminalis n. intermedii et n. IX)に達するものからはじまり,そこから線維が内側毛帯を通って視床に達し,次いで海馬傍回にきている.

 遠皮質性伝導路は脳弓のなかを乳頭体へと走る(皮質乳頭体路Tractus corticomamillaris).そこからさらに乳頭視床束を通って視床前核へ,また乳頭被蓋束を通って被蓋網様核に達し,そのほかさらに上丘にも達している.視床前核からはさらに伝導路が視床内側核と淡蒼球とを越えて赤核・黒核・上丘にいたり,内側縦束の起始核に達する.被蓋網様核からは伝導路がさらに網様体延髄路Tractus reticulobulbarisと網様体脊髄路Tractus reticulospinalisのなかをすすみ,上丘からおこる伝導路は視蓋脊髄路のなかを走って運動性の根細胞に達する(図505).

 嗅覚中枢と前交連との関係については369頁を,また扁桃核との関係については365頁を参照せよ.

5. 大脳皮質のいわゆる連合中枢sogenannte kortikale Assoziationszentren

 上に述べた皮質の諸領域を合せても大脳の表面全体のおよそ1/3を占めるのみで,残りの2/3は皮質の連合中枢である.局所解剖学的にはこの連合中枢を次のように分けることができる:1. 前頭領frontales Feld, 2. 頭頂後頭側頭領Parietooccipitotemψorales Feld, 3. 島領insulares Feldである. P. Flechsigはこれらの部分を前皮質連合領,中皮質連合領,後皮質連合領と呼んで区別している.

 後連合中枢hinteres Assoziationszentrum.これは頭頂葉の諸回転,楔前部,外側および内側後頭側頭回の一部,後頭葉の諸回転の前方部あるいは外側部ならびに中側頭回と下側頭回とをふくむ.前連合中枢vorderes Assoziationszentrumは前頭葉の前方部にある.中連合中枢mittleres Assoziationszentrumは3者のうちで最も小さく,島の諸回転である.

 P. Flechsigによるとこれらの連合中枢が上に述べた諸領域とちがうのは次の点である:すなわちこれらの部分は放線冠線維を受けることなく,そのために末梢の器官と結合せず,従って外界とも直接には結合されていないのである.そして連合線維Assoziationsfasernによって知覚をつかさどる部分や感覚性運動性の部分と結合しているというのである.ところが今日までの経験によると,これらの連合中枢は皮質下の諸構造からそれほど完全に離れているものでないことがわかった.これに属するかなり多くの領域が皮質下の部分と結合を有することがはっきりと証明されたのである.たとえば角回がそれである.角回の皮質はたしかに投射線維をもっているのである.

 一方では,その他の皮質領域にも連合神経路が欠けていない.ただこの連合神経路はFlechsigの連合中枢ではとりわけよく発達しているのであって,それゆえこれらを特別に取りあつかうことの必要がある.

 連合神経路のはたらきは大脳皮質の知覚性領域と運動性領域との機能的な連絡にあり,運動性領域に流れこんでくる興奮にある程度の変形を加えるのである.後方の連合中枢が視覚領,聴覚領および嗅覚領に対する関係がそれであり,一方では前方の連合中枢が前後の中心回およびその付近にある身体の知覚運動領域に対する関係がやはり同じである.

 後方の連合領域は外界に源を発する興奮に変化をあたえ,前方の連合領域はわれわれの体のなかで生じ,皮膚・筋・粘膜および内臓からおこる感覚に影響をあたえる.それゆえ人間がその前方の連合領域を病気でおかされるとその人格の根底が揺がされることになる.他方,後方の連合領域の障害によっては空間上の位置の認識が混乱しまたは不能どなり,人や物体をとりちがえたり,さらに言語盲Wortblindheitとか言語聾Wortteubheitのようなはなはだ特徴のある言語障害を生ずるのである.またそのためこの両方の領域はたがいに直接の交渉をもっている.その交渉は両者のあいだに存左する体知覚中枢に仲介されておこつたり,また半卵円中心のなかに含まれている連合神経路による直接の交渉であったりする.この直接の連合神経路がおそらくは意識的な運動を行なうときに大きな役わりを演じているのであろう.

 第3の連合中枢は明かに言葉の表象Verbalsymboleの連合をつかさどり,つまりもっぱら言語中枢として作用するのである.この中枢が病気でやられると言語機能の障害がおこる(すなわち失語症Aphasieである).

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 すぐわかるように前後2つの主要な連合中枢をたがいに分類する基礎をなすのは全く生理学的なものである.形態学的な観点からすると,この分類に対してある種の疑義がないわけではない.

B. 伝導路Leitungsbahnen

 脊髄の項(319, 320頁)では伝導路を下行性absteigendのものと上下両行性ab-und aufsteigendのものとに分類した.この種の云い表わし方がまた脳の伝導路および脳と脊髄とのあいだの結合関係を考えるときにも有利である.

 とにかく多くの場合に「上行性」“aufsteigend”という伝導路の概念は若干の制限を加えて理解すべきである.すなわち知覚性であることが疑いなくはっきりしている伝導路もいくらかの数の下行性線維をふくんでいて,それゆえ上行性の伝導路系と通称されるものはたず比較的にそれであり,あるいは大部分が上行性線維であるというわけである.

 そのほかに次のような線維索が数多く存在する.すなわちその役目は身体の末棺部と中枢器官とを結合することにあるのでなくて,むしろいろいろな伝導路をたがいに結びつけているものである.すなわち伝導路は中絶せずに末梢から脳の皮質へと,またその逆の方向に走るのではなくて,伝導路からはある間隔をおいて側枝が横にでて近くの灰白質の核にあたえられ,あるいは核の介在によって伝導路がじかに中断される.これらの核じしんが特別な伝導烙を介して離れたところにある灰白質とつながっている.これらのものが側副伝導kollaterale Leitungの系統である.すなわち主伝導路のいろいろな種類の枝分れとみるべきものである.

 また伝導路系のあ,るものは上行性,下行性とも,そのいずれであるともいうことができない.なぜならこれらは両方向に走る線維よりなって,機能的に関係の深い中枢のあいだを結びつけ,そのために連合神経路Assoziationsbahnenと名づ. けられている.

1. 上行性の伝導路系aufsteigende Leitungs-System

 末梢から起こってくる脊髄のすべての上行性伝導路ないし後根の続きおよび求心性(知覚性)脳神経の続きをなす伝導路系もまた,諸所の核において中断されたのちに,けっきょく脳の皮質の神経細胞のまわりに終るのである.

 嗅神経の線維だけはそれらの中で例外をなし,その中枢における終末は嗅糸球のなかで嗅球ないし嗅葉(これらはすでに述べたように皮質の一部である)の僧帽細胞の突起とたがいにからみ合っている(図486).

 後根はその大部分が脊髄神経節の細胞の中心がわの突起よりなり,この突起は局所解剖学的ならびにその発生に基づいて次のごとく区別される:すなわち1. 早くから髄鞘をとる比較的よく発達した深層Stratum profundumと2. それよりおそく髄鞘をとる浅層Stratum superficialeとである.辺縁帯には(すなわちリッソウエル束Lissauersches Bündelの中には)ごくわずかの細い線維が後根から達していて,その線維は上行枝と下行枝に分れて,いずれも少数の脊髄節だけ上方ないし下方にのびている.

 そのほか後根には側柱の細胞からおこる神経突起でKen Kureによれば副交感神経に属するもめという少数の線維がある.

 後根線維は後索の内部でおのおの1本のいっそう細くて短い下行枝と1本のいっそう太くて長い上行枝とに分れる.両者は細い側枝を脊髄の灰白質にあたえているのが普通である.上下両方向にのびた枝の終末も灰白質のなかに入り終末分枝をなして終る(図400402, 405).

 主として4つの細胞群が区別されて,これらに後根の主枝または側枝の終末分枝が達している.それは 1. 両側のクラーク柱の細胞,2. 両側の後柱核の細胞,そのさいは線維が後交連を通って他側に達する,3. 中心群の細胞,4. 前柱の細胞である.

 後根線維の長い枝はブルダッハ索Burdachscher Strangのなかを上行し,それが一部は脊髄のいろいろ異なる高さで終り,一部はいっそう中心に向かって走り,延髄の後索核に達する.

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そのさい内側核には仙髄,腰髄および下部胸髄に属する根線維の枝,つまり言いかえれば下半身untere Rumpfhälfteからくる根線維の枝が達する.上部胸髄,頚膨大および頚髄に属する根線維,すなわち上半身(ただし頭部を除く)obere Rumpfhälfteからくる根線維は外側核に達する.

