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 この細胞は色素を豊富に,しかも粗大な塊の形で貯える.また明らかに“正常の結合組織内で物質代謝についての重大な役目を果たしている”(Pfuhl 1933).しかし寿命の短い細胞であって,これに反して線維細胞は寿命が長い.(Pfuhl, Z. mikr.-anat. Forsch., 31. Bd.,1932).

 疎性結合組織にはなお脂肪細胞や色素をもつ結合組織細胞もまた,存在しうるのである.これらの細胞の構造についてはあとに詳述する.

 組織発生:組織内白血球Gewebsleukocyten, 休止遊走細胞,組織球,大食細胞,外膜細胞はv. Möllendorff (Z. Zellforsch., 3. Bd.,1926)によれば線維細胞が突起をもってたがいに連なっている結合状態からその一部が離れてでて,その形態と機能を変じたものである(しかしこの点についてはMaximow, Leopoldina, 4. Bd.,1929およびBrodersen, Z. mikr.-anat. Forsch.,14. Bd.,1928を比較参照すること).

 膠原線維は固定結合組織細胞からできる.それゆえこの細胞が線維芽細胞Inoblasten oder fibrobblastenと呼ばれるのである.線維がどこでできるかについて2説が対立している.Flemming, Spuler, Retterer, Maximowによるとそれは線維芽細胞の内部に生ずる.他方,Kölliker, とMerkelによればそれは細胞と細胞の間で,はじめ均質みえる細胞間物質の中にできてくるのである.前の説では,細かい線維芽細胞体の周辺部の明るくて均質にみえるそう,すなわち外形質Exoplasmaの内部に現われる.それも細胞の並んでいる列の全体をこえて一と続きのものが同時にできる.次いでこの線維が生みの親である細胞から分離して,そしておそらくは細胞から独立してなお成長することができるのである.もしもある定まった場所に線維芽細胞の大きい集団があって,その各々の細胞が高度の活動をなすならば,そこから線維に富んだ力強い結合物質の器官が生ずる.その反対に,少数の線維芽細胞が散在していて,それがわずかな活動をするときは,繊細な膜あるいは薄い繊弱な止め紐しかできないのである.

 原線維の形成が終わったあとでは,細胞はできあがった結合組織性の器官の形状や組成に応じて,いろいろと変わった形をとらなければならないのであって,その形は周囲から細胞が押しつけられて生ずるのである.

 かくしてわれわれは紡錘状や星形をしたもの,そして網状にたがいに合している細胞をみるし,また上皮のように細胞が沢山ならんで(上皮様細胞epitheloide Zellen),原線維の一次束の中に切りこんでいるのもみられる.この上皮様細胞が数個の束に同時に接するばあいには,非常に奇妙な形をとって,翼細胞Flügelzellenや水車の水掻き細胞Schaufelradzellenとよばれることがある.そのときには原形質は核の近くにだけ残っていて,細胞体の端っこのところは明るい板になっている.

 上皮様細胞で囲まれている1本の原線維束に酢酸を加えると,その原線維の塊が著しく膨れるが,その膨れに対して上皮様細胞の包みが多少とも妨害をおこすのである.つまり所々で外に向かって膨れるが,その間のところがくびれている.その絞れは細胞の比較的つよい突起のある場所に当たっている(図67).そしてこの突起がいわゆる巻酪線維umspinnende Fasern (umsponnene Fasernというのがいっそう良い)である.Watzka (Z. mikr.-anat. Forsch., 40. Bd.,1936)によるところの絞れは膠原線維束のまわりを輪状にとりまいている格子線維によるのであって,薄い酸に対して格子線維が膠原線維よりもいっそう抵抗が強いので上述のことがおこるのである.

[図65]形質細胞 家兎の網Omentumより.(Maximow)

[図66]結合組織の薄い膜 皮下細胞に富む組織から,(A. KeyおよびG. Retziusによる.)約×750. a, a原線維の集まった帯,b, bこの膜の細胞層がたがいに合する場所,c, cその細胞の核,dこの膜の細胞核が原線維の帯の上にのっている.

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最終更新日13/02/03

 

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