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6. 血結晶Blutkristalle:次のものの結晶が知られている.1. ヘモグロビンHämoglobin, 2. メトヘモグロビンMethämoglobin, 3. パラヘモグロビンParahämoglobin,4. オキシヘミンOxyhaminとクロールヘミンChlorhämin, 5. ヘモクロモーゲンHämatoporphyrin, 6. ヘマトボルフィリンHämatoidin, 7. ヘマトイディンHämatoidin,8. シャルコー・ライデン結晶Charcot-Leydensche Kristalle,9. 血清結晶Blutserumkristalle,10. フォルマリン色素結晶Formalinpigmentkristalle.

 そのうちで最もよく知られているのはヘモグロビン結晶,クロールヘミン結晶,ヘマトイディン結晶である.

 ヘモグロビンは動物の各種にそれぞれ特有な形の結晶をなす.人では柱状(図97),モルモットでは四面体(図98),リスでは六角形の板(図99)である.

 クロールヘミン(前には単にヘミンHäminといった)はその化学的に純粋なものがタイヒマンTeichmann結晶のなかにある.この結晶はよくで来たときは菱形の小板や柱をなして,複屈折性である.まずくできたときは卵形,大支の粒の形や文章の節の符号の形(§)をしている.

 とくに注意を要することはタイヒマン結晶の形がヘモグロビン結晶と大いに違って,はなはだ多くの種類の動物を通じて一致していることであって,無脊髄動物のクロールヘミンでも脊椎動物のそれと結晶の形では決して区別できないのである.

 オキシヘミン(前にはヘマチンHämatinといった)はクロールヘミンにアルカリをはたらかせるとできる.オキシヘミンとクロールヘミンはポルフィリンと鉄の化合物である.

 ヘマトイディン(R. Virchow)は血管の外にできた血液塊が生活体の中で徐々に濃く固くなったとき,どこででもできる(例えば脳の内部,卵巣の黄体の中,皮下結合組織の中).オレンジ色の菱形の小板である(図101).

 シャルコー・ライデンCharcot-Leyden結晶は喘息結晶Asthmakristalleともいい,ある種の病気の時に,こわれた白血球がともになって生ずる.長くのびた重複ピラミッド形で,その縁がまっすぐで,その角はとがっている.

 メトヘモグロビンは酸素とヘモグロビンが固くくっついたものであって,その結晶は褐赤色の針状,稜柱状などである.パラヘモグロビンはオキシヘモグロビンより生ずる.これは水に不溶性である.ヘモクロモーゲンはヘモグロビンを構成する一部で,有色の原子群であり,鉄を含む.これに反してヘマトポルフィリンはやはり赤いが,鉄を有しない.後者はある種の中毒の時生体内にできる.血清アルブミンの結晶はGürberによって初めて六角形の稜柱の形で得られたものである.フォルマリン色素結晶は血液を含む期間があまり新鮮でない状態でかなり長くフォルマリン液に貯えられたときに,ヘモグロビンから変化して生ずるものである.-Kobert, H. U., Mitteil. aus d. Institut für physiol. Chemie usw. Rostock . Leipzig ,1900.

 血球の数の問題ははなはだ重要である.それが血液の正常を知るのにしっかっりした基準をあたえるからである.血液の有形成分3種の比は1L. :666 E. : 66 T. である.すなわち1個の白血球に対して赤血球666個と血小板66個がある.血漿と有形成分との関係は次のごとくで,1立方ミリの血液が男では500万個の赤血球,5千ないし1万の白血球,50万の血小板をもっている.

 赤血球の数は性,年齢,体質,日時によって変質する.1cmmの血液は女では450万,男では500万の赤血球がある.この差異は思春期以後に初めてあらわれる.

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最終更新日13/02/03

 

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