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オスミウム酸によって(Kopsch,1902)あらわされた内網装置はKopsch自身によってGolgiがすでに発表していたものと同一のものとみなされた.しかしのちにいっそう適切な名前としてBinnengerüst, Endopegma(ずれも細胞内部の足場の意)が提唱されたのである(Kopsh, Fr. : Enzylkopädlie mikr. Technik, 3. Aufl.,1926, Bd.1, S.163).

3. 分泌細管Sekretkapillarenと分泌液胞Sekretvakuolen

 腺細胞のもつ分泌液胞は多くは円い形の小さい空所であって,分泌物あるいは排出物をもってみたし,その内容は腺細胞の自由面すなわち腺腔にむかっている表面に出されるのである.

 細胞内分泌細binnenzellige Sekretkapillarenは腺細胞の原形質のなかにある不分枝の,あるいは分枝した,ときとしては網状になっている管であって,腺細胞の自由面に開口している.(本書第II巻胃底腺の傍細胞を参照のこと.)

 特別の細胞膜Zellmembran, すなわち原形質とははっきりと境された一つとつづきの膜状のものが細胞体の縁をとりまくことは多くの動物細胞にはみられないことは前述のごとくである.その代わりに原形質の最も表層のところが密になった1層をしている.はっきりと区別できる細胞膜は卵細胞に存在する.脂肪細胞や横紋筋線維にもあるが,この2者では細胞膜は周囲の結合組織がつくったものといわれている.

II. 細胞核Nucleus, Zellkern

 定義:細胞核は特殊の化学物質(核物質Kernsubstanzen)より成り,細胞体とは異なる組成であって後者との境はある程度はっきりしおり,また細胞内で核の形はいろいろ異なる様子をしめすのである(Hertwig, O., Zelle).

 核をなす物質は核形質Karyoplasma (κaρυον=核)とよばれて,細胞体をなす細胞形質Cytoplasmaと対応さえる.

 核の形ははなはだ多様である.多くは球形(図14,15)であり,また卵円あるいはレンズ形であるが,なお乳頭状のもの,膨れだした形のもの,腎臓形のもの(図8~10),分葉状のもの(図16),分枝するものはおよび珠数状のものがある.

 位置:多くのばあい,細胞中心に近く存在するが,またある程度の差はあるが中心を外れていることがしばしばあり,またその存在する場所を変えることができるものである.

 核の大きさは大体に細胞の大きさにある程度伴っている.平均して4~9µである.人体で最大の核といえば卵細胞のもの(45µ)と,脊髄神経節の細胞のも能登である.

 Jakobj(Verh. anat. Ges.,1931)は人体で,同一の器官のなかでも細胞核の大きさが異なり,また異なる器官で核の大きさがちがうことを確かめた.たくさんの核を大きさにしたがって分類してその体積をしらべてみると“ある基本的な量をもとにしてその整数倍”になっている.この基本量はG. Hertwig (1933)によれば各々の動物の種類によって特異である.核は有糸分裂をなさずに,空間的内容の倍加によって成長するのである.

 平均細胞Regelzelle,すなわち固定し包埋してつくった標本でしらべて最も数多くみられる細胞がもつ核の直径と体積は胸腺リンパ球では4.1µ(36ccµ),肝細胞6.75µ(128ccµg),神経細胞16µ(2,145ccµ)である.

 核の倍加成長ということはいろいろの哺乳動物でVoss(Z. Zellforsch., 7. Bd.,1928), Clara (Z. mikr.-1nat. Forsch.,13. Bd.,1928; 26. Bd.,1931)およびHertwing, G. (Sitzber. naturforsch. Ges. Rostock , 3. Bd.,1932), Freerksen, E., (Z. Zellforsh.,18. Bd.,1933),また人間では中枢神経系の細胞核についてHertwig, G. (Z. mikr.-anat. Forsch., 51. Bd.,1942)によって証明された.

 :多くの場合1つの細胞は1個の核をもつ.しかしその頻度はいろいろであるがときとして2核をもつ細胞がかなり多くみられるのであって,それは例えば桿細胞や脂肪細胞である.それにくらべるとずっと稀であるが,ほかの種類の細胞たとえば卵や神経細胞にも2核をもつものがある.ある種類の細胞では多数の核をもつこと,すなわち多様性Vielkernigkeitがその特徴なしている.たとえば巨大細胞Riesenzellen(脾臓,骨髄,腫瘍にみられる)がそれである.

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最終更新日09/07/13

 

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