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 アムフイビレニンAmphipyreninによって核膜ができている.

 核液Kernsaftは多かれ少なかれ核材の網のあいだをみたして存在している.蛋白質を含み,これは固定にあって顆粒の形をなしてあらわれる.

 核のない基本有機体kernlose Elementarorganismenが存在するかどうかの問題は,研究方法が精微なものとなるにつれて,ますます否定的な答えの方が有力になってきた.多くの下等の植物や原生動物で以前には核が証明されなかったもので,後にそれが見いだされてきた.微小生物体Mikroorganismenにおいてさえも,その一部では核そのものが証明され,他の一部では少なくとも化学的および呈色的に核の顆粒と同じ反応を示すものが内部にみつかり,その疎とをとりまいている物質が原形質の特色を持つことがわかった.かくして最初はBütschiliがOscillaria, Bacterium lineolaなどで述べたことであるが,KnöllとZapf(Zbl. Bakt.1951)によって細菌もまた細胞核をもつということは確実にされた.

 Calkins (Ann. N.-york Akad., XI.,1898)によれば原生動物で最も簡単な形の核は分散型verteilter Kernであって,細胞体内に散らばった顆粒からできている.それより高等なのが中間型intermediärer Kernで,クロマチンの顆粒が1個所に集まっている.核膜はあったりなかったりする.後生動物がもつような核,すなわちリニンではっきりした足場ができていて,その糸にクロマチンが宿っている核は,原生動物でも時たまみられるのである.

 細胞の内容をなす何か1つのものが核の性質Kernnaturをもつかどうかをさだめるには,前にクロマチンないしヌクレインの化学的および呈色的反応で述べたところからわかるように,単一の染色方法を用いただけでは充分でない.メチル緑を酸性液にして用いるのは以前はクロマチンを証明する最良の方法とされたが,これさえもFischerによりその価置が疑われている.

 クロマチンという名称が形態学上の概念であって,決して1つの化学的物質を意味しないことを前にもはっきり述べたのであって,それ故に細胞の内容をなす或るものが核の性質をもつかどうかを定めるには,大部分の核に共通な形態学的および化学的の性状を全部あわせて考えて,その上で証拠だてるよりほかないわけである.-Kopsh, Fr., Internat. Monatsscher. Anat. Phys., 21, Bd.,1905.-Pratje, A., Biol. Zentralbe. 40. Bd.,1920; Z. Anat. u. Entw., 62. Bd.,1921.

 核と原形質との関係:核は一定の作用物質を分泌するという.これをmorphogene Substanzen(形態原物質の意) (Haberlandt, G., Abh. Akad. Wiss. Berlin,1941)といい,それ自身の細胞や他の数多くの細胞の原形質にはたらいて,一定の形態学的性状が発達することの原因をなすのである.この物質がいかなる種類のものであるかについては確かな結果がまだ何も得られていない.

B. 細胞がしめす生命の特徴

 R. Virchowがその著わした細胞病理学Cellular Pathologieの中で云っているように,細胞は真に生命をもつ単位wahrhaft organische Einheit”であって,細胞からすべての生命活動alle Tätigket des Lebens”がでてゆくのである.それゆえん,われわれは動物の体にみるあらゆる生命現象を,その体を構成する個々の部分すなわち細胞にふたたびみいだすことを当然期待してよいのである.

 われわれは細胞の機能に植物性vegetativと動物性animalishのもを区別する.後者は神経性と運動性であり,前者は物質代謝と成長,細胞の生成と増殖,また細胞の分化ならびに寿命に関するのである.

1. 神経性の機能nervöse Funktionen

 生きている原形質ははなはだ感受性に富み(sensibel),化学的および物理的の刺激に対して活発に反応する.それは特に温度Temperaturに対して敏感である.あらゆる生命現象の流れにはある程度の熱が必ず伴っているしかしその温度にも適度Optimumと極大Maximumと極小Minimumの区別がある.寒冷は必ずしも原形質の生命活動をやめるものではない.もっともそれはすべての生命活動を抑えて低下させえるのであるが.

 動物体内でも熱によって化学作用の速度が増す.10°高くなるごとに2.5倍ほどもはやくなる.(Peter, Arch. Entw.,1905, およびZ. Morph. Anthrop.,1924. )

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最終更新日09/07/13

 

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