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脈管のとる相当太い管がかなり多数,骨端や骨幹から骨の内部に侵入し,豊富に枝分かれして骨全体を貫通している.このようにして骨膜から緻密質・海綿質,さらにそうの内容全部が血管の分布を受けているのである.

 さてこれから顕微鏡で器官構造の観察をはじめる前に,次のことを思い出しておこう.それは,骨組織Tela osea, Knochengewebeは結合組織に属するものであるから,(石灰化した)細胞間質と,細胞と,線維とから成り立っているということである(44頁参照).さらにわれわれが検べているのは晒した骨,すなわち石灰化していない軟部を腐敗作用によって除去した骨であるということをも考慮に入れておこう.つまり骨細胞Knochenzellenはみえず,骨細胞のはいっていた骨間隙Knochenlückenが見えるだけであり,同様に血管・神経・リンパ管は見えず,それらを入れていた管だけが認められるのである.

[図157]管状骨の縦断(1/3)右の大腿骨を前額断したところ.

[図158]晒した大腿骨の内腔の金属鋳型 後ろから見る(1/4).大腿骨頭と脛側および腓側顆には金属がはいっていない.髄腔の最狭部には大腿骨全長の上から3分の1のところにある.

 縦断研磨標本Längsschliffをみると,ハヴァース管Haversche Kanälchenとよばれる細い小管が何本も認められる.脈管を容れるこの間の間を埋める骨質には,一定の列をなしてならぶ多数の骨小腔Knochenhohlenと,それから発する無数の微細な骨細管Knochenkanälchenとが見られる.

 さらに管状骨の横断研磨標本Querschliffを観察すると,ハヴァース管の断面が点々とちらばっているのがまず目につく.それらの間隔は長いものもあり短いものもあり,直径も大小さまざまなである.しかしそれにもまして著しいのは,骨基質のそうと骨小腔のそうが1層ずつ交互に並ぶために生じる,緻密質の層板構造blättriger Bauであって,これは縦断でも認められるが横断でいっそう明瞭である.層板Lamellenの走向は一様でない.すなわち緻密質の外表層に平行して走るのが外基礎層板äußere Grundlamellen (FundamentallamellenまたはGenerallamellenともいう)で,同様に最内層にあるのが内基礎層板innere Grundlamellenである.



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最終更新日11/02/23

 

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