歴史的な偉大な解剖学書
リンパは血液から赤血球を取り除いたものによく似ている.それは透明な無色の液,あるいはまた乳様の液としてみえる.その乳のようにな性質はごく細かい脂肪小滴を無数にもつことによるのである.有形成分としてはその他に白血球,リンパ球,リンパ性の細胞があり,一部の学者によると赤血球の前身である赤芽細胞も存在する.リンパ球はすでに記した数多くのリンパ球生成個所から由来するのであって,そこで作られたリンパ球の一部は血液に入り,他の一部は遊走細胞となって組織の中を動いてまわる.リンパ性組織とリンパ球との関係は赤色骨髄と赤血球との関係と同じである.リンパ球が赤血球にかわることができるかどうかは疑問である.血小板に相当するものはリンパには存在しない.リンパ漿もまた線維索を生ずることによって凝固する(Fibringerinnung).
筋組織は個々の収縮性要素すなわち筋線維Muskelfasernにより成っている.
筋肉においては原形質の収縮性という特徴が高度に進んでいる.
次の3種が区別される:
1. 横紋筋線維gestreifte(随意性willkurliche, 動物性animale) Muskelfasern. 随意運動のできるあらゆる筋肉およびその他の場所にある(後述を参照のこと).
2. 平滑筋線維glatte8食物性vegetatie) Muskelfasern. 呼吸道,消化管,泌尿生殖道,血管壁,皮膚の中にある.
3. 心筋線維Herzmuskelfasern. 心臓壁の筋層をなし,また肺動脈と肺静脈の壁に多少とも及んでいる.
1. 一つの横紋筋線維は筋鞘Sarkolemm,筋形質Sarkoplasma, 原線維の形をとってならんでいる収縮性の物質,および多数の核より成る.
その形からいうと,横紋筋線維は長く引きのばされた柱状を呈して,その横断面は不規則な円形である.その両端は丸みをもって終わることもあり,円錐状あるいは斜めに切ってその端を鈍くしたような形をしているものある.この筋性にが枝分かれすることは少なくないが,舌の筋肉では枝分かれした横紋筋線維が良く発達している.
その長さは12cmに達するのものがある.太さは30µと70µの間である.同一の筋の中でいろいろ異なる太さの筋線維が隣り合わせて存在する.
一定の筋の中にある筋線維の数に関していえば,良く発達した新生児の肩甲舌骨筋M. omohyoideusは20,808本の筋線維をもつが,弱々しい筋肉の発達を示す男では同名の筋がわずか14, 251本の筋線維しかもっていない(Riedel).
各々の横紋筋線維はうすい透明な膜すなわち筋鞘Sarkolemmで包まれている.この膜は以前の考え方では細胞膜に当たるものであって,核をもっていないのである(図108)比較的近年の研究によれば,この膜は結合組織から生じたもので,格子線維をもっている.
この膜は煮ても溶けず,うすいアルカリや酢酸の中でも溶けない.しかしトリプシンで消化される.この膜は透明であるから,新鮮標本や保存標本では特別な方法を用いたときにのみみることができる.生の筋線維では機械的な作用あるいは浸透圧の影響によって筋線維の内容が断ち切れて,筋鞘は害せられないで残ることが時としておこる.そのときに筋鞘が断ち切れた内容の両端の間を橋渡ししており,あるいは図108右側のように筋鞘が胞状にもち上がっている.また個々の筋線維の切断端において筋鞘が外方にめくれた膜としてみられることがある.
最終更新日13/02/03