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表面境界膜Membrana limitans superficialisは柔膜にぴったりと着いていて,,たぶんこれと固く融合しさえしている.血管周囲境界膜Membrana limitans perivascularisは血管の外膜にすぐ接している.この膜と外膜との間にみられる隙間は人工的産物とおもわれるのである(図137).

 c)グリア細胞の特殊な形のものは網膜にあるミュルレル線維Müllersche Stüzfasern,なお小脳皮質の灰白質(Buschelzellen-総状細胞の意)や大脳皮質の表在層にみられるものである(第II巻を参照).

 神経組織の変性Degenerationと再生Regenerationについては多数の研究がなされている.いつも末梢の神経幹では編成する線維があるかと思えば,そのそばに再生しつつある線維が存在する.1本の神経が切断されると,それに伴っておこる現象はつぎの規則によっている.すなわち“それが属する神経細胞との結合が絶たれた線維が変性する.それにひきつづいておこる再生では,神経細胞と結合している中心端の軸索がのびて末梢端の変性した束の中に入り,この束の経路にしたがってそれが進んでゆくのである”(ウォラーの法則Wallersches Gesetz).

[図138]線維性グリア細胞 ヒトの脊髄より.グリア線維は紫.I.線維の多いグリア細胞,II.線維の少ないグリア細胞.

[図139]神経膠の網材 ヒトの脊髄の後索.

 変性と再生の経過についてBetheが概観的に記載している.彼がいうところによれば,切断された神経の末梢株においてまず軸索が壊れて少数の片に分かれ,変性が進むにつれてこれが全く消えてします.ついには軸索は何も残らないまでにいたる.髄鞘もまた壊れて断片となり,これがますます短いものになって,終わりに全く(おそらく吸収されて)なくなる.変性の速さはここの動物部門によって異なる.かくしてシュワン鞘とその核と核をとりまく原形質だけが残っている.変性をあらわす変性は傷つけられた場所ではじまって,中心株の方も末梢株の方もそれが起きて波及する.そして末梢株は完全に変性してしまうが,中心株はある距離だけ死んで,その経過がそこで中止となる.変性の過程を条件付けるのは神経細胞とのつながりが切られたことではなくて,神経の傷つけられた個所の局所的障害が原因をなすのである.神経細胞じしんもまたその神経突起が切られたときは傷害を受けるのであって,細胞体内のニッスル小体が消えて,核は辺縁の方により,やはり傷害の徴候を示すのである.このできごとによって神経細胞が完全に死んでしまうことも少なくない.他の場合には細胞が後に回復する.そのとき核はふたたび中央部に戻って,ニッスル小体が新たにできる.

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最終更新日11/05/03

 

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