 後根線維の終末枝と側枝とが枝分れして終るところの近くにある細胞から側方に軸索が出る(前根線維がおこる前柱細胞をここでは除いて考える),これらの軸索は一部はそのがわの脊髄の諸索に入り,一部は前交連に達して,そこで交叉したのちに反対がわの索に達し,次いで上方に走る.

 後索核の細胞の神経突起は内側毛帯と索状体とに入る.

 後索の根線維の続きをなすものにまず2つの系統が区別される.1のものは後索内側核の細胞の神経突起よりなり,これは毛帯交叉の下部のいっそう長い部分を形成し,オリーブ間層の背方部に位置を占めて,そののち内側毛帯の内側部をなして,けっきょく視床外側核に達する.この外側核の細胞から出る視床皮質線維は散らばつて内包の後脚の後部を通り,放線冠とともに頭頂葉と中心後回とに達する(図496).

 2のものは発生のとき前者に先行する線維系であって,後索外側核の細胞の神経突起よりなり,この線維群はやはり毛帯交叉に達して,その上部のいっそう短い部分をなし,次いでオリーブ間層の腹方部で錐体の背方に位置を占め,さらに上方では内側毛帯の外側部をなす.

 この系統の線維もまた視床外側核た達し,そこにある細胞の神経突起は視床皮質路となって,放線冠とともに頭頂部と中心後回の皮質に達する.

 後索該からおこる線維のうち若干のものは視床を通りぬけて,直接に大脳皮質に達する(Hösel).

 ここに述べた両種の線維のほかに後索の中にはさらに脊髄内でおこつた後索線維endogene Hinterstrang-fasernの集りがあってこれらに加わっている(図405).

 すぐ上に述べた系統は,内側延髄視床路Tractus bulbo-thalamicus medialisおよび外側延髄視床路Tractus bulbo-thalamicus lateralisと名づけることができるが,これらはつぎつぎに側方へ枝を分かっていて,その枝としては網様体の諸核,橋核,黒核,四丘体の領域,乳頭体(乳頭体脚Pedunculus corporis mamillaris) (図505p, c, m)に達する線維が知られている.

 そのほかの著しい伝導路は後根線維が終る後柱核の細胞からでる神経突起よりなるもので(図405),これに属する大多数の線維は白前交連のなかを通って,ここで交叉して(図496),次いで側索基礎束に達し,そこで前脊髄小脳路のなかで脊髄視床路Tractus spinothalamicusという特別な線維束をなし,これはだんだんと外側に出てきて,けっきょく側索の周辺部を占めて延髄に達する.延髄ではその一部で内側腹方にある部分がオリーブ核の外側に位置し,これは上方にすすむとますます内側に位置が変り,オリーブ核の上部の高さで内側毛帯のなかに入り,この毛帯の外側部を占める.この伝導路は内側毛帯とともに視床に達し,次いで上に述べた放線冠の視床皮質路の線維束群に加わる.

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 小脳性の伝導路はいくつかに分けることができる.

1. 後脊髄小脳路Tractus spinocerebellaris dorsalis, dorsale Seitenstrang-Kleinhirnbahn(Flechsig).これは背核の細胞の神経突起よりなり,その突起は同じがわの側索の背側半へと走り,そこで脊髄の周辺部に位置を占め (randstdndige Lagerung),上行して延髄に達する.延髄では初めはオリーブ核と三叉神経脊髄路とのあいだにあるが,次第に背方に位置を変え,索状体に加わる.そこでは中心部に位置を占めて,一部は同側しかし大部分は反対側の虫部に達する(図497).

2. 前脊髄小脳路 Tractus spinocerebellaris ventralis, ventrale Seitenstrang-Kleinhirnbahn(Gowers).その線維は反対がわの後柱の核から起り,側索の前半の縁に沿って進み,そのさい後脊髄小脳路の腹方にある.この伝導路は側索の腹方部の周辺のところを後脊髄小脳路に隣接して上行する.しかし延髄の範囲でオリーブ核の高さでは,特別な1つの経路をとり,延髄の上部では三叉神経脊髄路と内側毛帯とのあいだにあり,橋被蓋になると顔面神経根のすぐ内側に位置を占める.前脊髄小脳路はさらに上方では三叉神経の根の内側にある.次いで外側背方に位置が変り,その一部は曲がって外側毛帯に外方から接し,上外方から結合腕をめぐって進み,そのさいは小脳の鈎状束Fasciculus uncinatusの外側に接している.そしてけつきくは前髄帆を貫いて他側の虫部に達するのである.

3. 延髄小脳路Tractus bulbocerebellares(Elze)は同側および反対側の後索核から出る.反対側からのものは内弓状線維となって縫線に達し,次いで他側の錐体の内側面と腹方面とをめぐって弓状核に達し,弓状核のなかで中断していることもあるが,けっきょくは前外弓状線維となって索状体に達する.同側の後索核から出る線維はこの核の背方面のところで後外弓状線維となり同じく索状体に達する(図497).

[図496]知覚性脊髄神経の中心径路(BechterewおよびR. Richterによる)

内側毛帯(=内側および外側延髄視床路+脊髄視床路)をで示す.bc視床を通りぬける延髄皮質線維;l後索外側部(楔状束);m 後索内側部(薄束);Ncd後柱核;Ncr上丘核;Nld後索外側部核(楔状束核);Nlt視床外側核;Nmd 後索内側部核(薄束核);Rd後根;spt脊髄視床路;tc視床皮質路.

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 脊髄視床路もまた延髄の側索核の細胞を介して小脳と間接的なつながりをもち(図458, 460, 461),この核に側枝を送っている.側索核の細胞の突起は網様体小脳路Tractus reticulo-cerebellarisであって,これは索状体のなかを走り主として片葉に達する.

[図497]脊髄と脳幹から小脳へ上行する線維束およびそれらの中心経路(BechterewおよびR. Richterによる)

は結合腕;は脊髄小脳路,延髄小脳路およびオリーブ小脳路;は小脳内の皮質核路.

Bc結合腕(赤核のところで);C Cajalの下行性外側小脳束;cn 皮質核路(小脳内の);Cr 索状体;d 歯状核;e 栓状核;f 室頂核;Fed 後外弓状線維;Fev 前外弓状線維;Fi 内弓状線維;g 球状核;l 後索外側部;m 後索内側部;Na 弓状核;Ncd 後柱核;Nd 背核;Nld 後索外側部核;Nmd 後索内側部核;No オリーブ核;Noa 背側副オリーブ核;ocオリーブ小脳路;P, Pプルキンエ細胞;rc 赤核皮質路(=赤核頭頂路);Rd 後根;rt赤核視床路;spcv後脊髄小脳路(Flechsing);spcv前脊髄小脳路(Gowers);spo 脊髄オリーブ路;tc視床皮質路.

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4. 他の線維群で索状体の内側部にあるものが核小脳路.Tractqs nucleocerebellaresであって,これは三叉神経・前庭神経・舌咽神経・迷走神経の終止核から出て室頂核と虫部とに達する.

5. 上に述べたものにさらに脊髄オリーブ小脳路Rückenmark-Oliven-Kleinhirnbahnが加わる.その線維は頚髄の灰白質に始まり,側索の腹方部の縁を脊髄オリーブ路Tractus spinoolivaris(図405)となつつて走り,けっきょくオリーブ核と副オリーブ核とに入る.オリーブ核の細胞はオリーブ小脳路Tractus olivocerebellaresを出して,この線維群は部分的に交叉し,索状体とともに小脳半球に達する.副オリーブ核から出る線維は虫部と片葉とに達する.

 上に述べたすべての小脳性の伝導路は,それから先きは結合腕を通って大脳の方に走るが,この結合腕はたくさんの個々の系統のものが集まってできており,小脳の中心部にある核を介して小脳皮質を赤核や視床外側核とむすびつけている.それより先きの結合をなすものは視床皮質線維であって,これは上行して頭頂葉の皮質と中心前,後両回とに達する.

 上行性の特別な1つの線維系が前索の内側縁に存在する.これは脊髄灰白質の深部の細胞から出るが,その細胞の所在を正確につきとめることは今日までに達成されていない.脊髄から延髄に移行するところでは,この伝導路は縫線の近くで後縦束の腹方に見られる.そして遠く脳幹の中まで追求できるが,どこに終るのかはまだ不確かなままである.とにかくこれは上方に向かって次第に弱くなるが,それは線維を失うからであって,これらの線維はおそらくつぎつぎと分れて出て網様体の核に行くのであろう.この系統は最初にP. Marieによって記載されたのであって,脊髄延髄路Tractus spinobulbarfs(あるいは脊髄網様体路formatio reticularisTractus spinoreticularis)と呼ばれており,そのなかには脊髄のいろいろな高さを脳幹の網様体の核と結びつけるいくつかの線維束が明かに存在している.

