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それは横断してみたとき筋細胞が大小いろいろの,時にははなはだ規則正しい多角形の部分としてみえることから分かるのである.筋細胞の間に結合組織があって,これが個々の筋細胞を包み,それらを一と纏めにすると同時に個々の間をへだてているのである.比較的大きい隙間のあるところは,それだけ結合組織が多く集まり,血管,神経などがそこを通っている.

 紡錘状の平滑筋線維の他に,枝分かれする細胞体をもつものがある(図114).後者はすでにKöllikerやその他の人々によって記載されてきた.比較的新しいところでは,Benninghoff (Z. Zellforsch., 4., Bd.,1926)が心臓内膜において,Stieve(Z. mikr.-anat. Forsch.,17. Bd.,1929)が子宮筋層において,枝分かれする細胞体をもつ平滑筋線維をはなはだ明瞭にあらわし示したのである.Benninghoffによれば,紡錘状の平滑筋線維はいずれの点からみても発達の終わりの段階にあるもので,沢山の枝分かれをしている平滑筋線維は発達の初めの段階にあるものとみなされるのである.そのあいだの数多くの段階のものがあって,紡錘形と分子型は移行する.

 変更でしらべると,平滑筋細胞は1軸性に複屈折が陽性である.その軸は細胞の長軸に平行している.

 平滑筋は体の中では多量に存在するのであって,あるいは密な膜の形をなし,その膜の重なり合った各層がたがいに違った方向,それも多くの場合たがいに直角をなす方向に走る筋線維の集まりであることが普通である.あるいは小さい梁や網,もしくはむしろ密な塊というような形を呈している.

 汗腺(毬状腺)では外胚葉性の上皮細胞,気管支の細い枝primitive Bronchenでは内胚葉性の上皮細胞が平滑筋細胞の起こりをなしているようである(筋上皮細胞Epithelmuskelzellen) (Kölliker, Stieda).眼の瞳孔括約筋M. sphincter pupillae (Nussbaum)および瞳孔散大筋M. dilatator pupillaeも同様に外胚葉性のものである.

 平滑筋細胞が数を増すことVermehrungは有糸分裂によっておこる.そのさい核分裂が必ずしも常に細胞体の分裂を伴わないので,多核の平滑筋細胞ができる.傷によって生じた平滑筋の欠損もまたこれと同じ行き方で補充される.

 平滑筋の神経終末については第II巻の交感神経の項を参照のこと.

[図113]ヒトおよび哺乳動物の平滑筋線維.a 2インチのブタ胎児の胃壁より得た平滑筋芽細胞;b その発達がさらに進んだもの;c~g ヒトの平滑筋線維の種々な形;h 脂肪顆粒を有するもの;i 平滑筋線維の集まった1束;k ウシの大動脈壁の平滑筋束の横断,多くの核が切断面にみられる.(Freyによる.)

[図114]枝分かれしている平滑筋細胞 ヒトの右心室の内膜より.×400. (Benninghoff, Z. Zellforsch. 4. Bd.,1926)

3. 心筋線維Herzmuskelfasern oder Herzmuskelzellenは短い円柱状の細胞で,横紋を示し,また非常に細かい格子線維を含む筋鞘を有している.核は1~2個で,細胞の中軸にあり,この点が骨格筋では核が筋鞘に密接しているのと違っている.心筋線維の横紋は体幹の横紋筋のにくらべてずっと繊細である.また縦の方向にも細かい筋がついているのは原線維よりなることを示すのである.この細胞の両端をなす面は段階状に切りこまれていて,しかしその面は全体としてみると線維の縦軸に対して横走している.側方に出る突起がやはり階段状(テラス状)にぎざぎざとした面をもって,隣りの細胞あるいはその突起と合している.細胞がたがいに合するところに特別な物質(接合質Kittsubstanz)の薄い1層がはさまっている.

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最終更新日13/02/03

 

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