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 この3つの学説のほかになおAltmannの独特な顆粒説がある.その何れが正しいかを決定するのはその研究の困難からしてはなはだむつかしいことである.しかし,蜂巣説の考え方が次第に大きい力を得つつある.その一員は生理化学的の事実がこの説に都合よくあてはまることである.

 Bütschliによれば原形質の構造は泡様schaumigであって,蜂の巣を連想させるものであるという.しかし,この説によっては原形質の構造に関する問題のほんの一部が答えられているにすぎない.蜂の巣の壁をなす索や板がどんなこうぞうであるかについて問題がまた戻ってくるのである,そいう超構造Ultrastrukturは比較的近年にやっと研究されてきた.(Bargmannの著Lehrbuch der Histologie, Bd. Iを参照されたい.)

 顆粒は原形質内の構造として常にみられるものである.これは生きている細胞において(Ehrlich , Arnold, Fischel)メチレン青,中性赤そのほかの数多くのいわゆる生体染色用の色素によってあらわすことができる.しかしまた,顆粒にもいろいろの種類が区別できる.顆粒は総括して微小粒体Mikrosomen,さらによい名前では形質粒体Plasmosomenとよばれる.

 生体染色によってあらわされる顆粒と区別すべきものは固定剤のためにアルブモーゼが沈殿することにより人工的にできた顆粒である(A. Fischer, Fixierung usw. des Protoplasmas. Jena,1899).Altmannが記載した顆粒の一部は生きている細胞には存在せずして,顕微鏡でしらべる目的で細胞を薬品で固定したときに人工的につくられたものであることが確かである.

 微小粒体が相ならんで糸の形をしているのを最初Brunnが1884年,La Valette Sr. Georgeが1886年に記載し,それが後にミトコンドリア(糸粒体)MitochondrienあるいはChondriosomenとよばれることになった.このものは成体および胎児の体の多くの細胞に証明されている(Duesbergの文献をみられたい).Mevesはミトコンドリアをあらわすのに適当した方法を用いたときにつよく染まるが,個々の顆粒からなることがはっきりしないような糸状および棒状のものを粒杆体Chondriokonten(κουtός,棒のこと)とよんだ(1907).その後にMevesはこれらの構造物を細胞に独特な成分として大いに重要視し,原形質の遺伝を担当するものとみなして,形成顆粒Plastosomenと名づけた.その顆粒状のものをPlastokonten(形成杆体)とよんだ.それより前に用いたChondriokontenやChondriosomenという名称はやめたのである.Mevesは次のごとく述べている(Meves, Arch. mikr. Anat.,85. Bd.,1914, S. 298).“形成粒体は独特な性質の顆粒あるいは糸状のものであって,すでに生きている細胞でたくさんに見ることができる.

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最終更新日09/07/13

 

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