[図498]三叉神経の核と伝導路 (BechterewおよびR. Richterによる)

内側毛帯(三叉神経毛帯)およびその側枝で上丘核に達するもの. 三叉神経の小部および三叉神経起始核の細胞.

I 眼神経;II 上顎神経;III 下顎神経;C 頚髄;Fi内弓状線維;Ll外側毛帯;Lm内側毛帯;Ncr上丘核;Nlt視床外側核;No 三叉神経起始核(赤);Nt 三叉神経終止核;Ntsp 三叉神経脊髄路核;Pma 三叉神経大部;Pmi三叉神経小部(赤);tc視床皮質路.

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[図499]味覚伝導の経路

1次ニューロンは,2次および3次ニューロンは黒. ル 内側毛帯のなかを上行する中心性味覚路;fg1皮質下の伝導路;fs孤束;ta 内側毛帯のなかを上行する三叉神経の中心線維;ta1皮質下の伝導路.

 涙腺と唾液腺への神経伝導の経路 交感神経線維は赤,副交感神経線維は.N. V 三叉神経;N. VII 顔面神経;N. IX 舌咽神経.(Bechterew および Zeigerによる;いくぶん変更してある)

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 なおまた,かなりたくさんの短い伝導路が脊髄のなかで上行する性質をもっている.そういう短い伝導路がたとえば後索にあり,また前索および側索にもあって,Tractus cornumarginalesとよばれ,また特に後柱の付近,側索のいわゆる境界層およびリッソウエル束のなかにも広がっている.これらの短い伝導路はむしろ局部的な意義をもつことが明かであって,それは上行しつつ春髄のいろいろ違った高さをたがいに結合しているのである.

 脳神経の求心性線維の続き,すなわち三叉神経・前庭神経・舌咽神経・迷走神経の線維の脳内における伝導のぐあいが脊髄の後根線維のそれと同じようになっている.

 三叉神経では半月神経節がその脊髄神経節に相当するものである(図498).その細胞の末梢がわの突起は三叉神経の知覚性の幹をなし,中枢がわの突起は大部Portio majorとなって橋に入る.橋に入つたのちに三叉神経の知覚性の根線維はやはり上行枝と下行枝のそれぞれ1本に分れるが,その上行枝は下行枝よりも短くて,上方にすすんで三叉神経終止核のなかで散らばつてそこに終る.一方,長い方の下行枝は延髄の全長を貫いて頚髄の最下部まで達し,頚髄では後柱膠様質の上方の続きである三叉神経脊髄路核の外側にあり,到るところで側枝と≒終末枝を後柱膠様質にあたえている.

 三叉神経Nervus trigeminusの中心性伝導路(図498)は三叉神経終止核の細胞の神経突起よりなり,これらの突起は大部分が内弓状線維となって縫線を横切り,小部分のみは交叉しないままである.次いで両種の線維が集まって内側毛帯の背外側に特別な1団をなす.それより先きの経過の途中でこの線維団は次第に内側毛帯の背方の境に近づき,けっきょく四丘体のあたりで毛帯の一部となり,それといっしょに進んで視床外側核のなかの1つの小さい核に達する.それに続いているのが視床皮質路であって,これは中心後回の下部に達する.

 舌咽神経Nervus glossopharyngicusの上行性の伝導路(図500)は内神経節と外神経節の細胞からおこる中心がわの突起よりなる,これらの突起はいくつかに分れた小線維束をなして走り,膠様質に接して背内側に通り過ぎる.そのさい歯状核オリーブ路およびオリーブ小脳路の線維束群と交叉する(図462).次いで比較的短い上行枝とそれより長い方の下行枝に分れる.上行枝は灰白翼核Nucleus terminalis alae cinereae(=Nucl. terminalis n. IX., X. )のなかで枝分れし,下行枝は孤束となって下方に走る.孤束は膠様質の内側を走る線維群であって,これは迷走神経根の下行枝をもふくみ,下方に進むに従って次第に弱くなるが,それは孤束の神経線維が所々で分れでて膠様質と孤束核とに達し,そこにある神経細胞の周りに終るからである.

 これらの核の細胞からおこる神経突起は内弓状線維となって縫線に達し,ここでその大多数のものが交叉し,次いで白網様質の腹方部を上方に走る.そのさいこれらの線維は三叉神経の中心経路と同じように,次第に内側毛帯の背方面に近づき,三叉神経の中心線維に伴って上方に向かってすすむのである.そして内側毛帯とともに終いには視床外側核の小さい知覚性の核に達し,この核の神経細胞の周りでその終末分枝が広がって終る.そこの神経細胞から神経突起が始まり,これは舌咽神経の皮質下の続きとなって頭頂弁蓋た達するのである(図500).

 舌咽神経には中間神経N. intermedius(図499)が加わる.中間神経は膝神経節の細胞の中心がわの突起から来ると思われる.その末梢がわの突起はおそらく鼓索神経および舌神経に達し,舌の前2/3の部分に対する味覚線維をなすのであろう.

S. 437

中間神経の経過と終末ほ舌咽神経のそれらと類似しており,その下行性線維はやはり孤束に達し,孤束核Nucleus tractus solitariiに終る.孤束核はまたNucleus terminalis n. intermedii et nucleus terminalis accessorius n. glossopharyngiciとも呼ばれるのである.中間神経の中心がわの伝導路は舌咽神経の知覚性線維の経過と全く一致している.

[図500]舌咽神経と迷走神経の核および伝導路(BechterewおよびR. Richterによる)

は内側毛帯,は運動性ニューロン. IX舌咽神経;X迷走神経;Fi内弓状線維;i 中間神経;Ll外側毛帯;Lm内側毛帯;Na 疑核;Ncr上丘核;Nd迷走神経背側核(副交感性)(迷走神経背側核はNomina Anatomica JAponicaではNucleus originis parasympathicus nervi vagiであるが,本書では原著のままNucleus originis dorsalis(parasympathicus)nervi vagiとする.(小川鼎三));Nlt視床外側核;Ns延髄唾液分泌核;Nt灰白翼核;Nts孤束核;Sil毛帯オリーブ間層;tc 視床皮質路.

 迷走神経Nervus vagusの知覚性の部分sensible Anteile(図500)は頚静脈神経節と節状神経節とから始まる.これらの神経節の細胞からおこる中心がわの枝は束をなして延髄の外側部に入り(図461),そのさい舌咽神経より下方で入る.そして舌咽神経の線維と同じく第四脳室底の下で短い上行枝と長い下行枝とに分れる.前者は第四脳室底で膠様質の近くにある神経細胞に達し,後者--すなわち下行性の細い線維--は下方に向かって進み孤束のなかを舌咽神経の線維といっしょになって走り,次いで膠様質に入り,けっきょく枝分れしてその終末分枝がこの膠様質に属する神経細胞において終るのである

 迷走神経の中心経路はそれより先きは内弓状線維となって,舌咽神経のものと同じく大部分が縫線で交叉し,一部は交叉せず同側にとジまって網様質の腹方部で毛帯層の背方を上行し,けっきょく全部が内側毛帯の経路に移行する.そしてこの毛帯といっしょになって視床外側核に達し,この核より上方では視床皮質路に続き,この視床皮質路は舌咽神経の中心経路が皮質で終るところの近くで皮質のなかに広がっている.

S. 438

 内耳神経Nervus statoacusticusは聴神経すなわち蝸牛神経N. cochleaeと前庭神経N. vestibuliとよりなり,それらの中心性伝導路ははなはだ違った走り方をレている.そして蝸牛神経の伝導路は側頭葉に達し,前庭神経のものは小脳に達するのである.

 蝸牛神経N. cochleae(図501)はラセン神経節の双極細胞からおこる中心がわの突起よりなり,その末梢がわの突起はコルチラセン器Organon spirale Cortiに入りそこで終る.蝸牛神経は橋の下界で脳の内部に入り,前庭神経は橋じしんで,しかも索状体の内側に入るが,蝸牛神経はこれに反して索状体の腹方かつ外側に入って,その線維はそこにある蝸牛神経腹側核Nucleus terminalis ventralis n. cochleaeと蝸牛神経背側核Nucleus terminalis dorsalis n. cochleaeとに終る(図462).蝸牛神経の根線維のいくつかは直接に下丘あるいは大脳皮質に達する.

