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骨盤は女では幅がひろく低く,男では狭くて高い.鼡径の溝が男ではいっそう著明である.肩が広くて腰が狭いので,男の胴は両脚を合わせているときは下方に細くなる楔形である.しかし女の胴は肩が狭くて,腰が広いため,むしろ円柱状に近く,あるいは楔の刃が上にむかっているとさえいえる.上肢と下肢は男では筋肉の線が鋭くみえて,角のある形を呈するが,女ではそれがみな円みをおびている.殊に膝がまたそうである.

 また女の姿勢Haltungが普通,男のそれと違っているのであって,女は比較的に前方へ曲がるが,男の体幹はそれよりまっすぐで,時には軽く後方へ曲がるまでになっている.この姿勢を保つために女の脚は男よりもいっそう急な傾斜をしている.これに反して男では直立の姿勢のために脚の軸がその上端のところで比較的前方へかたよっている.大腿骨の頚がその骨幹部に女では直角に近い角度で着くが,男ではそれが鋭角である.そして大転子は男でいっそう強く後方に向かっている.

[図145]男女の体を例示する.Albrecht Durerの銅板画「アダムとエヴァ」.

 次ぎに二次性徴の説明に関しては,比較解剖学が確実にそれを証拠だてるように,これはじっさいの役に立つしくみなのであって,これにはまた分業Arbeitsteilungということが大きい役割を演じている.実際の役に立つという原則のためにその多様な現われ方が理解できる.また二次性徴はどこにも必ずあるというわけでない.動物によると雄が生殖器以外の体の構造では雌と同じというものもある.その他のばあいは雄と雌とのあいだに著明の度にちがいがあるが多少なりとも体の構造の差がある.すなわち雄がめすをしっかりもっための特別な道具をそなえていることもあり(ガムシ,ゲンゴロウダマシの類Wasserkäfer,カエルの類),あるいは雄が装飾器官,武器を持ったり,特別な大きさに達したりしている.しかし雌の方が体が大きいこともある(猛禽類,環形動物のボネリアBonellia,円形動物,多くの寄生甲殻類Schmarotzerkrebseなど).他方では雌が子供をも育てることに役立つ道具をもっていることがあり(乳腺),また反対に雄がそんな道具を備え付けていることもある(ヨウジウォの類Seenadeln).端的に云って個体の二次性徴は実用をねらったものであることが分かる.

 ところで,一次性徴のちがい,すなわち生殖腺の差異は如何なる関係があるのだろうか? 卵Eierも精糸Samenfäden, (精子Spermien, 以前には精虫Spermatozoenとよばれた)も細胞である.同じ性質の細胞identische Zellenとはいえないが,例えば甲殻類に属するテイザノプスThysanopus(アミの類)の精子は卵円形の細胞で,その他に特色が何もない.円形動物の一部のものでは精子が偽足を出すことができて,それによってアメーバと同様に動きまわる.

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最終更新日13/02/03

 

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