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死硬直と同じ現象が個々の筋に,それへの血流が絶たれたときにおこることがある.

 前身における筋肉の分布という点では,多核性の横紋筋線維ははなはだ広い分布領域をもつが,単核性のそれは心臓にだけみられることが注意されなければならない.多核性の横紋筋組織はとくにすべての骨格筋の主成分として,また眼球のまわりや聴覚器,消化管の始まりと終わりのところ,呼吸器の初めの部分や泌尿生殖器に存在する.なお注意を要するのは各種の筋組織の分布に関して動物界では大きい差異が存在することである.皮下組織学の教えるところによると,筋肉には個々に述べる以外の型のものもある.

 傷ついた筋線維が再生Regenerationをするのは次のごときぐあいである.筋線維の若干の部分がまずもって壊れてしまうと,筋形質とその中の核とが盛んな活動をはじめて,両者とも増加する.ついで新しく生じた原形質海のなかにふたたび原線維の分化があらわれてくる.しかしいっそう大きい物質欠損の場合には結合組織性の瘢痕が作られる(Sokolow).

 横紋筋線維における神経終末については筋学を参照のこと.

[図110]1本の筋原線維の区分を示す模型図 2~5:それぞれ1個の筋要素.

[図111]コーンハイム野 横紋筋線維1本の横断.(人の口蓋帆拳筋.)×1000.

[図112]中くらいの太さの横紋筋線維(人)の一部(Sharpeyによる,Quainの本からの引用).間膜Krausesche querlinieがみえる.×800.

2. 平滑筋線維glatte Muskelfasernは多くは紡錘状の細胞(図113)であって,人ではその長さが50~225µ,幅は4~6µである.平滑筋細胞尾発見者であるKollikerはその長さの極小,極大として,22µと560µをあげている.細胞膜は欠けていて,そのところに原形質の辺縁の1層がある.細胞の縁は平滑であるが,たぶんここに細い溝が刻まれているのであろう.細胞体は多くの場合に密集した縦の細条すなわち原線維を,その明瞭度はちがうが示しており,この細条は細胞体がその両端に向かって細くなるにつれて,だんだんと終わってしまう.横断面ではこの原線維は密集した点としてみえる.原線維の間にある物質は筋形質Sarkoplasmaである.

 細胞の中央部に長い卵円形,あるいは棒状の核が1個ある.比較的長い線維だと核が2つあるいは3つある.核の両端に接して細かい顆粒をもつ原形質が少しく集まっている.核は多少の差はあるが概して明瞭なクロマチン網を有し,核小体は2個あるいはそれ以上の数に存在する.核が縦に伸びている面のそばに原形室内に双心子(中心小体)がある.

 多数の筋細胞がたがいに密集して,かなり大きい束や膜をなすところでは,個々の筋細胞は厚されて平たくなり,多面をもつ稜柱状となる.

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最終更新日13/02/03

 

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