Band1.118   

成人では管状骨の髄腔は黄色骨髄でみたされている.一方,赤色骨髄は主として管状骨の海綿質の中にあり,さらに椎体・肋骨・胸骨などの中,板間層すなわち頭蓋骨の海綿質の中,それから手根骨・足根骨の中にもある.年寄りでは骨髄はしばしば半透明を呈し,膠様骨髄Medulla ossium gelatinosaとなる.

 骨髄という器官の全容積はG. Wetzel (Z. ges. Anat.,82. Bd.,1927)によると,20才の1男性では2915ccmで,55才の1男性では4192ccmである.そのうち20才の方の赤色骨髄は1420ccm,55才の方のは2558ccmである.新生児の骨髄は平均して67ccmであって,男児は小児にくらべて大きい.

 骨髄の実質を支持するものは結合組織の線維からなるが,この線維は発生の模様や,組織配列の状態や,組織化学的な所見から,リンパ性器官の細網線維に相当するものである.この支持構造の中に見られる細胞要素は,骨髄細胞・巨大細胞・白血球として区別される(58頁).血管・リンパ管・神経はもちろん骨髄にも存在する.この血管の内皮は,ある著者たちによると,赤血球の産生に関係するという.

 管状骨の髄腔の内部で,骨髄は緻密質の内面に対して骨内膜Endosteumという薄い膜で境されている.

Hammar, J. A., Anato. Anz.,19. Bd.,1901.-Jackson, Arch. Anat. u. Phys.,1904.-Rohr. K., Das menschliche Knochenmark. Leipzing 1940.

8. 骨格の概観

骨の外形,構造,諸部分,一般的名称

 骨は外形によって次のように区別される.

1. 長骨Ossa longa. 体肢の多くの骨がこれに属する.この種の骨は1つのCorpusすなわち骨幹Diaphsisと,2つのたいてい太くなっている骨端Epiphysesとからなる.骨端はしばしば円いこいCapitaの形を呈する.骨幹の内部には1つの大きい空所があり,これが骨髄を容れる髄腔Cavum medullare, Markhöhleである.それでこのような骨をまた骨状管ともよぶ.この型に属するすべての骨では,1つの方向への伸びたが支配的である.

2. 扁平骨Ossa plana. 肩甲骨・寛骨・多くの頭蓋骨のようなもので,この群の骨は2方向に(2次元的に)特に拡がっている.

3. 短骨Ossa brevia. 手根骨や足根骨のようなもので,3方向に向かって一様に拡がっている.

4. 含気骨Ossa pneumatica.篩骨・蝶形骨・前頭骨・上顎骨・口蓋骨のようなもので,空気で充たされ,粘膜で裏うちされた空所をもっている.

5. 不規則形または混合型の骨. これには上に3つの分類にあてはまらない骨が全部ふくまれるのである.

 骨によって,柱・環・管・函・円蓋などいろな形づくられる.この点について特に図176に注目されたい.骨は相寄って,受動的運動を行うのに非常によく徹した一組のの「てこ」Hebelsystemを構成しており,能動的運動器官すなわち筋にとっては広汎な作用面となっている.また骨は環や管や函の形をなして,その中に囲まれた器官の保護枠としての役目をもするのである.この役目は骨にとっては最も重要なものであり,骨格系の本来の使命を示すものなのである.

 図176をみるにあたっては,体の中での骨格の位置を前もって知っておく必要があるだろう.骨格は結合組織内にあって,骨と一定の位置関係にある他の諸器官系のあいまに存在している.

 ここまでは骨の外観に注目してきたわけである.たしかにこの表面の状態は大事であるが,これに劣らず内部の状態もないがしろにしてはならない.

S.118   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る