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1. 血漿Liquor sanguinisは形をもっていない.しかし一定の事情のもとで,それは特に血液を血管の外にとり出したときであるが,凝固Gerinnungという名前で呼ばれる.興味ふかい変化が血漿におこる.それまで透明無色であった液のなかに細く明るい糸状のもの(線維素糸Fibrinfäden)があらわれて,これが急速増加して,ほかの有形成分を閉じこめてしまう.このようにしてはなはだきれいな網ができるのである.場合によってはこの糸のできかたが不規則であって,しまいには密にもつれてフェルトのようなものが生ずる.その物質が血液の線維索Fibrinとよばれるのである.(凝固現象の詳細については54頁を参照のこと).そのときに残っている液体(有形成分を全くもっていない)が血清Serum sanguinisである.血液の有形成分と線維素をもつ部分いわゆる血餅Placenta sanguinis, Blukuchenである.血液が凝固する前に棒をもってこれをかきまわすと,線維索は白い線維状の塊として,ごくわずかの血球のみを伴って,分離される.そのときに残っている部分は脱線維血液defibriniertes Blutとよばれる.

[図90]ヒトの血液 ×1000. 乾燥標本を染めて赤血球,白血球,血小板の形状を外観を示す.単核球の図はSchulten, H., Klinische Hämatologie. V. Aufl.1953. Thieme, Stuttgartより借用した.

2. 赤血球Eryghrocytenは出生後の生活では核をもたない,両凹の円板状で,その縁は丸みをおびている.円板の陥凹はへこみDelleとよばれる.赤血球の色は顕微鏡の舌では黄色をおびている.肉眼で見ると赤い.その色は特別な蛋白体であるヘモグロビンHämoglobinに基くのである.円板の直径は平均7.5µで,少数のものは8~12µに達して,巨大赤血球Megalocytenをなす.ほかのものは矮小であって2~4µに過ぎず,これを小赤血球Mikrocytenという.厚さは縁のところで2.5µ,中央部で1.8~2µ(Hayem)である.赤血球は軟らかくて曲がりやすい.しかし弾性にとむ.また標本の中では赤血球が列をなしてならぶ傾向があってその広い方の面をもって相接している.これによっていわゆる銭包み配列Geldrollen-Anordnung(図91)が生ずる.しかしこれは血液層がある一定の厚さをもっているときにのみ起こる現象である.

 赤血球は液性の内容物すなわちヘモグロビンをかこむ.細胞膜をもっている.また赤血球ははなはだ敏感なものであって,その形や性質が種々雑多な影響のもとで変化する.

 

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最終更新日13/02/03

 

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