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 長突起細胞の原形質はまん円い切り口を示す固い線維すなわちグリア線維(神経膠線維)をもっている.それゆえ線維性グリアFaserige Gliaともよばれる.グリア線維は細胞の突起の中にあり,細胞体を貫いて(図138,139),細胞体の表面でしばしばわなの形をして折れまがる.これは細胞の原形質内に生じたものであるが,一部はその母胎である細胞から分かれるために,遊離したグリア線維ができて,これが細胞に属しない特別の構造物とされることがある.グリア細胞はその突起をもってたがいに連続して合胞体Syncytiumをなしている.

 短突起細胞(図134,140)はグリア線維を欠くが,原形質内にごく細かい微小粒体Mikrosomenであるグリア粒体Gliosomenをもっている.その突起がさかんに二た叉に分かれて,その先端が広がっていわゆる膠小足Gliafüßeをなして,神経細胞や血管と関係を持つのである.

 小膠細胞はいっそう小さいものであって,グリア線維を欠いている.

 稀突起膠細胞Oligodendrogliazellenの核は小さくて球形を呈し,多くのばあいクロマチンに富んでいる.その大きさはほぼリンパ球の核にそれに近い.原形質は少量であって,薄い被いをなして核を包んでいる.(図136 ogl).この細胞の突起は細くて短く,枝分かれがごく少ない.原形質はグリア粒体をもっている.

 オルテガ細胞Hortegazellenはいま述べた細胞の種類よりは大きい.その核は長めであって,不規則な形である.細胞体は薄い層をなして核をかこみ,突起の数は少ないが,それが豊富な枝分かれをしている(図136 hgl).グリア粒体は存在しない.この細胞の突起は血管壁に付着していない.

 HortegaとCajalはオルテガ細胞が中胚葉に由来するものであると考えた(中膠細胞Mesoglia).これははなはだよく運動する遊走細胞である.しかしSpatzはこの細胞を外胚葉性のグリアの特別な一型としている.

[図136]稀突起膠細胞(ogl)とオルテガ細胞(hgl).ヒトの大脳皮質より.(Handbuch der Psychiatrie. A. I,1.1927. )endz内皮細胞の核;g血管;ga神経細胞;gl大膠細胞の核.

[図137]膠小足血管周囲境界膜 ヒトの大脳皮質でグリアが増殖しているもの.(Handbuch d. Psychiatrie. A. I,1.1927. )ga, gl, hgl, oglは図136のと同じ.

 グリアは中枢神経系の外表面にそって,また中枢神経系の内部の血管のまわりに密な境界膜をなしていて,この膜が神経膠の網および膠小足ととつづいている.

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最終更新日13/02/03

 

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