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 椎体の外側面,椎弓の基部のわきに,平らな関節窩があり,この関節窩の存在する部分はしばしば椎体からややたかまっている.これは肋骨小頭のの接するところで,それゆえ肋骨窩Foveae costales, Rippenphannenとよばれる.

 椎体の多くは左右各側に半分の肋骨窩を2つずつ(上縁に1つ,下縁に1つ)もっているので,それぞれおよび下肋骨窩Fovea costalis cranialis, caudalisとよばれる.となりあう2つの脊椎の肋骨窩の半分同志が寄り合って,その間にある椎間円板とともに肋骨小頭を受け入れるようになっている.

 しかしながら次の脊椎は特異な点を示している.まず第1胸椎は上縁に完全な肋骨窩が1つ,下縁に半分の肋骨窩が1つある.もっとも第1肋骨が上にずれて第7頚椎と第1胸椎のあいだに来ている場合には,第1胸椎体の上縁と第7頚椎体の下縁とが半分の肋骨窩を1つずつもつことになる.つぎに第11および第12骨の小頭は,相当する椎体の真中の方へ寄って位置しているので,第11および第12胸椎は完全な肋骨窩をそれぞれ1つもつことになる.それゆえ第10胸椎は半分の肋骨窩を上縁に1つしかもたないのである.

 関節突起の軟骨でおおわれた関節面はほぼ前額面に一致している.そして上関節面はだいたい後方に向き,下関節面はだいたい前方を向いている.しかし第1胸椎の上関節突起と,第12胸椎の下関節突起とは,となりの脊椎群と同じ形の関節部をもっている.横突起は外後方に向かって伸び,第7または第8胸椎までは下にゆくほどいくらか長さを増すが,それ以下ではまた短くなる.横突起の自由端の前面には,肋骨結節の接する1つの小さい関節面があって,横突起の肋骨面Facies costalis processus transversiという.この関節面は第11および第12項椎では欠けている.椎弓の閉鎖部は頚椎におけるよりも長さが短くて丈が高く,その縁は凹凸があって,しばしば鋸歯状を呈する.棘突起は三角柱の形をなして斜め下方に向かって非常に長く伸び(とくに中ほどの胸椎で),その端は小さいふくらみをなして終わっている.椎孔はほぼ円形で,頚椎および腰椎におけるよりも小さい.

γ)腰椎Vertebrae lumbales, Lendenwirbel (図186, 206)

 椎体の横径および矢状径,とくに前者は胸椎より大きくなっているが,高さの増加はそれほどでない.上下面は腎臓あるいはソラマメの形をしている.第5腰椎の体は,後ろの方が前の方よりかなり丈が低い.

 関節突起は太くてがっちりしている.関節面は矢状面に一致していて,同時に円柱面状の「ふくらみ」と「へこみ」をなしている.それぞれの上関節突起からは,1つの小さい高まりが上後方に伸び,乳頭突起Processus mammillarisとよばれる.

 上関節突起は下関節突起を外側から抱きこんでいる.どの脊椎群においても,上関節突起は同時に前関節突起,下関節突起は後関節突起ともいうべき位置関係にある.関節面が(胸椎・頚椎のように)前額面上になっく,(腰椎のように)矢状面上にあるときは,上関節突起は外側から抱きこむ方,下関節突起は抱きこまれる方となる.この場合,後者の関節面は凸,前者の関節面は凹をなしている.

 横突起Querfortsatz正しくは肋骨突起Processus costariusは長くて扁平で,上下の稜と外側に向く面とをもっている.各肋骨突起の基部から後方へ向かって1つの小さい尖った突起が出ており,これを副突起Processus accessoriusという.第5腰椎の肋骨突起は通常ほかの腰椎のそれにくらべて短くて太く,大抵いくらか上向きに伸びている.

 5個の腰椎は頚椎と同様に,独立した肋骨をもっていない.とはいっても腰椎もまた肋骨の痕跡をもつのであって,それは肋骨突起の中に含まれている.すなわち腰椎の肋骨突起は1つの大きい肋骨痕跡と,1つの小さい横突起とが合してできて来たものである(Rosenberg).しかし肋骨から由来した部分は,各腰椎によってその発達程度が違っている(Holl).ところで肋骨の痕跡と横突起との癒合が起こらないと,腰肋[]Lendenrippeというものが生じ,これは第1腰椎においてはかなりの大きさに達することがある. -Holl., sitzber. Akad. Wiss. Wien,128. Bd.,1919.-各腰椎の肋骨突起の癒合状態のちがいについての詳しい報告はHyek, Morph. Jahrb., 60. Bd.,1928.

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最終更新日13/02/03

 

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