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1. 線の計測

全身についての線の計測lineare Messungen des ganzen Körpers

 身体の長さの計測は体幹の長さ,すなわち真の身長wirkliche Körperlänge(体幹長Stammlänge)をしらべることおあり,あるいは直立しているときの全身の長さ(Standlänge, Standhöhe), もしくは横たわっているときの身長を測ることもある.体幹は決してまっすぐな柱をしているのでなくて,数多くの曲がりをもった線の形をもつのであるから,両端の間の直線が真の長さを示さない.それゆえ,計測に当たってその線の曲がりを考慮して,その曲線を測ることが試みられたのである.頚と胴の合したものをわれわれは“大きな胴”(großer Rumpf)とよんで,狭い意味の胴体すなわち“小さい胴”(kleiner  Rumpf)と区別するのであるが,この“大きい胴”の真の長さを測ることは大して困難でない.しかし頭がこれに加わるとはなはだむつかしくなる.いったい,生きている体で真の体幹長を測ることが疑問なのである.死体を正中断すればなるほどその計測が可能であろう.しかしそれでもなお測るべき曲線の上端と下端の位置をどこにするかということが決してはっきりしたものでない.また直線的に測るにしてもその両端をどこにおくかがやはり同じように疑問となりうる.

 さらに人間の体幹長をたがいに比較するのみでなく,動物のそれとも比較しなければならないとすると,誰でもすぐに気がつくであろうが,尾方の境界点を定めることの困難がのし上がってくる.そういうばあいに,何しろ必要なことは,比較する要素をよく考えて,計測の基礎をできるだけ正確にすることである.

 これに反して直立長Standlängeあるいは直立高Standhöheの計測は簡単である.これは頭頂と足底のあいだの直線距離をいうのであって,普通それは直立した体位において測る.しばしばこれが身長Körperlängeとよばれるがそれは正しくない.平面上に体をのばして横たわっている状態で測ると直立長は立って測ったときより大きくなる.また朝に眠りから覚めて測ったものは夜に就床する前に測ったものより大きい.

 成長したヨーロッパ人の男の平均直立長は154cmと162cmの間である(Dechambre).体が特に発達した人々で平均値を超えているものとしてZeisingは直立長がおよそ172cmであるとしている.女の直立長は男より8~16cmだけ少ない.

 体の成長はドイツ人では普通に23才ないし25才で終わる.

 新生児の直立長は平均して50cmに少し欠ける.それゆえ成人の直立長のおよそ1/3である.双生児は約2cm小さいことが普通である(Fesser).また初産のときの新生児は0.5cmほど短い(Fasbender).

 乳児の身長が生後いかなるぐあいに増すか,,またその後の各年齢における直立長の平均についてはH. Vierordtの数値表(Anatomische, physiologische und physikalische Daten und Tabellen. 3. Aufl. Jena 1906)をみることをすすめる.この本には必要な文献もあげられている.体幹長としてはC. E. E. Hoffmannが頭頂と会陰の間の距離を測ってつぎの値を上げている.

男では98.5cm(直立長167.8cmのもの)

女では93.7cm(直立長156.5cmのもの)

またHoffmannはそれに属するものとして対の数値をあげた. 

男(平均)

女(平均)

頭高(頭頂から下顎角まで)

 18.5cm

  17.4cm

頚長(後頭から第7頚椎の棘突起まで)

 24.6cm

  23.4cm

胴長(第7頚椎から会陰まで)

 61.6cm

  58.2cm

下肢長(腸骨稜から足底まで)

103.0cm

  98.4cm

上肢長(肩の高まりから中指の先端まで)

 74.2cm

  69.2cm

肩幅(左右の肩の高まりの間)

 39.1cm

  35.2cm

腰幅(腸骨稜の外側部の間)

 30.5cm

  31.4cm

上腕

 31.2cm

  29.0cm

前腕

 24.6cm

  22.8cm

 18.4cm

  17.4cm

脚(大転子まで)

 89.8cm

  84.8cm

大腿(大転子から膝まで)

 41.9cm

  39.8cm

下腿

 39.6cm

  37.8cm

足高(腓骨踝の下方)

  7.8cm

   7.8cm

 体の表面にはもちろんはなはだたくさんの重要な個所があって,その相互の距離を測ることは大事な意味を持ち得るのである.いままでに決定された数値も甚大な量に達している.それらの統計の中に事実Tatsachenがはっきりとあらわれており,個体的および性的の差異がその中に見られ,いろいろの年齢階級や種族の特徴がそれらの数値を特別なぐあいに影響するということを考えると,それだけでも綿密な計測が充分やりがいのある仕事であることはすぐに分かるのである.

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最終更新日11/02/23

 

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