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 上に述べたごとく,軸系統を論じたなかで身体の設計のことがいくらか出たのであるが,設計の全部がそれに含まれるわけでない.

 身体の大きさとその各部分の大きさを比較してしらべることがおそらくその設計をいっそう正確に分からせるのではあるまいか?

 身体およびその各部分を線や面で測ったり,また立体的に測って研究することは,それらの重さをしらべることと共に,じっさい解剖学のなすべき大きい役目の1つなのである.大きさについての学間は2つの方面にむかって試されてきた,すなわち科学の目的と芸術の目的である.大きさに関する学間,ことにその比較解剖学的な方面は身体およびその各部の正確な知識にとってもちろん非常にだいじなことではあるが,これは設計の問題についてわれわれを深く教えるものではない.

 しかし大きさの学間について興味をよびおこすために,つぎのことを紹介しよう.すでにローマ時代の建築家のVitruviusが人体の形について頭の高さは全身の高さの8分の1,足の長さはお同じく6分の1であると述べたのである.ちSchadowによると体幹および体肢の大きさは3インチの倍数になっているという.彼の測ったところではまず頭の全高が3インチの3倍すなわち9インチで,この大きさが体幹の主な区分でいつもくり返されるのである.

 一方,Zeisingは人体の形の大きさの比例Proportionenは全体の身長を黄金分割の法則に厳重に従って幾度も分けることにできているのだと証明しようと試みた.黄金分割とは周知のごとく,あたえられた1線を大小の2部に分けて,その小さい方の部分が大きい方の部分に対する比が,大きい方の部分が全体に対する比に等しくすることである.

 C. G. Carusはその著書“Symbolik der menschelichen Gestalt”1853 (2. Aufl.1858)において身体の大きさの相対比を脊柱のうちで真椎からできている部分(頚椎の上端から腰椎の下端までを指す)と関係づけたのである.この範囲の脊柱がCarusやその他の人々によると全身の区分の原尺Vorbildである.その長さを彼は3等分して,その1つを“心の自然原尺”すなわち人体の生物的な計測単位であるとした.健康な新生児の背骨の長さがちょうどこの単位に一致するのであって,Carusはこの単位を模数Modulusとよんだ.その長さは18cmである.人体の全高は模数の9 1/2倍である.下顎を除いた頭の高さは1倍,頭の長径がやはり1倍,胸骨から臍までの長さが1倍,臍から恥骨弓の下端までの長さが1倍,鎖骨にそうた肩幅の半分がやはり1倍,肩甲骨の長さが1倍,坐骨から腸骨稜までが1倍,恥骨結合から腸骨稜までが1倍,左右の前腸骨棘の間が1倍である.同じぐあいにしてCarusは四肢について彼の計測を行なった.

[図144]Liharzekの考えた人体比例の図

 Carusは芸術家のためになる目的でこの研究をしたのみでなく,明らかに自然の探求者としての自信を持って,科学のためにつくすことを努力したのである.じっさい彼のいう模数が如何にしばしばくり返されるか,もちろん模数の1 1/2,1 1/3,1 2/3(四肢において)というものがあるが,それはおもしろいことである.またSchadowの模数すなわち3インチとその3倍の9インチがたびたびくり返されることをみるのも,それに劣らず興味がある.また黄金分割の法則がかなり多くの計測においてはてはまることも分かる.

 人体の形についての新しい基準をLiharzekがだした.彼の考え方は主としてC. Schmidtの学説,すなわち身体がどんな姿勢を取ったばあいにも成り立つような合理的な比例学は,あらゆる姿勢のばあいにも変わらない身体諸部の自然の境界として,すべての関節の廻転の中心Drehpunkteあるいは運動軸Bewegungsachsenを求めなければならないということを基礎にしている.

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最終更新日13/02/03

 

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