[図501]蝸牛神経の核と伝導路 オレンジ色で示す(BechterewおよびR. Richterによる).

 赤は顔面神経および外転神経の根線維と視覚聴覚反射路(Tlm). Cc 後交連;cc 下丘皮質路;Cgm 内側膝状体核;Cr 索状体;gc (聴覚の)膝状体皮質路;Ncc下丘核;Ncr上丘核;Nd蝸牛神経背側核;Nll外側毛帯核;Nom 後脳オリーブ核;Nv 蝸牛神経腹側核;N. VI 外転神経核;N. VII. 顔面神経核;P 錐体束;P. I. 顔面神経根第1部;Sm 髄条;Tlm 内側縦束;x介在ニューロン.

 蝸牛神経腹側核の細胞の神経突起は直ちに内側に向い,橋の下半部では台形体を作り(図464),台形体は縫線で交叉する横走線維の集りである.これらの線維は,顔面神経核に側枝をあたえてすすみ,一部の線維は同側と反対側との後脳オリーブ核に達し,一部は後脳オリーブ核のそばを通り過ぎて被蓋の外面近くで外側毛帯となり,外側毛帯核が,その線維の一部を受けとる.そして残りの線維は上丘の中央を占める灰白質の細胞に側枝を出しつつ下丘に達する.上に述べたすべての核からは--側枝が分布する運動性の脳神経核は別として--上行性の神経突起が出て,これらの突起がみな集まったものが中心性の聴覚伝導路であって,これは台形体の高さで縫線において交叉したのちに外側毛帯の範囲をすすむのである.

S. 439

そのほかに外側毛帯は同側および反対側の台形体核からの線維をも導き,外側毛帯核からの線維によって数を増し,同側および反対側の下丘核に終り,また上丘の中央部にある灰白質(視覚聴覚反射路の核)にも終る.外側毛帯の線維の他の一部は,下丘から出る線維が加わって数を増して,内側膝状体に達し,さらにこれからおこる線維が(聴覚の)膝状体皮質路Tractus geniculocorticalis(acusticus)となって側頭葉の皮質,しかもヘシュル横回Heschlsehe Querwindungenにいたる.この経路は内側膝状体から視床下部を通って内包に達しついで尾状核尾と側脳室下角の上方を走り,前ヘシュル横回vordere Heschlsehe Querwindungenに達するのである.

S. 440

下丘から出る直接の線維は同じ路を通って側頭葉の皮質に達する(図501).

[図502]前庭神経の核と伝導路I(BechterewおよびR. Richterによる) Bc結合腕;Crm 索状体,その内側部=核小脳路;d 歯状核;e 栓状核;f 室頂核;g 球状核;nc 同側の虫部に達する核小脳路の線維;nc' 反対側の虫部に達する核小脳路の線維;Nd 前庭神経背側核;Nl前庭神経外側核;Nm 前庭神経内側核(三角核);rc 赤核皮質路;rt赤核視床路;Rv 前根;tc視床皮質路.

 蝸牛神経背側核Nucleus dorsalis n. cochleaeから出る神経突起は第2の中心性聴覚伝導路をなし,これは髄条となって内側腹方に走り,毛帯の背方で交叉して,それからは外側毛帯に加わるのである.その途中でこれに属する線維の少部分は同側の後脳オリーブ核にいたり,別の一部は反対側の後脳オリーブ核に達するが,残りの線維は外側毛帯核と下丘に入り,一部は直接に内側膝状体に達する.ここに述べた聴神経線維の路はその側枝をまた顔面神経と上丘とに送るが,その伝導路のつづきは下丘と外側毛帯核からおこる神経突起よりなり,それがみな集まって下丘腕を形成している.その線維がすすんでゆき一部は内側膝状体に入り,一部は蝸牛神経腹側核から出る線維と同じように膝状体のところを通り過ぎて(聴覚の)膝状体皮質路の中を皮質に向かって走り,主として上側頭回に終るのである(図501).

[図503]前庭神経の核と伝導路II(BechterewおよびR. Richterによる) Cc後交連;Crm 索状体,その内側部= 核小脳路;d 歯状核;f 室頂核;Fi 内弓状線維(内側毛帯をつくる);g 球状核;nc 虫部に達する核小脳路の線維;Ncc 後交連核および内側縦束核;Nd 前庭神経背側核;Nl 前庭神経外側核;Nm 前庭神経内側核;Nsp前庭神経下核;rc 赤核皮質路;rt 赤核視床路;Rv 前根;tc 視床皮質路.

 前庭神経の根(図502, 503)はその経過の途中に前庭神経節が介在しており,その緬胞の末梢がわの突起は球形嚢斑と卵形嚢斑Maculae sacculi et utriculiおよび膨大部稜Cristae ampullaresに達する.その中心がわの突起は延髄と橋との境で蝸牛神経根のすぐ内側かつ上方で橋の実質のなかに入り,索状体と三叉神経脊髄路とのあいだを進み,菱形窩の外側の角に達する(図463).ここで直ちに分れて短い上行枝といっそう長い方の下行枝とになる.

S. 441

その上行枝は前庭神経背側核に達し,下行枝は前庭神経外側核と内側核とに入る.下行枝は前庭神経の下行根Radix descendensをなし,これは次第に線維をダイテルス核の神経細胞の周囲にだし,また側枝と終末枝とを前庭神経下核にあたえるので,下方に行くほどますます減少する(図460462).

 前庭神経背側核と外側核の細胞からでる神経突起は次のような伝導路をなしている.すなわち1. 小脳に達する核小脳路Tractus nucleocerebellaresは索状体の内側部にあって,とくに球状核と室頂核とに達する.そのほかに虫部と片葉との皮質に達する直接の線維もある.それより先きの大脳に達する経路は結合腕め線維に説り仲介される.前庭神経核から出る別の線維は内弓状線維となって,同側および反対側の網様体に達し,三叉神経起始核および動眼神経核とつながりを有ち,さらに内側毛帯のなかを走って視床外側核に達する.これが核視床路Tractus nucleothalamiciである.

[図504]視覚伝導路(BechterewおよびR. Richterによる)

 A 有線領;Ch 視神経交叉;Cgl外側膝状体(外側膝状体核);Dtd 背側被蓋交叉 Decussatio tegmenti dorsalis(Meynert);m 黄斑よりの線維Fibrae ex macula;Tlm 内側縦束;I 1次“primäir”の視放線([視覚の]膝状体皮質路+視床枕皮質路);II 2次“sekundär”の視放線(皮質視蓋路).

 反射性の伝導路reflektorische Bahn:前庭神経外側核(Deiters)からでる神経突起が,一方では脳室底の下を内側に走って,一部は同側の,一部は反対側の内側縦束にいたり,動眼筋を支配する諸神経およびそのほかの運動性の脳神経核と結合する.他方では前庭脊髄路Tractus vestibulo-spinalisという脳から脊髄につづく下行性の特別な伝導路をなしている.逆の方向に走る伝導路については452・453頁の小脳1とIIIとの項を参照せよ.

 両側の視神経Fasciculi optici(図504)の線維は網膜の神経細胞からの神経突起であり,この突起は3次ニューロンである(図360636).

 人では視神経線維の一部は中心の方に向う経路において交叉し,そのさい半分以上の線維(網膜の内側部からおこる線維)が他側の視索に達する.

S. 442

 いわゆる黄斑束Maculabündelに属する線維の一部は,臨床的経験によって知るごとく,視神経交叉のなかでふたまた二叉に分れている.視神経の線維は視索となって中心に向い,いくつかの核に達する.この線維群は視索の膝状体部Pars geniculata,視床部Pars thalamica,中脳部Pars mesencephalicaとなって,以前に“primäre Optikusganglien”(1次視神経節)と呼ばれたところ,すなわち外側膝状体,視床枕および上丘に達するのである.視神経線維のうちでこれらの1次中枢を越えて皮質に達するものはない.

