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 仙骨尖Apex ossis sacriには小さい下端面Facies terminalis caudalisがあって,椎間円板によって尾骨の上端面と結合している.

 仙骨管Canalis sacralisは三面形で,仙骨の曲りに応じて弯曲し,下にゆくほど狭くなっている.仙骨管は下部では仙骨の後面で裂け目のような形で口を開き,仙骨管裂孔Hatus canalis sacralisをなしている.

 性差.女性の仙骨は男性のにくらべて,長さのわりに幅が広い.同時にまた男性のよりも短くて弯曲が少い.つまり男性の仙骨は女性のそれより長くて細く,弯曲が強いわけである.また女性の仙骨は正三角形に近い形をしている.

 個体差.個体による仙骨の形の差や組織のちがいが非常にしばしば見られる.5つの脊椎が集まって仙骨をなすのは約半数例で,4つのことは稀であり,それよりは6つのことが多い(長谷部言人によれば日本人で仙骨が4個のこと1.1%,6個のこと28.7%である.).7つの脊椎からできている仙骨をFretsが写生している(Morph. Jahrb., 48. Bd.,1914).左右非対称も現われることがあり,それは第1仙肋骨が1方のみ欠けているためのこともあれば,第5腰椎に通常の肋骨痕跡のかわりに,よく発達した仙肋骨が1側だけに生じるためのこともある.このような場合には両側の関節面の高さが異なって,そのために骨盤の形まで影響をうける.

 ヨーロッパ人の仙骨は絶対的にも相対的にも,その他の人種(日本人も該当する.)の仙骨より幅がひろい(Radlauer, Morph. Jahrb., 38. Bd).

ε)尾骨Os coccygis, Steibbein (図191193)

 成人の尾骨はわずかに4つまたは5つの脊柱からなることが普通で,稀には3つまたは6つの脊椎からなることもある.

 しかし胎児の原基においては,最初の尾椎は9つ認められるのだから,いろいろな場合に6つ以上の尾椎が見出されることも,このことから容易に説明がつくであろう.もっともヒトのいわゆるfreier Wirbelschwanz(尾骨が仙骨から遊離してぶらぶらしているのを指すのであろう-小川鼎三)が6つの仙椎からなるということは,けっして多くみられるのではない.

 個々の尾椎は下にゆくほど小さくなり,それにつれていっそう退化的になる.

 第1尾椎にはなおかなりよく発達した椎弓の名残があり,また以下のものよりずっと幅が広い.その上面は尾骨の上端面Facies terminalis sacralisをなし,椎間円板によって仙骨と結合し,下面は第2尾椎と結合している.外側に張りだした2つの部分は横突起の残りで,尾骨の横突起Processus transversi ossis coccygisとよばれる.また角のように上方に突出した2つの部分は尾骨角Cornua ossis coccygisとよばれ,上関節突起の残りであって,仙骨角の方へ向かって伸びている.

 第2尾椎と第3尾椎とは分離していることもあるし,癒合していることもある.中年の人では最期の3つの尾椎はくっついて1塊をなしているのが普通であるが,そうなってもなお何本かの溝が,もとの分離のことを物語っている.さらに年齢が進むと,すべての尾椎が癒合し,ついには仙骨ともくっついてしまうが,この変化は女性より男性に早い.第1尾椎は,すでに仙椎相互の骨結合がおおなわれる時期に,これらの仙椎と同じ運命に従うことがあって,そのときには第1尾椎が第6仙椎となるわけである.

b)肋骨と胸骨
α)肋骨Costae, Rippen (図194197, 201204)

 脊柱の頚部,腰部,仙部の肋骨痕跡についてはすでに述べたが,胸部の肋骨すなわち胸肋骨Brustrippenがまだ残っている.胸肋骨は左右対称に12対あって,この12対がいろいろ異なった形成段階に達しているために,たがいに形を意にしている.脊椎と骨性に結合した肋骨痕跡は不動性であるが,ここに述べる胸肋骨はすべて独立した可動性の肋骨である.肋骨痕跡も独立した胸肋骨も,形態学的にはすべて歴とした肋骨なのであるが,どの1つとして完全な箍にはなっていない.

 独立した肋骨はすべてが胸骨に達するのではなくて,上位の7対だけが胸骨につく.それでこれらを胸骨肋Costae sternalesと呼び,残りの5対を弓肋Costae arcuariaeという.第8,9,10対は,その肋軟骨が,それぞれ1つ上位の肋軟骨に鋭い角をなして接して,結合組織で結合しているので,付着弓肋Costae arcuariae affixaeとよばれる.

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最終更新日13/02/03

 

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