Band1.061   

[図109]横紋筋線維の横断で核の位置を示す.ヒトの手の虫様筋.×200.

 一本の筋線維およびその含む原線維が層をなすことSchichtungについて,図106は単屈折と複屈折の物質から成っていることの簡単な,そして弱拡大で見た様子だけをしめしているにすぎない.適当な材料でさらにくわしくしらべると,この両物質の内部でさらに詳細の点が明らかになる.明るい単屈折のなかに,それをちょうど折半する暗い1線の間膜Krausesche Querlinie(横線の意)によって先般されている.また暗い間膜の両側に副盤Engelmannsche Nebenscheibeがみられることがある.この分かれ方gliederungはもちろん個々の原線維にも成りたつのである.それゆえ,1つの筋要素Muskelelementは順にいうこと次の8部からできている.

1. 副盤Engelmannsche Nebenscheibe

2. 単屈折質isotrope substanz

3. 副屈折質anisotrope Substanz

4. 中膜Hensensche Mittelscheibe

5. 副屈折質

6. 単屈折質

7. 副盤

8. 間膜Krausesche Querlinie

 この区分がどんな機能上の意義をもつかについていうと,刺激によって筋線維が収縮するときは,明るい単屈折の部分には入りこむのであって,そのために後者は高さが特にかわらないで,幅が増すのである.原線維はそのために短く,しかし幅広くなる.明るい横縞はかくしてほとんど全くなくなり,暗い横縞がまるで接触するほどたがいに近づくことがある.同じ現象が1本の原線維のかなり広い範囲にわたって起こるし,また1本の筋線維がもつすべての原線維に同じことが起こる.だから1本の筋線維のはたらきが何百万という微小なはたらきの総合である.われわれは1個の筋全体がすでにはなはだ著しい仕事をなしうるものであることを理解するのである.刺激をあたえたことがどうしてこのような物質の移動をおこすのか,収縮がやんだときにどういうぐあいに物資が戻ってゆくのか,確かなことはまだ分かっていない.それはもはや全く分子の問題にはいっているのである.

 上のことからして,単一の収縮性の要素としては,原線維の一部で2つの間膜の間にある1から7までの部分であるか,あるいは1つの間膜からそのとなりの中膜までの部分を考えるべきであろう.前者自身が機能的にみて,すでに2重の要素と思われるので,上に述べた第2の可能性が生まれるわけである.

 筋線維や原線維を変更でみると,一定の部分が単屈折性,他の部分が複屈折性にあらわれる.最も簡単な場合には複屈折性の暗い盤と単屈折性の明るい盤とが交互に並んでいる.いる.間膜がみえるときはこれも複屈折性であり,副盤は単屈折性である.

 筋の化学的検査でまず分かるのは,細胞の一次性分として前に述べたものはすべて筋線維に含まれていることである.その中で蛋白質は大量であり,ヌクレインはごく少量であり,そのほかヒポクサンチン,クサンチン,レチチン,コレステリンもある.無機部ととしてはカリウム,マグネシウム,カルシウム,鉄,燐酸が存在する.二次性分としては沢山のものがある::血液色素(ヘモグロビン),ケラチン類似Keratinoidの物質(これは筋鞘からくる),溶解している酸素類,クレアチン,クレアチニン,カルニンKarnin,グアニンGuanin,尿酸,尿素:タウリンとグリココル:イノシン酸Inosinsäure,プロト酸Protsäure, グリコーゲン,デキストリン,糖類,スチリットScylit,イノシットInosit,乳酸および食塩(A. Kossel).

 死に伴って蛋白質の化学的変化が当然起こるので,酸が形成されて,筋(平滑筋もまた)の最終のそして長く継続するつよい収縮が引き起こされる.これがいわゆる死硬直TotenStarreである.

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最終更新日13/02/03

 

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