[図505]中枢における嗅覚伝導路とその反射系(BechterewおよびR. Richterによる)

 Ao 嗅傍野;Cm乳頭体(乳頭体核);Cr 前交連;Fmt乳頭視床束(Vicq d’Azyr);Fr 反屈束(Meynert);Gi脚間核;Lm 内側毛帯;Na 疑核(舌咽迷走神経腹側核);Ncc 後交連核と内側縦束核;Ncr上丘核;Nh 手網核;Nlt視床外側核;Nrt 視床前核;Ntr 被蓋網様核;Pcm 乳頭体脚;Ptf 前頭視床脚(前視床脚);Ptp 頭頂視床脚(上視床脚);Si中間嗅条;Sl外側嗅条;Sm内側嗅条;Smt視床髄条;Tcm 皮質乳頭路;To 嗅三角(核);Tom 嗅中脳路 Tractus olfacto-mesencephalicus(脳底嗅束 basales Riechbündel, Wallenberg);Tmt乳頭被蓋束;Ugh海馬傍回鈎;x 手網核から後交連核と内側縦束核に達する線維;y 乳頭体核から出て上丘核に達する線維;z 脚間核から出て被蓋網様核に達する線維.

 そのうえ線維の少部分は外側膝状体に入る前に方向を変えて,大脳脚の外腹方の面を廻って走り,小さい円錐形の横脳脚束核Nucleus tractus peduncularis transversiに入って消失する.

 視索のなかに含まれるグツデン交連Guddensche-Kommissur,すなわち腹側視索上交叉Decussatio supraoptica ventralisと視索の上方にあるマイネルト交連Meynertsche Kommissurとは視覚伝導路と何も関係がなくて,一定の灰白体のあいだの関係をつけている.グッデン交連は内側膝状体につづき(?),マイネルト交連はレンズ核につづいている.

S. 443

 視床との直接の結合は視索上視床路Tractus supraopticothalamicusであり,これは視神経交叉の上縁を越えて直ちに間脳に入り,次いで下視床脚のなかを通り視床に達する.

 上に述べたすべての核のなかで視索の線維が終る.これらの核の細胞の神経突起は脳のほかの部分に達する.しかし大脳皮質に達するのは外側膝状体からの線維だけである.これが(視覚の)膝状体皮質路Tractus geniculocorticalis(opticus)であり,またHeldによれば視床枕から出る(視放線の)視床枕皮質路Tractus pulvinocorticalis(radiationis opticae) もここに達し,求皮質性のいわゆる1次視放線corticopetale “primäre”Sehstrahlungは後頭葉の鳥距溝の範囲に達し,ここでその終末枝に分れたものが有線領(414頁参照)の第4層と第5層の散在した大きな神経細胞と関係をもち,この有線領は以前に2次視神経節“sekunddres Opticusganglion”と呼ばれたのである.

 聴覚伝導路におけると同じく視覚伝導路においても逆行する系統rückläufige Systemeが存在するといわれる.このもの自身は網膜の内網状層のなかで,神経突起がなく樹状突起を豊富に出しているグリア芽細胞の近くで枝分れして他のものとつながらずに終わっている.しかしこのことは別のがわから異論が述べられている(図636).

 1次視放線の線維は外側膝状体と視床枕とから出て,まず前外側に向かって後頭角あ天井の上を通り,側頭葉の尖端をさしてすすみおよそ扁桃核のあたりにまで達する.ここでこの線維群は側頭膝temporales Knieをなして鋭く曲り,その後にやっと後頭葉に向うのである.その経過の途中この部分では下角と後頭角との下壁に沿っている.後頭角の内側でこれらの線維は後頭膝 occipitales Knie(図504)を形成しつつ鋭く第2の曲りをなす.いわゆる2次視放線“sekundäre”Sehstrahlung については451頁を参照せよ.

 視覚領皮質における網膜の各部の局在:鳥距溝の各壁には視野の一定の1/4が対応している.それは1. 網膜の右上部(=視野の左下1/4)は右半球の鳥距溝の上壁に対応する.2. 網膜の左上部(=野の右下1/4)は左半球の鳥距溝の上壁に対応する.3. 網膜の右下部(=視野の左上1/4)は右半球の鳥距溝の下壁に対応する.4. 網膜の左下部(=視野の右上1/4)は左半球の鳥距溝の下壁に対応する.そのさい鳥距溝が4つの各領域のあいだをくっきりと境するものでないことを注意しなければならない.

 嗅糸Fila olfactoriaの線維は嗅上皮の中にある神経上皮細胞の中心がわの突起であり,またその末梢がわの突起は嗅上皮の表面に自由に終わっている.嗅糸は中枢に向かって箭板の小孔を貫通し,嗅球にその下面から入り,ここで嗅糸球の内部で枝分れする.嗅糸球のなかで僧帽細胞の長い原形質突起も終り,僧帽細胞はいっそう深いところで特別な1層をなし,この細胞からでるその他の樹状突起は側枝の方向をとっている(図486).

 僧帽細胞の神経突起は中心の方向に走って嗅索線維となり,さらに1. 外側嗅条のなかを海馬傍回鈎(図505)に,2. 内側嗅条のなかを嗅三角の内側の稜に沿って嗅傍野に,3. 中間嗅条のなかを通って嗅三角に達する.その後の経路は,1. 海馬傍回鈎からは脳弓(371頁参照)が,2. 嗅傍野からは梁下回,縦条;小帯回,歯状回,鈎小束,海馬傍回鈎が,3. 嗅三角からはいわゆる脳底嗅束“basales Riechbündel”が出て被蓋網様核に達し,視床髄条は手網核,反屈束,脚間核をへて背側被蓋核Nucleus tegmenti dorsalisに達する.

 その途中で嗅糸の中心がわの続きは側枝をだし,この側枝が嗅索の灰白質の錐体細胞と接する.この錐体細胞の神経突起はそれ自身で中心に向かって進んでいる.少くともこの線維の一部は前交連の前部Pars anteriorをなしている.

 上に述べた線維の各種類のほかに嗅球には遠心性に走る線維がある.これは僧帽細胞層のすぐうしろにある顆粒層のなかで自由に枝分れし,この顆粒層には神経突起をもたない特別な細胞があり,軸分枝細胞もある.

S. 444

2. 下行性の伝導路系absteigende Leitungs-Systeme

 下行性の伝導路系は大脳皮質Hirnrindeめ細胞の神経突起よりなり,これらは下部にある諸核に達する.これらの核からおこる神経突起が末梢にすすみ,それは運動性の脳神経として,また脊髄の運動性の前根線維として末梢に走る.後根からの下行性線維と知覚性の脳神経からのそれとだけが例外をなしている.脊髄に達する線維は皮質脊髄路Tractus cqrticospinales(図507)と呼ばれ,脳神経核に達する線維は皮質延髄路Tractus cortlcobulbares(図507, 508)と呼ばれる.

[図506]錐体路 側方よりみる.(Bechterewによる)

 Nn 黒核;Np 橋核;Pv 錐体前索路;Pl錐体側索路;Rv 前根;Tpc 橋[核]小脳路.

 錐体路Porramidenbahn(図506)はヒトでは中心前回の領域と上前頭回および中前頭回(?)の後部において巨大錐体細胞をもって始まり,その神経突起は放線冠の一部をなして下行し,内包の後脚の内側1/3のところに達する.次いで錐体路の線維は大脳脚に入り,横断面で大脳脚を5つに分けたうちの第2~第4の部分を占める(図468).さらに進んで橋縦束となって橋の腹方部を貫くが,そこでは一部が横走する橋線維によっていくつかの束に分割される.次いで延髄においては錐体をなし,その大部分の線維は錐体交叉をなして他側に達する(図507).

 錐体路の大部分のものはここで交叉して,側索の背方部にいたり,外側皮質脊髄路(錐体側索路) Tractus corticospinalis lateralis (Pyramidenseitenstrangbahn)をなしている.錐体交叉で交叉しない少部分の錐体路線維は前索の内側部を前皮質脊髄路(錐体前索路)Tractus corticospinalis ventralis (Pptramidenvorderstrangbahn)となって下方に走り,その線維はけっきょく脊髄の白前交連を通って他側に達するのである(図405).

S. 445

[図507]錐体路,三叉神経と顔面神経の運動性の部分の中心伝導路 前方からみる.(Bechterewによる)

 Dp 錐体交叉;Fc 交叉して三叉神経核にいたる線維Fibrae cruciantes;Fd 直接線維Fibrae directae;Fp 錐体束;NV 三叉神経起始核;NVII顔面神経核;Pl 外側皮質脊髄路(錐体側索路); Pv 前皮質脊髄路(錐体前索路);Rv 前根;Tcb 皮質延髄路;Tcsp 皮質脊髄路.

 前索と側索とを下行する両錐体路の終末線維は前柱の神経細胞に達する.

