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 骨の無機成分を取り除いてオッセインを得ることができるように,またオッセインを除去して無機成分だけを残すことができる.それは用心深く焼くのであるつまり灰化Verashungであって,そうすると有機成分がこわれてしまう(灰化骨calcinierter Knochen).この灰化骨が骨組織の細かい構造を保っていることはオッセインの場合と同様である.無機質と有機質とが如何なるぐあいに合しいるのか,すなわち単なる混合であるか,もしくは化学的結合の一種なのかがはっきりわかっていない.有機物をすっかり除かれた灰化骨はその形が良く保たれていても,脆くて容易に砕ける.無機成分がオッセインに沈着して初めて,骨組織の丈夫さが得られるのである.

 器官としての骨の構造および骨組織の発生については骨学のところで述べる.ここでは人体の発生において骨組織ほおそい時期に初めて現われることだけを指摘しておこう.胎生の第7週に鎖骨がその皮切りをするのである.

6. ゾウゲ質組織Substantia eburnea (Dentin), Zahnbeigewebeは原線維間物質と膠原原線維と特殊な細胞であるゾウゲ細胞Odontoblastenとより成る.

 ゾウゲ芽細胞の体はゾウゲ質組織の外にある.細胞体は円柱状あるいは西洋梨状であって,2つの突起をもっている.長い方の突起は歯線維Zahnfaserとしてゾウゲ質組織の中にはいる.そして途中で叉状に2分し,また数多くの側枝を出して,近くにある歯線維の側枝とつづいている.ゾウゲ芽細胞のもついま1つの突起はその下にある歯髄内の結合組織のほうにゆく.核は細胞の底部にあって,楕円に近い形をなし,クロマチンに富み,通常2個の核小体をもっている(von Korff).

 歯線維およびその枝はいずれもゾウゲ質を貫くゾウゲ細管Zahnkanalchen oder Dentinröhrcheという細かい管のなかにある.この細管の壁は他の基質に比べて,いっそうつよく光を屈折し,またいっそう固い.そこを歯線維鞘Zahnfaserscheide (Neumann)という.

 石灰化した原線維間物質は多量の細かい膠原原線維を有していて,この原線維は歯の表面に平行な方向に走っている.薄い酸で処理するとオッセインとほぼ同じ物質である歯軟骨Zahnknorpelが残る.

[図79]骨小腔(a, a)それから多数の突起が出て,横断されたハヴァース管(b)に通ずることを示す.(Freyによる)

[図80]ゾウゲ細管 ヒトの大臼歯の根を横断して研磨してつくった標本の一部.×350.

[図81]ゾウゲ芽細胞 ウシの胎児よりとり出したもの.Sは顆粒性の縁で歯線維鞘のはじまりである.(v. Korffによる)

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最終更新日 13/02/03

 

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