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d)神経細胞における細胞内細管intrazellulaare Kanälchenは特別な方法によってあらわすことができる.現在のところ分かっているのは,神経細胞の細胞体の内部に長短いろいろの細い管でできた1系統があって,この間は固有の種をもたず,また細胞の外にも開いていないので,細胞体の中を貫いているということである(図124).

 Holmgrenによるところの細胞内細管は細胞の表面に開いているという.彼の意見によれば神経細胞の細胞体は他の種類の細胞が出す固い突起の集まった網状をなすものによって貫かれている.この網状物はその機能の上から栄養海綿体Trophospongiumとよばれる.この網の諸部分が溶けることによって細胞内細管が生ずるというのである.

e)中心小体Zentralkörperchenはいろいろな種類の神経細胞において,数多くの動物および人間でも見られている.

 B. 樹状突起Dendritenは原形質突起Protoplasmafortsätzeともいうが,豊富にまた細かく枝分かれするので,この突起はすべての神経細胞にあるとは限らない.例えば脊髄神経節の細胞には欠けている.これが細胞体から発するところは幅がひろくて,そこから漸次的に細くなる.この点は神経突起との差異として特記すべきものである.樹状突起の分岐はたいてい同じ太さの二た叉におこる.非常に細くなった枝が中枢神経系の汎在基礎網allgemeines Grundnetzに終わっている.

 樹状突起およびその枝の全部は神経原線維とその間にある原線維間物質あるいは原線維周囲物質interoder perifibrillare Substanzから成っている.その主な幹の中にはニッスル小体が最初の叉状分岐のところまで細胞体の方からつづいており,時としてそこを越えてなおいくらか達している.叉状に分かれる角のところにしばしば色素好性物質の三角形の塊がある.またこの場所でCajalは神経原線維が1つの側枝から他の側枝に直接に移行することを見ている.こういう原線維は細胞体じしんとは何らかの関係をも持たないわけである.樹状突起の比較的太い枝は原線維の束をもっているが,最も細い枝はわずか1本の原線維とそのまわりのいくらかの原線維周囲物質とから成っている.神経細胞が死んで,それが保存されたばあいに,原線維周囲物質がいわゆる静脈瘤に似た状態Varikositätenをなす.少数の個所にそれが集合して,その他のところでは少なくなり,かくして真珠を連ねたような像が生ずるのである.

 C. 神経突起Neuritは軸索突起Achsenzylinderfortsatz (Axon, Neuraxon)ともいい,すでに述べたように,多くはただ1本存在する.これは幅のひろい起始円錐Ursprungskegelをもって細胞体からおこり,急に細くなって,ついで細胞体からかなり離れたところで漸次的にふたたび太くなる.時として神経突起が細胞体からでなくて,樹状突起の幹からでている.また神経突起が多極神経細胞には常に存在するとはかぎらないで,全く欠けていることがあり,また2本以上存在することもある.

 起始円錐はニッスル小体をもっていないので明るくみえる.そして他の方にむかって集中する細かい縦のすじを示し,そのすじの間にばらばらに離れた顆粒が列をなしている.この縦のすじは細胞体から神経突起の中に入ってゆく原線維のあらわれである.原線維はBetheがいうように,その細胞がもつ全部の樹状突起からやってきたものである.しかしおのおのの樹状突起が導いている原線維の量は決してこの樹状突起の太さやその力強さに比例してはいない.

 神経突起の中に集まった原線維はまずたがいにごく密接になるのである.そして細胞体からいくらか離れたところで初めて比較的多くの原線維間物質がそのあいだにはいることによって原線維の密接状態が解けてほぐれるのである.

 固定して保存した標本では原線維が限外顕微鏡的な太さの現々線維Protofibrillenの集合によってできている.(Baud, C. A., Acta anat.10. Bd.,1950. )

[図124]内網装置 脊髄神経節の小さい神経細胞.Kopsch-Kolatschevの方法,同時にHolmgrenの細管の数個が示されている.×1000. *は色素.

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最終更新日13/02/03

 

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