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 細胞の原形Grundformは球形である.しかし後生動物の体をなしている細胞の多くはその他の形を示している.楕円に近いもの,錐体すなわちピラミッドの形のもの,柱状,円板状,星状のものがあり,その各々にも千差万別があるといえるのである.

 大きさGroseは平均すると約20μである.血球やリンパ性の細胞では2~6μのものまであり,微生物のあるものはもっとそれより小さい,他の細胞ではひじょうに大きくなっていて,例えば魚類,両棲類,鳥類の卵のように,空間の三次元において何れの方向にも大きいものがあり,あるいは神経細胞のように,特に長さだけがはなはだ延びていることがある.神経細胞はその軸索突起をもって脊髄から手や足の指まで達しているので,その長さが1メートルもある.

 いろいろな種類の細胞について,細胞体とかくの体積の比をしらべてみると,たがいに一定した値になる.これを核と形質の比価Kern-Plasma-Relationという.

[図2]原形質の蜂巣状構造を示す細胞模型図

[図3]コウモリ卵巣にて成熟しつつある卵.原形質は小梁状の構造をしっめし,そのあいだに液胞をもっている.切片標本による.×330. (Rauber, Morph. Jahrb. VIII.,1883, Neue Grundlegungen usw. より.)

I. 細胞体Zelleb

 化学的および物理的組成:細胞体は原形質よりなる.

 原形質Protoplasmあるいは細胞形質Cytoplasmaというのは化学的に単一な物質の名前ではなくて,1つの形態学的な概念である.それはいくつかの蛋白体と(とくにプラスチンPlastinならびにグロブリンglobuline, アルブモーゼAlbumosen,アルブミンAlbumine),多量の水分および数種の塩基からなっている.そのほかに同化性および異化性の物質代謝産物が加わる.反応はアルカリ性であって,みな一様で,粘い液のような性質をもっている.水によって膨化し,熱によって凝固する.

 構造:だいじな問題としては原形質ではその各成分が細胞のなかで溶液の形のみ存在し,つまりその各々が密に混合した状態なのか,もしくは原形質に何か特別の構造があるかということである.むしろその構造がどんな種類であるかについて議論が分かれている.すなわち海綿様の構造であるというもの(Fromman, Schmitz, Leydig),蜂巣状となすもの(Bütschli),あるいは細かい糸の構造とその間を満たす物質からなるという人がある(Flemming).

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最終更新日10/09/01

 

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