Rauber Kopsch Band2. 66

6.陰部神経叢Plexus pudendalis, Schamgeflecht(図565第I巻,図671, 672)

 陰部神経叢は主としてSIIIとSIV とに由来し,その構成成分は1つのはっきりした神経叢様の配列を示している.これは梨状筋の下縁に接して,腱様に光った尾骨筋の前面の上にある.

a)陰部神経叢の結合(図565)

 尾骨筋の上を走るSIVからの1枝によってこの神経叢はSVと連なり,またそれを介して尾骨神経叢Plexus coccygicusとつながる.これが仙尾骨神経係蹄Ansa sacrococcygicaである.陰部神経叢は上方に向かってはSIVの上部によって仙骨神経叢Plexus sacralisと結合している.第2の結合は交通枝による交感神経幹Truncus sympathicusとのつながりである.

b)陰部神経叢の枝(図565第I巻,図671, 672)

 陰部神経叢からは壁側枝臓側枝とがでる.前者は胴の下端部の壁に,後者は骨盤内臓にゆくのである.

1. 陰部神経N. pudendalis(図565第I巻,図671, 672)

 これはその線維の大部分をSIIIから受け,その小部分はSIVからくる.ときにはSIIからの線維がまじっている.この神経は断面が扁平であり,かつゆるく集束しており,著しく交錯した線維束群からできている.そして梨状筋の下方で骨盤を去るが,直ぐに坐骨棘を回って向きを変え小坐骨孔を通って,坐骨直腸窩の外側壁に達し,この窩を充たす脂肪組織とは閉鎖筋膜によって隔てられている.陰部神経はここでその3本の終枝に分れる.

 すでにこれより前に,すなわち骨盤腔から出るときに,この神経の幹は仙結節靱帯穿通神経N. perforans ligamentum sacrotuberaleを出す.これはふつうに仙結節靱帯を貫通していて,次いで坐骨結節のあたりに達し,大腎筋を回ってその外面に出て,そこの皮膚に広がって終る.

陰部神経の終枝としては次のものがある:

S. 539

[図563](右の)足背の神経(5/6)

S. 540

[図564](右の)足底の深部の神経(5/6) 

短指屈筋は一部を取り除き,その起始部を側方に動かしてある.

S. 541

a)肛門神経Nn. anales(第I巻,図671, 672)

 しばしば小坐骨孔に入る前のところで陰部神経からこれが分れて,細いいく本かの枝として内側かつ前方に走り,肛門部の皮膚および外肛門括約筋へと放散している.

b)会陰神経N. perinealis, Dammnerv(第I巻,図671, 672)

 これは外側を走り,次の諸枝をだしている:

α)陰嚢神経(陰唇神経)Nn. scrotales(labiales),これは多くのばあい2本の小幹をなし,主として陰嚢(大陰唇)の皮膚に分布する.

β)筋枝Rami musculares.これらはしばしば共通の1本の小幹をなして発し,浅会陰横筋の上を通り,あるいはこの筋を貫いて尿生殖隔膜の外面に達し,ここから浅会陰横筋・外肛門括約筋の前方部・球海綿体筋・坐骨海綿体筋に分布する.なお1本の小枝が尿道海綿体球の中に(尿道海綿体球動脈とともに)入り,尿道の粘膜にいたる.

c)陰茎背神経(陰核背神経)Ndorsalis penis (clitoridis) (図565第I巻,図671, 672)

 これは陰部神経の幹からおこる最も深いところにある終枝で,陰茎動脈とともに坐骨枝の恥骨部と恥骨枝の結合部との内面に沿って尿生殖隔膜を貫いて走り,ここから深会陰横筋と隔膜尿道括約筋とに分布し,尿生殖隔膜を貫いて陰茎提靱帯の外側で陰茎背(陰核背)に達する.そして陰茎の背部を前方にすすみ,8~10本の側枝をその皮膚に,別の若干の枝を陰茎海綿体にあたえ,亀頭に達する4~5本のかなり太い枝となって終る.亀頭に終る枝が特別な1本をなして,その他の枝から別れていることがある.

2. 筋枝Rami musculares

 肛門挙筋への肛門挙筋神経N. musculi levatoris ani.と尾骨筋への尾骨筋神経N. musculi coccygiciとである.これらの枝は共同の幹をなして起こっていることもあり,また別々に起こっていることもある.

3. 下直腸神経,下膀胱神経および腔神経Nn. rectales caudales, vesicales caudales et vaginales

 数は4~5本あって,その一部は直接にこれらの名で呼ばれる骨盤の臓器(直腸, 膀胱および腟)に達し,一部は交感神経と結合している.

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最終更新日 13/02/03

 

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