 その経過のあいだに錐体路は多数の側枝をだす(図506).そのような側枝からなる比較的太い線維束が橋核にあたえられ,なおまたそのような線維束が黒核にゆく.しかし脊髄のなかでも錐体路からかなり多くの側枝がでて,これらは前柱細胞に達する.前柱の細胞からでる神経突起は前根線維となって脊髄からでて末梢神経の内部を走り体幹および体肢の諸筋に運する.1. 中前頭回(?)の後部からでる錐体路の晶部は横隔神経Nervus phrenicusの系統になる.この線維群は放線冠のなかを下方に走りプ膝に近く内包の前脚を通りぬけ,次いで大脳脚を貫き,部分的に交叉して延髄に達する.

S. 446

 この系統のそれより先の経路は不明であって,ただその経過はこれを刺激するときに現われる吸気効果によって生理学的にだけ追跡できるのである.

 おそらくその線維は延髄のなかで,呼吸中枢“Respirationskern”(おそらくそれは灰白網様体の全体であろう)に達し,次いで下行して頚髄に達し,ここでは側索の腹方部で前柱の近くにあり,けっきょく部分的に交叉したのちに第4(および第5)頚髄の横隔神経の核に入る.この核に相当する前柱細胞の軸索が脊髄神経の前根を通り横隔神経となって横隔膜に達する.

 錐体路線維の他の一部は上前頭回の後部からでて(図508c),ほかの錐体路線維束とともに下方に走り,一部は交叉し,一部は交叉することなく延髄の下部において疑核の下部に達し,また頚髄のなかを走って前柱(第5, 第6,第7頚髄まで)の背外側にある特別な細胞群に達する.この前柱細胞が副神経核Nucleus originis n. accessoriiである.大脳皮質からきてこの核に達する線維は副神経系Accessoriussystemと名づけることができる.その続きをなすものは副神経の根であり,この核から発して背方に走り,次いで側索を通り,ちよつと垂直に上行する方向をとってから側方に向きを変えて,けっきょく副神経に入り,僧帽筋と胸鎖乳突筋とに達して,これらを支配する.

 中心前回の下部の領域において顔面神経系Facialis-System(図507, 508)が始まる.これは放線冠の内部を下方に走り,膝に近く内包の後脚の中を通り,大脳脚では錐体路のすぐそばにある.顔面神経系の線維は錐体路に伴って橋底部のなかを走り,次いでその大部分が橋の下部において交叉し,けっきょく顔面神経核に達するが,そのさい注意すべきことは,前頭部と眼瞼の筋を支配するこの核の部分は交叉性のもののほかに同側性の線維をも受けることである.顔面神経核の細胞から起る神経突起は背内側の方向に走り,外転神経核の上方で顔面神経の内膝を形成し,次いで顔面神経根となって外に出る(図463, 464, 493).

 顔面神経系より下方で中心前回の下部の細胞からは下行性の三叉神経系Trigeminus-System(図507, 508)が起る.これは顔面神経系と同じように放線冠をなしてすすみ内包・大脳脚・橋を通る.下丘の下部の高さで三叉神経系の線維は錐体路から次第に背方に離れてゆき,縫線で部分的に交叉して三叉神経起始核に達する.この核の細胞から出る神経突起が三叉神経の運動性の根である.

 下行性の三叉神経系としてはまたいわゆる三叉神経の副核accessorischer Trigeminuskern tre達する線維束がある.この副核は四丘体の範囲と橋の上部で中心灰白質の外縁に存在する円みを帯びた神経細胞の集りで,これが青斑の細胞と直接につずいている.この線維系統の中心経路は決定的に証明されてはいないが,きつと次のようになっているのであろう.すなわちこれに属する線維は大脳皮質から出て放線冠のなかを下方に走り,内包を通りぬけたのちに被蓋に達し,中心灰白質のすぐ外側にある特別な線維束をなし,この束は横断面では三日月の形をして上に述べた核にまで続いている.この線維系の末梢ニューロンは三叉神経中脳路により形成されるが,別の意見によればこの中脳路は三叉神経の知覚性部分の上行性の根であるという.

 いま1つ重要なのが眼に行く線維系Augen-Faser-systemであって,これは中前頭回の後部の細胞から起り,その神経突起は放線冠のなかを下行し,内包の内部ではその膝の近ぐにある.

S. 447

これからは2つの線維束が出る(図508).その1つは錐体路とともに走り,橋の範囲で被蓋に移行し,縫線で交叉して他側の外転神経核に向う.外転神経核は内側縦束の線維(図503参照)によって内側[眼球]直筋を支配する動眼神経核の部分と結合している.第2の線維束はおそらく上丘と視床の後方部との間のところで上に述べたものから分れる.そして被蓋に達し,一部は他側に行き,まだわかっていない路を通って反対側の動眼神経核のその他の部分と同側の滑車神経核とに達する.

[図508]運動性の脳神経の伝導路,核および根 皮質延髄路Tractus corticobulbares(BechterewおよびR. Richterによる) a, b 眼球回転“Augendrehung”に対する皮質の中枢とそこから眼筋の運動を支配する神経(N. III, N. IV, N. VI)の核にいたる伝導路;c 肩部挙上“Schulterhochziehen”に対する皮質の中枢とそこから副神経(N. XI)の核に達する伝導路;fロと眼瞼の筋に対する皮質の中枢とそこから起こって顔面神経(N. VII)の核にいたる伝導路;h “舌”に対する皮質の中枢と舌下神経の核への伝導路;k“咀嚼”に対する皮質の中枢と三叉神経の運動性の核に達する伝導路;s “喉頭”“咽頭”に対する皮質の中枢およびそこから舌咽神経と迷走神経の筋運動性の核(=疑核)に達する伝導路; N. III, N. IV, N. V, N. VI, N. VII, N. XI, N. XII=動眼神経核,滑車神経核など以下これにならう.

 外転神経核の細胞の神経突起は交叉することなく腹方に走り(図464),橋の下縁から外に出る.滑庫神経核の細胞の神経突起は背方に走り,前髄帆の領域で完全に交叉して四丘板のうしろで外に出る(図466, 467).最後に動眼神経核の細胞の神経突起(図469, 470, 491)は大部分が腹方に走り,かつ交叉していない.しかし他の神経突起,それは動眼神経の主核の下部からでる神経突起はこの核の背方で交叉している.

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[図509]大脳基底核Stammganglienのあいだの伝導路(緑);錐体路(赤);錐体外路(緑);大脳皮質と視床とのあいだの結合=黒;錐体外路系に直接あるいは間接に入ってくるニューロン群=青.(H. Spatzによる.技術的に少しく変えてある.)a, a視床から出て線条体に達する線維;b, b線条体から出て淡蒼球に達する線維;c 淡蒼球から出て視床に達する線維;d 淡蒼球から出て同側の視床下核と反対側のそれ(e)とに達する線維;f 淡蒼球から出て赤核に達する線維;g 淡蒼球から出て視床下核に達する線維;h, h 淡蒼球から出て黒核に達する線維とその逆の方向のもの;t 大脳皮質から出て赤核に達する線維;k 大脳皮質から出て視床に達する線維;P 皮質脊髄路;m 中心被蓋束zentrale Haabenbahn;n オリーブ脊髄路;o 赤核脊髄路;*一*終脳と間脳との境界.

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両者が集まって束をなし,そして大部分が外側に凸の弓を画いてすすんで動眼神経溝に達しここで脳の外に出る.

 舌下神経Nervus hypoglossusの系統(図508, h)は中心前回の下部(顔面神経系の領域より下方)の細胞の神経突起よりなる.その線維は放線冠に達し,内包の後脚の前方部で膝に接するところを通って,大脳脚と橋に達し,そこでは顔面神経系のすぐそばにある.ついで錐体のなかを通って舌下神経核の高さにまで達し,そこで錐体から出て背方に走り,その大部分は縫線で交叉して,舌下神経核に終る.この核の細胞の神経突起が舌下神経根を形成する.

 舌咽神経Nervus glossopharyngicusと迷走神経Nervus vagusとの系統は中心前回の最も下方の領域の細胞から出る.その神経突起は放線冠のなかを下行して,内包をその膝の近くで貫き,大脳脚では錐体路といっしょに走る:延髄のなかで部分的に縫線において交叉し,同側および反対側の疑核に達する.

 疑核の上方部から出る神経突起は脳室底の下を側方に走り,延髄の外側部から少数の束となって出る.これらの束が舌咽神経の幹を作るのである.少数の線維が内側に走り,縫線を越えたのちに反対側の舌咽神経の根に移行している.疑核の上方部から出る軸索はまず背方に進み,第四脳室底の灰白質に達したのちに外側に方向を変えて,前に述べた舌咽神経根に達する(これは茎突咽頭筋を支配する).

