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 人間の立体器楽的な基本形は二等辺の錐体である.すなわちその底が二等辺三角形をしているピラミッドである.この基本形では正に長軸にそうて非対称があり,残りの2軸の中の1つで非対称,今1つでは対称性があるわけである.

 この正二側型では身体が2つの相反部分Antimeren oder Paramerenkらできていて,この2部は対照的にだけ同じであるが,重ね合わせて一致するものでない.2つの交叉する軸の中で左右方向のもの(radial)だけが同じ極を持っている.前者は内外側の方向軸と,後者は背腹の方向軸と一致する.正中面によって身体は対照的に同じ左右の両半に分けられる.すなわち右と左の相反部分Antimerである.その各半にそれぞれ右の体肢と左の体肢がついている.内外側にむかう面によって身体は2つの同じでない部分,すなわち背方部と腹方部に分けられる.不同極性である長軸では1つの極が口極Mundpolであり,他が逆口極Gegenmundpolである.

[図142]Zeisingの研究によるアンチノウス像

[図143]黄金分割の比例

 体の両半の対称性は著しいものであるから,長軸や背腹軸における非対称性を吟味するばあいもそうであるが,左右対称という考えをあまり速くこえて先に進むことができないで,そこに長く停滞することを余儀なくされる.まあつぎのことを考えてみるがよい.2つの大体において同じ形をした,そして内部の構造も同じにできており,且つ一致したはたらきをもっている半分ずつが正中面で合して1つの完全体をなしている.その対称的な両半が単一の目的にむかって共同に働いているのである.しかしまた注意を要するのはその対称性は完全でないことである.すでに発生の初期に非対称性がとくに内臓の領域にあらわれる.そうして内臓はついに体の両半に不公平に配分されることになる.この点では不正二側型dysdipleure Formということになる.

 非対称性についてはおもしろいことが沢山ある.C. Hasseが精しく述べたように,成長した体を大きく区分してみるとその各々がどれも正確に対称的にはできていない.頭,頚,胸,腹,骨盤部をそれぞれ左右でくらべると違っているし,上肢と下肢も右と左でちがうのである.こういう非対称性をいちいち述べることは後廻しにしよう.ここの点では多くの不同があるけれども,大体において左右両側の対称性はやはり典型的なものといえよう.

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最終更新日13/02/03

 

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