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比較にあたってはこの事情がよく考慮されなければならない.頭方kranialが直立の体ではobenであり,尾方kaudalがunten,腹方ventralがvorn,背方dorsalがhintenである.

 頭方kranial,近位proximalの位置と方向という表現はその逆であるところの尾方kaudal,遠位distalの位置と方向とくらべると自ら明らかとなる.背方dorsalの位置と方向は腹方ventralと逆だから,これもすぐわかる.近位および遠位という表現は上肢と下肢の場所について用いられて,それが体幹に近いか遠いかを意味するのである.また橈側radialis,尺側ulnaris,脛側tibialis,腓側fibularisという表現は体肢においてそれぞれの骨との局所的な関係が示されるのである.これらの語によって,体肢が全身に対していかなる位置をとっていても,それとは無関係に方向をいうことができる.体肢の伸側は背側dorsalとよばれ,上腕と前腕と手の屈側は掌側volarといい,足の屈側は底側plantarの面とよばれる.大腿の屈側は腹側面ventrale Flächeといわれるが,下腿は前面と後面vordere und hintere Flächeをもっている.視覚器と聴覚器では位置を云いあらわすのにいくつかの特別な名称が必要であり,じっさい慣用されている.links, rechtsという表現は少しも混同される心配がない,内方innen,外方außenという表現は空所についての位置の関係にのみ用いられる.またsuperficialis,profundusという表現は全身の表面,あるいは1つの器官の表面に近いか遠いかをいうのに用いるのである.図156は上に述べたことがらを示している.

 次ぎに位置および方向を云いあらわすのに慣用されている語を集めておこう(Jenaer Nomina AnatomicaすなわちJ. N. A. による):

1. 一般用語Termini generales

medianus(正中),sagittalis(矢状),frontalis(前額,前頭),transversalis(横),medialis(内側),intermedius(中間),lateralis(外側),anterior(前),medius(中),posterior(後),ventralis(腹方,腹側,前),dorsalis(背方,背側,後),internus(内方,内),externus(外方,外),dexter(右),sinister(左),longitudinalis(縦),transversus(横)「1」ある器官の軸に対して横であるときはtransversusといい,体軸に対して横であるときはtransversalisという(原著註)」,cranialis(頭方,上),rostralis(吻方「2」体軸の前方(すなあち頭方)の極に近い,あるいはそれに向かっての意である.(原著註)),caudalis(尾方,下),superior(上),inferior(下),superficialis(浅),profundus(深),nasalis(尾側,内側).

2. 体肢にだけ用いられる語

Termini ad extremitates spectantes

 proximalis(近位,上),distalis(遠位,下),radialis(橈側,外側),ulnaris(尺側,内側),volaris(掌側,前),dorsalis(背側,後),tibialis(脛側,内側),fibularis(背側,外側),plantaris(底側),dorsalis(背側).

[図156]身体の水平断模型に方向などを示す言葉を書き入れた.



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最終更新日11/02/23

 

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