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いろいろな方向からみた脊柱

 脊柱を前からみると(図210),椎体が上下にならんでつくる脊柱は,第2頚椎から第1胸椎まで幅を増すことに気がつく.しかし第1胸椎にいたって幅の増加は止まり,それについで第4および第5胸椎にいたるまで椎体が細くなる傾向が,しばしば非常に著明に見られる.そしてここから,また幅が次第にに至まで増大するのである.ところで第1仙椎体の下端はその上端面よりもすでにずっと狭くなっている.さらに下部仙椎に向かって幅はゆるやかに減少し,ついに最期の尾椎では1cmそこそこの幅となって終わるのである.

 第2胸椎から第4胸椎までの領域で椎体の幅が減少することは,胸椎の矢状径がそこで増すことによって一応は説明がつくが,なお頚椎下部および胸椎上部では椎体の幅が大であることによっても説明される.それからまた胸郭全体の幅の大きいことが,胸部脊柱の幅の減少を補っていることも考えられる.また幅の増大は上肢の影響によるもので,横へぶら下がっている上肢が筋肉や関節結合によって,ちょうどどこのあたりにとくにとくに負荷をあたえるのである.

 脊椎の横突起の両側端の間の距離は環椎では著しく大きいが(平均7cm),軸椎ではずっと小さくなり,以下第1胸椎までふたたび大きくなってゆく.第1胸椎から第12胸椎まで横突起の両端の距離はふたたび漸次小さくなる.そして腰部脊柱においてはその距離は10cm近くにまで増すのである.

 脊柱を側方からみると(図209),脊柱の上部から下部へと椎体の矢状径が増大し,その増し方は胸部脊柱において最も強いことに気づく.胸部脊柱の横突起の端はやや後方に向いていて,それらを上下につらねる線は,胸部脊柱の椎体が描いている.なぜなら,中位の脊柱の棘突起下向きに伸びる傾向が強く,屋根瓦状に重なりあうのに対し,上位および下位のものはいっそう真後向きに近く伸びているからである.さらに脊柱にはS状の弯曲が2つあることにも注意せよ.

 脊柱を後方からみると(図208),各棘突起は概して正中線上に並んでいるが,それは1つ2つの脊椎が偶発的に列を乱している場合や,脊椎群が全体として一定の様式に従って正中線からそれている場合をまず除外してのはなしである.棘突起によって,尖ったひとつづきの高まり(Grat)ができるので,脊柱のことをドイツ語でまたRückgrat(背中の稜)というのである.ところで,この高まりの両側にはWirbelfurchen(脊柱溝)という溝があり,この溝は底は各椎弓の閉鎖部からなり,外側からは,脊柱の頚部および胸部では横突起によって,また腰部では乳頭突起と副突起によってしきられている.項部ではこの溝は広くて浅いが,さらに下方では深く狭くなり,最も狭いところは第12胸椎のところである.これら2本の長い溝に沿って目を走らせれば,横走する椎間隙Zwischenwirbelspaltenが上下に列をなして並んでいる,その全体を見ることができる.この間隙は軟組織のついた骨格では[]弓間靱帯Ligamenta interarcualiaという弾性に富む靱帯でいる.椎間隙が最も大きいのは環椎と後頭骨との間で,次に大きいのは環椎と軸椎の間,3番目に大きいのが第5腰椎と仙骨との間である.そのほかの所では,椎間隙は頚部および上胸部ではほんの狭い幅のものであり,胸部脊柱の下1/3から大きくなり,腰椎に至ってさらに大きさを増す.椎間隙の最期のものは仙骨管裂孔にあらわれている.

 椎間孔Foramina intervertebraliaはそれを通る神経や血管と同様に,この孔を作っている2つの脊椎のうち上方ものの番号によって数えられ,また名づけられている.しかし頚部の椎間孔があり,その第1胸椎との間にある椎間孔は別として,椎間孔の番号と名前は下方の脊椎によって示されることになる.第5仙椎と第1尾椎のあいだにある.第1尾椎間孔は第1尾椎の下方にあって,脊柱管を後方と側方で閉鎖する膜の中にある.

脊柱と胸郭の変異(H. Adolphiによる)

 成人の脊柱は32~35個の脊椎からなるが,極端な場合にはこれよりさらに1~2個多いこともありうる.

 環椎は,病的な現象としてでなく,先天性に後頭骨と融合して頭蓋の一部をなしていることがあり,これを環椎の同化Assimilation des Atlasという.しかしこの様な場合にも軸椎は自分の特等を保っていて,環椎の形をとるというようなことはない.軸椎が環椎に,環椎が第3頚椎になり得るというような移行型は,少なくとも今までのところろその記載をみない.

 

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最終更新日13/02/03

 

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