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このばあい傷をうけた細胞じしんがその物質欠損を治すことはできないので,その固体が残されてもっている傷ついていない健康な細胞,しかもその傷の誓うに或る細胞が修理の役目をする.例えば体の表面から表皮の細胞がたえず剥げてゆくが,この剥げる細胞じしんが再生することはできないので,その体に残っている細胞が分裂によって新しい細胞をつくり,これが物質欠損を補充するのである.このばあいの再生にも正常のと病的のとあって,後者は人工的にできた大小いろいろの物質欠損のさいにおこるのである.

 それぞれの場合に再生能力の大きさがどれくらいかという問題がおこる.1本の指,1本の腕,胴の一部,1個の目が除かれたときはどうであろうか?動物によるといまいったすべての欠損を再生によって治しうる.分割をなしつつある卵から1つの分割球を取り除くことができるが,その残りから完全な形の肺が生じる得るのである.それでもわかるように,再生の範囲ははなはだ広く,かつ重大である.

 Barfurth, D., Regeneration und Involution. Ergeb. Anat.1903およびそれにつづく年次の同誌.-同じ人,Regeneration und Transplantation in der Medizin.1910.-Korschelt, Regeneration und Transplantation. Jena.1907.-Strasser. H., Regeneration und Entwicklung. Jena,1889.

C.細胞の分化,組織および器官の形成Differenzierung der Zellen, Gewebe-und Organbildung

 細胞の分化DifferenzierungすなわちSonderung(分別の意)は細胞分裂が持つ使命の1つであると思われる.細胞の分化はどれをもても,そのすべてが新個体の出発点である受精卵がひきつづいておこる分裂によって多数の細胞となって,これらの細胞が受精卵が受精卵から受けついだ材料に基づいておこっている.この分化の目的とするところは分業Arbeitsteilungである.分業は高等な生物には必要なことである.原性動植物はその体がわずか1個の細胞からなるので,この1個があらゆる役目をする.この場合でもある程度の分業があって,つまい核は原形質とは違った機能を持っている.なおまた原形質の内部にも分化がありうる.そこに筋原線維ができていることさえある.そして分化が必要である.そして文化の程度や形式がちがうのに従って,それぞれの生物が高低いろいろの段階に立っているわけである.

 分化の量とその方向を知ろうとするならば,われわれはここであらゆる種類の細胞とそのつくったものまで数え立てねばならないのであろう.しかしその目的のためには,雑多な種類の細胞を無理の内容に分類してつまりいわゆる簡単な組織einfaches Gewebeの群に分けて述べるのがよいと思う.

 組織とは,もともと同じ種類に属する細胞およびその細胞から生じたものの混合体である.

 動物においてはそういう組織として4つが区別される.

 1. 上皮細胞 2. 結合および支持組織 3. 筋組織 4. 神経組織

 動物体の器官Organeはこの4つの組織のなかの1つあるいは2つ以上によってできている.器官という概念の形態学上および生理学上の定義は次のごとくである.

 器官は1種あるいは2種以上の組織より成り,決まったか形と機能をもつものである.  

 その例として:1個の杯細胞は1つの組織に属するわずか1つの細胞からなる器官であり,爪は単一の組織に属する多数の細胞が集まってつくっている器官であり,腺はいろいろな種類の組織からできている器官である.

 いくつかの器官によって機能的にいっそう高いつながりをもった単位が構成される.これが装置Apparatあるいは()Systemである.例えば視覚装置Sehapparatは眼,眼筋,神経,血管およびその他の数多くの補助機関より成っている.

 そして最後に動物体の全体は多数の器官や装置からできているわけである.

 上述の関係からして,生物体の要素として細胞を述べたのに続いて,まず組織を列挙するには全くいろいろな方法がある.形態学的,生理学的,発生学的というそれぞれの立場がある.

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最終更新日13/02/03

 

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