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 椎弓は対称的な左右両半からなり,それぞれ椎体から後方に伸びて,正中面で相合する.椎弓が両側ではじまる部分は椎弓根Radix arcus vertebraeという.椎弓根はいっそう太い外側部Seitenstückに移行し,これに閉鎖部SchüßstückすなわちWirbelplatte(板状部)がつづく.

 各々の外側部は上下各1本の突起を出して,この突起が関節面を1個ずつそなえている.これがおよび下関節突起Facies articulatis cranialis, caudalisによって,となりの脊椎と関節結合をなしている.外側部からはまた各側1本の突起が外側に伸び,これが横突起Processus transversus, Quefortsatzである.

 椎弓の閉鎖部からは不対性の棘状の突起すなわち棘突起processus spinalis, Dornfortsatzが伸びる.

 椎弓根は椎体の高さ全体にわたって起こるのではなくて,椎体の下面よりも上面にいっそう近いところで,その一部から起こっているに過ぎない.このようにして,重要なおよび下椎切痕Incisura vertebrae cranialis, caudalisが形成される.下椎切痕の方が上椎切痕よりも大きくて深い.1つの脊椎の上に次の脊椎が重なるために,上下の切痕によって1つの短い管,あるいは呼びならわしにしに従えば1つの「孔」が生じる.これが椎間孔Foramen intervertebrale, Zwischenwirbellochで,脊柱管Canalis vertebralis, Wirbelkanalに通じる.

 前述の脊椎の5群はそれぞれ脊椎の全部に通じる特徴のほかに,さらに各群に特有の目じるしは各群の中ほどの脊椎でとくにはっきり顕われるので,椎体であれ,椎弓であれ,突起であれ,脊椎のほんの一部さえ見えれば,その脊椎がどの端の方にある脊椎は,となりの群を特徴をいく分とり入れており,そのため移行的な性格を示している.さていよいよ脊椎の各群を順を追って観察してゆこう.

α)頚椎Vertebrae cervicales, Halswirbel (図181185,198)

 7個の頚椎のうちで,はじめの2つ,環椎Atlasと軸椎Epistropheusは別にして述べなければならないが,次の点ではこの2つの頚椎も他のすべての頚椎にと一致している.それは,横突起Querfartsatz正しくは肋横突起Foramen costotransverariumが抱かれていることである.

 肋横突起の前部は頚肋骨Halsrippeの痕跡である.これに対して後部が本来の横突起であって,前部が後部に結合する部分は,後述の胸肋骨Brustrippenの肋骨結節に相当するのである.v. Hayek (Morph. Jahrb., 60. Bd.,1928)によれば痕跡的な肋骨の外とはないという.ところで肋横突起の根にもこれを貫いてForamen intratransversarium (Hayek)という孔があることがある.肋横突孔とこの孔とが同時に存在する場合には,肋横突孔が2分したともいえるのである.

 肋横突起の上面には,第3頚椎以下,脊髄神経溝Sulcus nervi spinalisという深くて幅の広い溝がある.第3以下の頚椎では,第7頚椎を除いては,肋横突起の外側端が2つの突出部を示し,これをおよび後結節Tuberculum ventrale, dorsaleという.

 頚椎のは小さくて矢状方向よりも横の方に述べた形で,第3から第7頚椎へと幅がひろくなっている.上面は左右方向に(つまり前額断でみると)凹,下面は前後方向に(つまり矢状断でみると)凹をなしている.両面ともこれと直角方向に線上では軽く凸となっているので,つまり鞍状を呈することになる.

 関節突起は幅がひろくて平たい.その関節面は斜めになっていて,くわしくいえば上関節面は前・下・内側に向かっている.

 椎弓の閉鎖部は長くて,関節面の傾きと同じ方向に傾いている.

 棘突起は短くて,かるく下方に傾き,回の頚椎ほど長さが増す.棘突起はフォーク状に2つの棘に分かれているが,この棘は第6頚椎ですでにごく短くなっており,第7頚椎では全く欠けるか,わずかにそれとおぼしいものが存在するに過ぎない.

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最終更新日13/02/03

 

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