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II. 植物,動物および人間

 有機体Organisataすなわち生物(植物と動物)の世界は次の特徴によって他の生命のない自然物と区別されるのである.

 1. 物質的の基盤をなすのは原形質Protoplasma, ならびに中心小体とをなす物質である.

 2. 形の上の単位をなすものは細胞である.

 3. 生命現象としては次のことが挙げられる.

 a)物質代謝Stoffwecsel,すなわち物質を摂取し,消化し,排出すること;

 b)内部成長inners Wachstum,結晶体と違って外部に付加することによって成長するのではない;

 c)細胞分裂Zellteilungと組織形成Gewebebildung;

 d)刺激を感受する性質reizempfindlichkeitと感覚Empfindung;

 e)能動的な運動aktive Bewegung;

 f)繁殖Fortpflanzung;

 g)死Tod,これは普通にはただ部分的な死滅partieller Untergangとしておこる.

生物を植物と動物とに分けるのはただ日常の生活に基づくのである.深くつきつめていくと,その区別の標準が立たなくなる.最も下等な形のものになると,両方がたがいに合流するからである.比較的高等な形のもので初めてその区別が明らかとなり,いっそう高等なものをたがいに比較すると,その区別はいよいよ著しい.

 その場合われわれが気づくことは,植物は感覚作用や自らの意志による運動をもたないので,その諸器官が主として外部的な面の展開äußere Flächenentfaltungによって発達すること,無機物質によって生きること,空気中の炭酸ガスから炭素をはなれさせてこれを自らの体の建設に用い,同時に酸素が遊離されて,自らは酸素をごく少しだけ消費するにすぎない.

 それに反して動物は自由に,思いのままに運動のできる,そして感覚を持った有機体であって,その諸器官は主に内部的な面の展開innere Flächenentfaltungによって発達し,無機物と有機物を合わせて食物としてとり,呼吸により酸素を消費し,酸化作用の影響のもとに(分子内の)張力Spannkrafteと生活力lebendige Krafteに変換させ,窒素を含む分解産物や炭酸ガスを外に出すのである.

 人間もまた動物界に属する.しかも脊椎動物門の哺乳動物網の一員である.まずCuview,ついでOwenなどの学者が人間のためにBimana(2本の手をもつ種類,小川鼎三)という特別の目をつくったが,Huxleyおよびその信奉者たちは人間と類人猿とのちがいが小さいもので,科を区別する価置しかないものFamiliencharaktereとみなして,Linneがいっそう古く人間を猿とともに合わせて霊長目Ordung der Primatenをつくったのが正しいとした.

 人間と類人猿とのあいだの最も主な解剖学上のちがいは,前者で脳がはなはだ大きいこと,頭蓋の形が異なること,歯および顎の発達が特別であることの他に,立って歩くこと(aufrechter Gang)であって,最後に述べた点が人間の足の独特な変形を起こし,手を歩行運動から自由にしたのである.

 いまのところ,人間の近縁関係については次のようにいうことができる.すなわち人間は霊長目に属する1つの特別な形であって,類人猿との近い姻戚関係は胎児の最も早い時期の形がはなはだよく両者のあいだでよく一致していること,および人間から猿へ輸血しても比較的に障害が起こらないことで示される.

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最終更新日13/02/03

 

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