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屍体をおよそ12体しらべることに,腰椎が4個しかないという例を見出すことを期待できる.たいてい腰椎は5個あって,6個のことはごく稀である.第19,第20,第21あるいは第22脊椎が第1腰椎となりうるし,第23,第24,第25,あるいは第26の脊椎が最後の腰椎となりうるのである.仙骨は4, 5, あるいは6個の脊椎からなる.仙椎が4つしかないことはごく稀で,5つのことが普通であるが,6つのこともしばしばである.第1仙椎となりうるのは第24,第25,第26あるいは第27の脊椎である.そのさい,仙骨の弯曲が単純なこともあるが,また第1仙椎体が第2仙椎体と合するところに前下方へ突出する角をつくり,第2の岬角すなわち重複岬角doppeltes Promunturiumをなしていることもある.仙骨の弯曲が単一で,しかも第24脊椎が第1仙椎となっている例は非常に稀である.しかし重複岬角の場合は,第24脊椎が第1仙椎となっていることがそう稀なものではなく,この状態は全例のの約3%に見られるのである.仙骨の弯曲が単一であって,第25脊椎が第1仙椎となることは全例の約85%にある.この状態は圧倒的に多数の例に見られるために正常と考えられる.重複岬角において第25脊椎が第1仙椎をなすことは,わりあい頻度が高く,全例の約8%である.仙骨の弯曲が単一で,第26脊椎が第1仙椎をなすことはふたたび少なくなり,全例の約4%である.重複岬角で,第26脊椎が第1仙椎となることもごく稀である.

 普通の状態としては,すべての仙椎は骨結合によってたがいに結合しているが,例外として,下肢帯と関節結合している第1仙椎が,完全に分離していることがある.この第1仙椎の横突起は耳状面の形成にあずかってはいるが,残りの外側部とは靱帯群によって結合しているにもすぎない,また関節と椎間円板とは第1および第2仙椎間で完全に保たれているけれども,その椎間円板はなんといっても薄い.このような仙骨では岬角は常に重複している.上方の岬角はいわゆる「高位hochstehend」のもので,ほとんど耳状面をぬきんでていない.

 仙骨の弯曲が単一な場合にも高位や低位の岬角をもつ極端な形が区別される.仙骨のいろいろな形が,下肢帯は上方へ移動することによって生じると考えると(Rosenberngが示したようにこの移動は胎児において実際に起こるのであるが),低位の岬角というのは,耳状面が1つ上位の脊椎へ,まさに足を踏み入れようとしている時期にできたものにちがいない.耳状面が1つ上の脊椎へ足を踏み入れてしまうと重複岬角をもつ仙骨がつくられ,上方の岬角は高位に位置することになる.耳状面がさらに押し進むと第1・第2仙椎間の角がなされて,仙骨弯曲は単一となって,この状態ではなお高位の岬角をもつ.しかしさらにいっそう耳状面が移動すると,岬角は1度中間位をとった後,ふたたび低位となることもありうる.ところで,この上方へ向かって進む仙骨の形成がどのくらいの範囲に起こるかのちがいによって,最初の原基は同じでも,仙骨のさまざまの形が作り出されうるとはいえ,やはり胎児の原基にすでに個体差があるという考えから離れるわけにはいかない.

 仙骨の上界も,いわゆる腰仙移行椎lumbosakraler Übergangswirbelが存在すると,左右非対称を示すことがある.この移行椎の横突起の1つの方は腰椎型で,もう1つの方は下肢体と関節結合しているのである.そして仙骨型の横突起の方は,残りの外側部と結合組織結合または骨結合をしている.岬角はこのような場合には常に重複している.

 最後の仙椎とみなされるべきものは,その横突起が外側部の形成にあずかる最後のものでなければならない.第28, 29, 30, 31の脊椎がこの資格をそなえるものとされている.

 脊椎が1個でしか外側部の形成にあずからない場合には仙尾移行椎sakrokaudaler Übergangswirbelとよばれる.最後の仙椎の椎体と椎弓痕跡とが,1つ上の脊椎のそれらの部分と骨結節でくっついているとは限らない.しかしまた第1尾椎の椎体と椎弓切痕とが仙骨と骨結合をしていることもある.Rosenbergによって記載された1例では,第1と第2の尾椎(第32および33脊椎であった)に至ってもなお,その椎弓痕跡が右側で骨結合によってたがいにつながっていた.

 脊柱のいろいろな部位の変異は,いままでに述べたことからもわかるように,たがいに一定の相関関係ををなしている.胸郭の下部,脊柱の腰部,仙骨,尾骨では,この相関関係が非常にはっきりしている.胸郭の下端が短縮すると,腰椎と仙椎の境界も,仙椎と尾椎の境界も上方へずれていることが普通である.これに反して,胸郭の下端が正常の範囲を超えて延長しているときには,仙骨の上界と下界も下方へずれていることが常である.

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最終更新日13/02/03

 

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