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 意見したところ,どこも同じ性質であるかと思える基質が,ヘマトキシリン,ビスマルク褐,チオニンなどの色素に染まる傾向をつよくもっている.基質は大部分が細かい原線維より成り,これが原線維間物質によってまとめられている.過マンガン酸カリや食塩水をはたらかせたり,トリプシンで消化させたりすると,基質の組成がよくわかる.原線維は集まって束をなし,この束が多くの層をなして交叉もしくは交錯している.原線維亜また,軟骨小嚢の物質をも貫いているようである.

 比較的年配のヒトの肋軟骨の内部,また関節軟骨や骨の軟骨結合のところに,老人性変化として基質が粗な線維の形をなして避ける現象が起こる.その個所は肉眼的にアスベスト様の観を呈するので,石綿様変性asbestartige Degenerationとよばれる(図74).また年配のヒトの軟骨細胞では脂肪の含有量が増す.

[図73]硝子軟骨 カエルの新鮮な材料で関節軟骨より切片をつくったもの.図の中央部にある明るい隙間で,その中に小さい顆粒を示すものは標本作製のときにこわされた細胞の残りを含む軟骨小腔の一部を現わしている.(Schiefeerdecker und Kossei, Gewebelehreより.)

[図74]比較的年配の男の肋軟骨.横断.(Freyによる.)

 軟骨は初めはその内部を貫く血管を全く有しない.そのはたらきをもっているのは軟骨の表面を被っている結合組織膜すなわち軟骨膜Perichondriumの血管である.しかしその後に軟骨が大きくなったときには軟骨膜から血管が軟骨の内部に侵入する.そして成人の軟骨ではふたたび血管がみられなくなるのが普通である.しかし奥深く存在している軟骨細胞も栄養を受けなければならない.そうすると基質の内部に特別な液細管Saftbahnenがたぶん存在するのであろうか?いままでこの点はずいぶん研究されたが,まだ確かりしたことがさっぱりわかっていない.もっとも染色の仕方によると,基質の中にはなはだ立派な網の形をした構造があらわれて,その網の形をした構造があらわれて,その網の結び目にあたって軟骨小嚢がある.基質内の液の流れに関係を持つ構造がこれであるまいかと考えるのも無理からぬことである(Schiefferdecker).

 軟骨の石灰化Verkalkungは次のごとくにしておこる.まず軟骨小嚢のところに炭酸石灰が小さい顆粒の形で沈着するので,細胞はこの石灰化した軟骨小嚢によって全く包まれる有様となる.ついで石灰沈着は基質の残りの部分に及んでいくのである.

 喉頭や器官の軟骨では真の骨形成Knochenbildungが軟骨組織を押しの小手,しばしばおこるのであるが,これはChievitzによればすでに20才ないし22才ではじまるのが普通である.これはほとんど正常の現象とみなされる.

 軟骨の発生Entwicklung des Knorpelsは次のようにしておこる.若い未分化の結合組織細胞が大きくなって,組織細胞の原線維をつくる.この原性形成がすむと,線維芽細胞が前軟骨細胞Vorknorpelzellenと軟骨細胞に変化する.

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最終更新日13/02/03

 

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