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水分が蒸発したり,あるいは塩類や糖類を加えることによって,浸透圧が高まると赤血球は縮む.そのさい尖った小突起ができて,赤血球は桑の実Mauleerあるいは朝鮮アサガオの実Stechapfelに似た形となる.浸透圧の減少は膨化,膜の破れ,ヘモグロビンの流出を引きおこす.そのとき細胞膜は容易に認めがたい陰のうすいもの(血影Blutschattenという)として残っているが,ヨード液を加えるとそれがはっきりとみえるのである.

 細胞膜は透明無色であって,生の標本ではみえないで,粘着力がある.メチールヴィオレットによって新鮮標本でも(Schäfer), また固定保存された標本でも(Deetjen), 細胞膜を染めてあらわすことができる.この膜はリポイドの外層と蛋白質の内層とから成っている.赤血球の内部に特別な細胞形質の構造は存在しないようである.むしろヘモグロビンという液をもって充たされた中空の球であって,その壁がいま述べた細胞膜であると考えて良いであろう.

 赤血球の少数(3.15%)のものは適宜な染色をほどこした場合,その内部に細かい顆粒や糸の構造を示すのであって,これは網状赤血球Retikulocytenとよばれる.おそらくこれは若い赤血球であろう.

[図91]ヒトの赤血球.×1200

[図92]ヒトの赤血球.朝鮮アサガオの実の形(金米糠状).

 比較解剖学:哺乳動物の赤血球は人のものと非常によく似ている.最も大きさはいろいろと異なる.象やセイウチや貧歯類の赤血球は人のより大きい.犬のそれは7.3µの直径である.諸種の動物の赤血球の大きさについての研究結果を記した大きい表ができている.ラクダ類の諸動物の赤血球はやはり核を有しないが,形が楕円である.ほ乳里以外の脊椎動物では赤血球は楕円形で,核をもっている.ヤツメウナギのそれは核をもっていて円い輪郭の円板である.これらの関係について図93が示している.

 動物界には2種の違った血液がある.鉄の血Eisenblutの銅の血Kupferblutとである.前者はヘモグロビンをもち,空気に触れたとき赤くなり、後者はヘモチアニンHämocyaninをふくんでいて、空気に触れたとき青くなる.これは軟体動物や節足動物にある.鉄の地は脊椎動物以外でも,かなり多くの蠕形運動や軟体動物にみられるのである.

 人および哺乳動物でも胎児の或る時期までは赤血球のすべてが核をもっていたのであって,そのときは有核赤血球の有糸分裂が数多くみられ,この分裂は赤血球が循環しながらおこなわれる.発生がさらに進むと有核赤血球の量が減る.人の血液はすでに胎生第4月には無核赤血球がはなはだ多くなり,第6月にはもはや有核赤血球はごく少数となり,第7月より後は核の内戚血球のみが存在する.その後の時期でも一定の病気の時には有核赤血球があらわれる.

 赤血球の寿命はいろいろと異なるのが短いので14日,永いので200日といわれる.平均の寿命はRuhenstrothとBauerによれば45~60日に過ぎないという.おそらく順庵している血液の中で死滅するのがあるだろうが,そのほかに,肝臓や脾臓の中,またたぶん骨髄の中でも死滅する.骨髄では一定の細胞が赤血球摂取して,これを変化させるのである.

3. 白血球Leukocyten, farblose Blutkörperche(図90)は細胞膜をもたない細胞であって,顆粒性の原形質と1個あるいはそれ以上の数の核より成っている.

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最終更新日13/02/03

 

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