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 中心球との関係:内皮細胞(図9)および生殖細胞(図13)では内網装置は中心球を囲んで中空の球の壁のようになっている.ほかの種類の細胞でも(とくに上皮細胞では)両者の同様な位置関係があるらしい.これを単に偶然とみなすべきであるのか,そして全く局所解剖学的に論ずるべきものであるのか,あるいは内網装置と中心球とが機能のうえで,またはその他の何らかの都合でたがいに結びついているものなかは現在のところ分かっていない.

 前眼房の内皮細胞ではBallowitzが両者の関係からしてZentrophormiumと名づけ,生殖細胞ではHeidennhainが全体としてZentralkapsel(中心球の嚢の意か),その個々の成分をPseudochromosomen(偽染色体の意)とよんだ.最後に述べたものはHermannのArchoplasmaschleifen(旧形質係蹄)に相当し,これはすでに1885年にPlatnerによってNebenkernstäbchen(副核小棒)およびNebenkernfäden)として記載さえたものである.

 意義:はなはだ多数の研究がなされたに関わらず,内網装置の意義については今でもなお確たることが何も言えないのである.確信できるのはこの装置をなしている物質の量と細胞の活動力とのあいだに連関があって,能動性の細胞は受動性のものよりいっそう大きい内網装置をもつ(Kopsch,1926, S. 276)ということだけである.また内網装置が精子の前端部のいわゆるAkrosomの形成に関与している事実ははなはだ重要なことにちがいないが,今でまだ充分にその価置が認識されていない.

[図12]44才の男の前立腺の円柱細胞における糸毬状の内網装置.×1500.

Kopsh-Kolatschevの方法. (Kopsch,1926)

[図13]プロテウスProteus(有尾両棲類)の精細胞における偽染色体Pseudochromosomen (Heidenhain,1900)

 細胞分裂のときの内網装置:核分裂および細胞分裂にあたって内網措置はばらばらのものになる.これをPegmatosomen (Kopsch,1925),またはDiktyosomen (Prroncito,1910)という.これらは2つの娘細胞に分配される(もっとも平等な分配というわけでないが),そして娘細胞のなかでふたたびまとまって内網装置ができる.

 化学的組成:内網装置の化学的組成は動物の種類によって違い,同一の個体でも細胞の種類によって異なり,さらに胎児と成長した動物とのあいだでもちがうのである.このものはオスミウム酸を還元するといわゆる好性物質osmiophile Substanzとオスミウム酸を還元しないいわゆるオスミウム嫌性物質osmiophobe Substanzとから成っている.前者は酸性の保存液のなかではなくなってしまう.しかしこの両物質がいかなる種類のものであるかは今日まだはっきりしていない.

 酸性の保存液を用いた場合に内網装置の梁のかわりに細い管があらわれる.これがHolmgrenのいう液細管Saftkanalchenである.また特別な染め方でオスミウム嫌性物質をそめて現わしたものが,Holmgrenの栄養海綿体Trophospongiumである.

 歴史:すでに1885年にPlatnerが記述し,画にもかいたNebenkernstabchen(副核小棒)およびNebenkernfaden(副核糸)は内網装置の一部が不完全にあらわれたものであった.Hermann(1891)のArchoplasmaschleifen(旧形質係蹄)およびHeidenhain(1900)のZentralkapseln(中心球の嚢)およびPseudochromosomen(偽染色体)についても同様のことが云える.内網装置が完全な形であらわされたのはGolgi(1898)が最初であって,GolgihaはそれをApparato reticolare interno(内網装置)とよび,またCntrophormiumという名称をつけたBallowitzも最初の開拓者の1人である.

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最終更新日09/07/13

 

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