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 腸の杯細胞は円柱細胞が変わってこれになるのであって,後者の原形質内に粘液顆粒(図48)ができて前者が生ずる.粘液顆粒は始めはごく微細であるが,そのときすでに粘液反応を呈する.すなわち塩基性の色素に強く染まるのである.それより進めば顆粒が増大し,またたがいに癒合する.もっとも癒合は概して顆粒が細胞の外にでたうえで始めておこるのである.

 他方また,ある腺の粘液細胞では粘液の前進をなす顆粒がみられることもある.その顆粒は最初のうちは粘液染色で染まらないので,あとになって粘液顆粒にかわる.Heidenhaln, Plasma und Zelle, Bd. I.-Osawa, G., Über Darmepithelien. Mitt. med. Fakultät Tokio. 9. Bd.,1911.

[図47]ヒトの気管の重層絨毛上皮.細胞内の内網装置をKopsch-Kolatschevの方法であらわしたもの.×1000. (Kopsch, Z. mikr.-anat. Forsch., 5. Bd.,1926)

 移行上皮細胞は扁平上皮細胞とはなはだ近い関係にあるもので,尿の通路のみに存在する.すなわち腎盂,尿管,臍胱にある.移行上皮の最も表層にある細胞は,この上皮が被っている気管がひっぱられているときは,幅が広くて平らになり,その気管が縮むときは熱くなる.この細胞は自由面にそって小皮性の1層をもち,また細胞体の下面にはいくつかのへこみがあって,これにそれより深くにある西洋梨型あるいは紡錘状の細胞の頭が入り込んでいる(図49, 50).

 多数の上皮細胞がたがいに結合して1つの上皮をなすこと,すなわち一と続きで隙間のない1層をなすことは接合質Kittsubstanz(細胞間物質Interzellularsubstanz),あるいは細胞と細胞とのあいだを通ずる細胞間橋Verbindungsbrucken (Interzellularbrucken),もしくはこの両者が同時に存在することによって実現している.

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最終更新日13/02/03

 

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