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 染色体の微細構造は細菌の10年間にかなり精しく研究された.染色体は決して無構造のものではなくて,クロモネマChromonemaというラセン形にうねった糸状物よりなりこれにクロモメーレンChromomerenという無数の小体が付いている.後者は遺伝原基をもつものであるといわれる.

 核係蹄ができるあいだに核膜また消える,そして核液が細胞体の液と混じり合う.しかしそれでも核のあった場所と原形質との境は保たれているのである.それと同時に2つの中心球はたがいにいっそう遠ざかり,前期の終わりになると,核の周縁でたがいにそう反するところに位置するようになる.その2つの中心球のあいだは紡錘状あるいは樽形のものがあって,これは軽く弓形に曲がって走る染色されがたい細い糸からできていて,不染色性の中心紡錘Zentralspindelとよばれる.他方また,各々中心球のまわりにあらゆる方向に広がる放線状の細い糸がみられて,これが極放線PolstrahlungあるいはAsterである.極放線の大部分は細胞の周縁のところで,原形質の網状をなす構造のなかに消えるか,またはそこにいくらか存在している細胞膜に直接に付着している.他の部分は染色体に結合していて,これが牽引糸Zugfasernとよばれる.これはそれはこの糸が染色体を2つの娘細胞に分配することをつかさどると考えるためであるが,またこれが中心紡錘のまわりをとりまいて存在するので,外套糸Mantelfasernという名前もある.中心紡錘の線維は2つの中心球が近づかぬようにささえるはたらきをもつと考えられているので,この理由から支持糸Stemmfasernと称せられるのである.

 2. 中期Metaphase(図22):中心紡錘の形成は最高潮に達していて,その長軸は細胞じしんの長軸と一致している.染色体はそのあいだにいっそう短く太くなり,係蹄の曲がりかどを中心紡錘にむけ,係蹄の両脚を細胞の周縁の方に向けるように位置する.この時期の細胞を1極からみると,染色体の集まりが1つの星の形をしている.これを母星Muttersternあるいは単星Monnasterの時期という.同時に染色体は中心紡錘に垂直の一面上にある.この面は赤道面Äquatorialebeneとよばれる.赤道面はあとに細胞体の分裂が起こる場所にあたっている.

 ここの染色体(母係蹄Mutterschleifen)がいまや縦裂して全く等しい2つの部分すなわち娘係蹄Tochteschleifenに分かれていることが明瞭となる.この縦裂はすでに前期の終わりにはじまっていたのであるが,この時期になると中等度の拡大でもはっきりと認められるのである.

 係蹄が分裂する現象をくわしくみると,母係蹄をなしている多数のクロマチン小球がおのおの伸びて,ついで全く等しい2つの部分にわかれて,そのおのおのがそれぞれ娘係蹄をなすのである.

3. 後期Anaphase(図23, 24):娘係蹄はそれに付着している,そして収縮する性質のある牽引糸(すなわち外套糸)によって一方の中心球へ引き寄せられる.そのときに中心紡錘の線維は収縮する性質を欠き,支持糸として2つの中心球がたがいに近づかぬように支えている.れにまた,中心球のまわりから発して細胞の表面に付着している放線もその支持にあずかるのである.これが娘星Tochtersterneあるいは双星Dyasterの時期である.両極に向かってはなれつつある2群の染色体の集まりのあいだは結合糸Verbindungsfadenという細い糸でたがいに結びつけられているようである.結合糸はたぶん中心紡錘の線維にほかならないであろう.

 4. 後期Telophase(図25, 26):染色体は中心球のすぐそばまで達して,短く太くなり,たがいにいっそう密に寄り合う.そしてたがいに結合して,いままでその表が平滑であったのが,小さい突起を出すことによって,ギザギザとなり,でこぼこをもってくる.そして結局,核膜によって包まれる.次第に変わってゆきふたたび小胞状の核ができるのである.その変化は核が前期になしたものでを,今やその逆の順序で行うのである.そのあいだに中心球のまわりの放線は失われてゆき,それが全く消えてなくなることもある.しかし中心子はしばしばこの時すでに2分している.

 細胞体の分裂はこの時に初めてはじまる.もっともときとしてはそれがもっと早く娘星のときにはじまることもある.赤道のところの1個所に溝ができてはじめて,これがついで赤道をまわる輪の形になり,鱗状のくびれができあがる.このくびれが深くなって,ついに細胞体の分離がおこるのである.原形質の分裂が起こらないと,2核をもつ細胞ができる.

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最終更新日13/02/03

 

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