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d)軟骨の化生による骨発生chondrometaplastische Osteogenese

 ある条件のもとで,しかもある定まった場所では,軟骨細胞の骨細胞への変化Umwandlungもおこる.Köllikerによれば,クル病のさい骨幹部の骨化でこの現象が起こるという.そこでは軟骨細胞と軟骨小嚢とは,骨化にあたり植物細胞が木質化する場合と同様な態度をつる.これに属するようなことが,さらにシカの類の成長しつつある角(Lieberkühn, Kölliker),ウシの鎖骨と角の骨化(Gegenbaur),ヒツジおよび家兎の胎児の下顎骨やいくつかの管状骨の或る部分について観察されている.

4.骨の成長

 骨の発生について述べたので,いろいろな型の骨発生において,若い骨原基がいかなる現象に基づいて長さと太さを増してゆくかということが,すでに明らかになった.長さが伸びるとときも太さが増すときも,骨芽細胞によって新しい骨質がたえず付加され,積み重ねられてゆくのである.すでに形成された骨組織が,たとえば骨細胞の分裂などによって膨張することはない.すなわち骨の成長は付加成長appositionelles Wachstumであって,間質成長Interstitielles W. あるいは内部増殖的成長intussusceptionelles W. ではない.この点は化生型においてすらも変わりない.ひとたび出来上がった骨組織は硬すぎて,各部分の「ゆるみ」や「ずれ」によって成長することは,とうてい不可能である.

 しかし胎児や子供の骨(もちろん骨組織からなる場合のことだが)を成人におけるその完成型と比較してみると,付加成長だけで骨の成長の目標が達し得られるものではないことに,すぐ気がつく.新生児の大腿骨の骨幹の横断は,成人の大腿骨の髄腔の中にスッポリ入ってしまう.とすれば,いかにして付加成長だけで,この完成型ができるのだろうか.

 事実は,付加成長によって最後の構造が生まれるのだが,完成型に達するためには一方において強力な吸収現象がなくてはならず,また現にその現象が起こっていることがわかる.若い骨の内部および外面で,すでに形成された骨組織に,長期にわたって広汎な破壊が正常な現象としてみられるのであって,これを吸収Resorptionと称する.この現象が個々の骨に一定の様式で起こることはKöllikerの広汎な研究の示すところである.これによって1つの新しい大きな分野が開かれるのであって,その知識は個々の骨を充分に理解する上に是非とも必要である.

 その知識をもつことによって,出来上がった骨では当然古い吸収の跡が見られるのだし,成長中の骨では進行しつつある吸収の徴候があるのだから.さて吸収とそれに伴う構築の変更がいかに広汎なものかを,まず大体知ってもらうためには,3才の子供の大腿骨は新生児のときの大腿骨の骨質を全く,ないしはほとんど全く持っていない(Kölliker)ということをあげておこう.もっとも3才以後も,吸収と負荷現象とはいずれ劣らぬ強さで進行するのである.吸収が行なわれていることを示す徴候は何かというと,その場所では,どこでも次の2つの現象がみられるのである.それは第1にハウショップ小窩Howshipsche Lakunenと呼ばれる骨質の小さなくぼみと,次に破骨細胞Osteoklastenという.多少の差はあるが概して大きい多核性の細胞とである(図175).破骨細胞は巨大細胞RiesenzellenともMyeloplaques(骨髄小板の意)(Robin)とも呼ばれ,骨の吸収の問題において細大の注目に値するものである.実際,この細胞の存在するところでは,すでに破壊の仕事がはじめっていると言える.この細胞は骨芽とは全く反対のはたらきをもつのである.この細胞はKöllikerによれば骨芽細胞から,Schafferによれば血管内皮から,Häggquistによれば骨細胞に由来する.

 出来上がった骨では過去に行なわれた呼吸の跡が,ハヴァース層板系にしばしば特にはっきりと認められる(図172).すなわち完全に発達したハヴァース系の破片や遺残が存在し,ここに起こった現象の跡をとどめているのである.ハヴァース管のところから層板の一部が吸収され,新生され,また吸収され,なおまた新生されるという様なことが非常にしばしばある.

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最終更新日13/02/03

 

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