 迷走神経の根線維は両側の疑核の下部の神経突起として発し,舌咽神経の線維束に極めてよく似た経路をとって進む.これらの線維はその脳内経過の全体にわたって舌咽神経根の下方にある.これによって迷走神経の幹ができる.

 狭義の錐体外路系extrapyramidal-motorisches System im engeren Sinne(Spatzによる)は多くは短い伝導路が上下に続いて連鎖したものよりなっている(図509).これには次の6つの核が属する.それは線条体,淡蒼部(淡蒼球),視床下核,黒核(黒質),赤核,歯状核である.これらの核のすべてに共通な点は,直接の知覚性伝導路を受けることがなくて,大脳皮質,視床,四丘板,小脳皮質から興奮をうけとるのである.そのうえこれらの核の細胞が多量の鉄を含むことにおいて特徴がある.これら6つの核は堂々たる線維束によりたがいに結合し,この結合線維束は残らずといってよいくらい往復の両方向に走り,一部は他側にも達している.錐体外路系には長い下行性の伝導路abführende Bahnenがない.その例外は赤核脊髄路であって,これも胸髄まで達するのみである.運動性の細胞に直接に達する錐体路の長い線維とくらべると錐体外路系は短い結合が上下にはまり合ってできているのであって,線条体から淡蒼球に,さらに視床下核,黒核,赤核,オリーブ核に達し,オリーブ核から頚髄にいたり,次いで索細胞,それも特に網様核の索細胞によって仲介されて運動性の神経細胞に達するのである.

 錐体外路系は意志による目的運動とは関係がないが,筋の緊張を正しく保持することおよびいろいろな筋の共同作用に重要な役割をなしている.

 広い意味では錐体外路系は大脳皮質にはじまる錐体路以外のもので脊髄に達するすべての伝導路を包含する.

すなわち赤核脊髄路,視蓋脊髄路,前庭脊髄路,オリーブ脊髄路,黒核脊髄路,内側縦束がそれである.

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Bingは脳の下部中枢から出て下行するこれらの伝導路をFasciculi subcorticospinales(皮質下脊髄束)の名でまとめている.

 視床から出る下行性の伝導路:これに属するものとしてまず第一に挙げるものは皮質の中心運動領からでて放線冠のなかを下行して,視床の内側核に達する伝導路である.この内側核の細胞から起る線維は同側の赤核に達し(一部は反対側の赤核にも達する),赤核の大細胞性の部分からは新たに下行性の線維がでて,これは腹側被蓋交叉wentrale Haubenkreuzung(Forel)のなかで正中線を越え,さらに赤核脊髄路(モナコフ束)Tractus rubrospinalis(Monakowsches Bündel)となって延髄の外側面に沿って下方に走る.そこまでゆく途中でこの系統は線維の定まった部分を顔面神経核と三叉神経核とにあたえ,そして脊髄の側索に移行する.この線維からの側枝と終末枝とが運動性の前柱細胞に達する(図405).赤核の小細胞性の部分からでる別の線維群がオリーブ核に達する.これが赤核オリーブ路Tractus rubroolivarisであって,さらにオリー一ブ核から線維がでてオリーブ脊髄路Tractus olivospinalisとなりヘルウェク三稜路のなかを進み,頚髄にまで達する.この線維は運動性の前柱細胞に終る.同じく赤核の小細胞性の部分からでる別の線維が網様核Nuclei reticularesに達していて,これが赤核網様体路Tractus rubroreticularisである.その脊髄への続きは網様体脊髄路Tractus reticulospinalisである.

 視床を通って下行するいま1つの伝導路は同じく皮質の中心部にある運動領にはじまり,放線冠のなかを下行して,視床の内側核に達する.次いでこの核の細胞からはBechterewにより発見された線維束がでる.この線維束は反屈束の線維のそばでその内側を通り,内側縦束(後縦束)の外側に接しており,四丘体の領域では外側腹方への方向をとって進み,次第に正中線に近づいて,橋背蔀の網様核(図464)に達する.これが視床網様体路Tractus thalamoreticularisである.この核じしんは網様体脊髄路Tractus reticulospinalisを前索基礎束に送っており,ここから運動性の前柱細胞に達する(図405).

 皮質の中心部にある運動領からでて,放線冠のなかを下行する第3の視床線維群はやはり視床の内側核に達する.ここから1線維索が起こってまず(視床と四丘体とのあいだの高さで)内側縦束の内側腹方を走り,次いで反屈束の背方に位置を占める.赤核の高さでは背側被蓋交叉の腹方で,かつ動眼神経根の内側にある.橋の範囲では縫線の近くに泣置が変り,その腹方の線維束が内側毛帯の背内側縁に接するが,背方は内側縦束に達していない.さらにそれより先の経過においてひき続き縫線に沿っており,この線維束はその場所で延髄に近づくと減弱して,下中心核の領域で全く消失する.

 この伝導路の下方の部分はあまりよくしらべられていないが,その線維は延髄の灰白網様質の細胞(図458)と関係をもっていることはだいたいに疑いがないといえよう.新たにご,で始まる線維は,おそらくは網様体脊髄路Tractus reticulospinalisとなうて脊髄の前索基礎束のなかを下方に走り,運動性の前柱細胞に達する.

 視床(および淡蒼球)においてなお視床オリーブ路Tractus thalamoolivarisの線維の一部が起り,これは被蓋の中心部(図470)を走り,赤核からでる線維群(図509),すなわち赤核オリーブ路Tractus rubroolivarisを合せて,延髄に向かって次第に外側腹方にその位置が変り,次いでオリーブ核の外側に達し,この核に終る.この経路の続きをなすのはオリーブ脊髄路Tractus olivospinalisであって,これは前根のでる場所に相当して頚髄のなかを下行している.

 上丘を通る線維系については,まず中心前,後両回からでる線維群を述べる.これらは放線冠のなかを内包に向かってすすみ,ついで大脳脚の外方の領域にいたり,けっきょく上丘核に達する.

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ここで起る線維束はさらにすすんで扇形に広がりながら上丘の中心灰白質を囲み,背側被蓋交叉(Meynert)を作つたのちに視蓋網様体路Tractus tectoreticularisとなって内側縦束のなかを走って延髄に達し,そこで網様質の運動性細胞に終る.また視蓋脊髄路Tractus tectospinalisとなって脊髄に達し,そこでは前索の内側縁にある.この線維が運動性の前柱細胞に終る.その途中で側枝をいくつかの脳神経(とくに三叉神経)の起始核にあたえている.

 前頭葉にある眼球運動の中枢領域からおこる線維束は放線冠のなかを内包に向かって走り,上丘に達する.その続きをなす線維が上丘の細胞からでて一部は中脳水道の背方で交叉し,一部は直接に内側縦束に入ることは生理学的研究により明かにされた.これらの線維は動眼筋を支配する諸核に達する.

 もう1つ別の線維系がこれと似た関係を示している.それは角回にある眼球運動の頭頂部の中枢領域からおこる.その線維は放線冠のなかを下行して,前者と同じように上丘の領域および後交連にいたり,そこで交叉して,次いで内側縦束および動眼筋を支配する神経の諸核に達し,これらの核からでる神経根がこの系統の続きをなしている.

 いわゆる2次“sekunddir”の視放線(図504 II)は遠皮質性のかなり広い範囲をもつ線維系であって,大脳皮質の後頭葉のなかで,視覚中枢のある場所に始まる.グラチオレ視放線Gratioletsche Sehstrahlungのなかを通って,この線維系は上丘の部分に達し,そこでさらに先へ続く線維が始まるがジこれは後交運のなかで中脳水道の上を越えて部分的に交叉する.次いで内側縦束に移行して動眼筋を支配する諸核に達する.

 視蓋延髄路Tractus tecto-bulbaris(Münzer)は上丘の細胞からでて,同じがわで大脳脚の側面を走り,橋の下部にまで達して,網様核の細胞に終る.これは脳幹のなかにある局部的な結合の路に過ぎないのである.

 側頭葉の上方の領域(聴覚中枢の場所)から発する下行性の線維は放線冠のなかを下行して内側膝状体のところに達する.ここから新たに始まるノロインが下丘腕とともに走って下丘の部分に達し,ついで今日のところまだわかっていない経路によって耳介筋の支配に関係をもつ顔面神経核に達している.

 頭頂弁蓋において,また前頭弁蓋と側頭弁蓋とからも1つの線維系が起こって,.これは放線冠および内包を通って下行し,黒核の外側部に達する.これが皮質黒核路Tractus corticonigralisである.その下方への続きをなす線維は部分的に交叉して三叉神経と舌咽神経の運動性の核に達し,これらの両神経の根がこの線維系の末梢ニューロンをなしている.

 脳弓回の範囲からでる線維は一部は脳梁を貫き,一部は縦条となって脳梁をとりまき,嗅三角に近づいて,その中で終る.嗅三角の細胞は髄条の線維,すなわち嗅手網路Tractus olfactohabenularisを送りだし,このものは手網核のなかで中断されて両側の手網のなかをさらにすすむ.これらの線維は松果体の根もとで交叉し,次いで後交連の腹方部を通って,内側縦束の核に達する.そして内側縦束の線維とともにすすんで,脊髄の前索に達し,運動性の前根細胞に終る.この細胞から前根線維が続いて外にでる.これに属する線維の一部がおそらくは動眼筋を支配する諸核および疑核(図505)に関係をもつのであろう.この線維系に属する別の一部は手網核からでて手網脚間路Tractus habenulointercruralis(すなわち反屈束Fasciculus retroflexus)の中を通って,脚間核に向い,この核に達する前に不完全な(別の意見によれば完全な)交叉が行われる.

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脚間核からはじまる一線維束が被蓋網様核に達する.そしてこの核から網様体延髄路Tractus reticulobulbarisと網様体脊髄路Tractus reticulospinalisがでて脳神経および脊髄神経の運動性の核にゆくのである(図505).被蓋網様核にはいわゆる脳底嗅束“basales”Riechbündel(Wallenberg) すなわち嗅中脳路 Tractus olfactomesencephalicus(図505)も到達している.

 海馬傍回鈎の部分には外側嗅条Stria olfactoria lateralis,すなわち嗅海馬路Tractus olfactohippocampicusが終り,そこでは采Fimbriaと呼ばれる強大な線維束が始まって,これは脳弓およびその両脚に移行している(図505).この線維の一部が前交連の近くで曲がって髄条に入り,そのなかを皮質手網路Tractus corticohabenularisとしてすすみ手網核に達する.またこの線維の別の大きい部分が皮質乳頭路Tractus corticomamillarisとして脳弓柱のなかを同側および反対側の乳頭体へと走る.乳頭体から次のものが共通の根をなして起る:1. 乳頭被蓋束(グッデンの被蓋束)Tractus mamillotegmentalis (Haubenbündel von Gudden),これは中脳被蓋に達し,橋背部のなかで被蓋網様核(図464)にいたり,ここから網様体脊髄路をへて(および内側縦束のなかをも通って),運動性の前柱細胞に達する.2. 乳頭視床束(ヴィック・ダジール束)Fasciculus mamillothalamicus(Vicq d’Azyrsches Bündel)は第三脳室の壁の近くを上行して視床前核に達する.

 皮質橋核路は大脳皮質からでて橋核に終る.前頭葉の後方の領域からは皮質橋核路の前頭部Pars frontalis(アーノルド束Arnoldsches Bündel)がでて内包の前脚,ついで大脳脚の内側部(図468)をへて下方に進み,橋核の内側部に達する(図510).これと同じように配列している第2の伝導路が後頭葉と側頭葉に属する部分から始まる.これが皮質橋核路の後頭側頭部Pars occipitotemporalis(チュルク束Türcksches Bündel)である.これは放線冠のなかを下方に走り,内包の後脚を通って大脳脚の外側部をなし,橋核の外側部に達する.

 この両系統の続きをなすのは橋核網様体路Tractus pontoreticularesであって,これは正中部を通って下行し橋の網様体に達する.その後の経過は網様体脊髄路Tractus reticulospinalisであって,これが運動性の前根細胞に終るのである.

 これらの伝導路に属する別の一部,ことにその背方部のものは橋腕の線維に続き,すなわち橋核から出てくる線維であって,橋のなかで交叉して,小脳半球に向うのである.これが[]小脳路Tractus pontocerebellaresである.

 小脳からはかなり多くの重要な下行性の系統が出る:

すなわち,

I. 索状体の内側部をとおる下行性の伝導路があって,これは網様体を越えて脊髄に達する.これには1. 室頂核にはじまる線維束が両側の室頂核の上およびそのあいだの所で交叉して後脳オリーブ核Nucleus olivaris metencephaliに達し,この核じしんが1つの線維束を外転神経核に送っている.2. 別の線維群は前庭神経外側核に達している.ここで前庭脊髄路がはじまり,これは脊髄の側索のなかを下行して運動性の前柱細胞に終る.この系統の側枝として現われる一線維束は前庭神経外側核から内側縦束に達し,この縦束が動眼筋を支配する諸神経の核とのつながりを仲だちしている.

II. 索状体の外側部には次のものがある:

1. 中間の小脳束intermedia"res Kleinhirnbündel.これは初めは延髄の外側面にあり,次いで錐体(それも主として同側の錐体)に達する.その後は錐体側索路とともに走り,その大部分が錐体路の線維のあいだに位置し,少部分だけが錐体路の外にある.ほかの下行性の伝導路と同じくこれもまた前柱の細胞に達する.2. 小脳虫部から起る小脳オリーブ路Tractus cerebelloolivaris varis(図510)と歯状核から起る歯状核オリーブ路Tractus dentatoolivarisとはオリーブ核のなかで中断され,ついでオリーブ脊髄路としてさらに下行して前柱にまで達する.

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それより末梢の経路は脊髄の前根のなかにある.--小脳の片葉から出て下り延髄に達する下行性の線維についてはあまりよく知られていない.

III. (小脳の)鈎状束Fasciculus uncinatus(cerebelli), Hakenbündel des Kleinhirns.これは室頂核と同側および反対側の球状核とからはじまり,さらに栓状核および歯状核からも出て,主として(大細胞性の)前庭神経外側核に終る.その下方への続きは前庭脊髄路Tractus vestibulospinalisである.そのうえ鈎状束の線維の一部は反対側の内側縦束に入り,また網様体,にある別の核にも達する.

[図510]大脳-橋-小脳路(皮質橋核路と橋核小脳路) 小脳オリーブ路 小脳被蓋路(小脳鈎状束の中の)室頂核から出る下行路系 中心被蓋束(視床一赤核オリーブ路)およびその小脳への続き(オリーブ小脳路)ならびに脊髄への続き(オリーブ脊髄路) (BechterewおよびR. Richterによる)

 Brc 結合腕;cn (小脳)皮質核路;cpf皮質橋核路の前頭部(Arnold);cPt 皮質橋核路の後頭側頭部(Türck);Crm 索状体の内側部;cr 皮質赤核路;ct 皮質視床路;Di室頂核間交叉Decussatio interfastigiosa;f 室頂核;Fu 小脳鈎状束;g 球状核;Nl 前庭神経外側核(Deiters);Nm (視床)内側核;No オリーブ核;Noa 背側副オリーブ核;Nom 後脳オリーブ核;Npl 橋核の外側部 Nuclei pontis laterales;Npm 橋核の内側部Nuclei pontis mediales;Nr赤核;Nro延髄網様核Nucleus reticularis medullae oblongatae;Nrt被蓋網様核(被蓋の運動性の核);N VI. 外転神経核;P, P プルキンエ細胞;pc 橋核小脳路;pr 橋核網様体路;Rv 前根;Tco小脳オリーブ路;Tct小脳被蓋路;Toc オリーブ小脳路;Tosp オリーブ脊髄路;Trsp 網様体脊髄路;Tto視床オリーブ路;Tvsp 前庭脊髄路.

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 橋腕は小脳半球から出て橋に達する下行性の線維を一部に含んでいる.この線維は同側および反対側の橋核に終る.その続きをなすのは橋の正中部の線維群であって,これは橋背部に達して,そこを一部は下方に脊髄へと走り,一部は上方に走って四丘体に達する.

 結合腕からは若干の線維が内側縦束に達する.これらの線維は結合腕交叉の背方部からでている.

 最後になお述べなければならないのは,知覚性の神経の領域にある下行性の経路のことである.このような線維は嗅球,視神経,聴覚伝導路,脊髄神経の後根のなかに見られる.

 脳の皮質と脳脊髄の軸をなす灰白質とのあいだにある大きな諸経路のほかに,中枢神経系にはなお局部的な意味をもつ数多くの短い伝導路が広く存在している.

 連合神経路および交連神経路については365, 366頁を参照のこと.

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最終更新日 13/02/03

 

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