Band1.154   

 大翼Alae magnaeは外側上方へ伸びており,そのいちばん端の点を頭頂角Angulus parietalisという.

 大翼の基部にある前方の管は正円管Canalis rotundusで,前方へ走り,三叉神経の第2枝がこれを通る.大翼の後縁に近い方に,三叉神権の第3枝が通る大きい卵円孔Foramen ovaleがある.さらに後縁のごく近くには棘孔Foramen spinaeがあり,これは中硬膜動脈と,三叉神経第3枝の細い硬膜枝の通るところである.

 大翼には5つの面がある.即ち内面は大脳面Facies cerebralisが1つ,外面は眼窩面Facies orbitalis,[形上]顎面F. sphenomaxillaris,側頭面F. temporalis,および側頭下面F. infratemporalisの4つである.大脳面はへこんでいて,中頭蓋窩の一部をなし,前にも述べた基部の各孔のほかに,浅い脳回圧痕や低い脳隆起があり,さらに前方の部分には中硬膜動脈の前枝のためのかなり大きい溝がみられる.眼窩面は平坦な菱形の面で,眼窩の外側壁の一部をなす.側頭面は5つの面のうちで最も大きく,側頭下稜Crista infratemporalisという隆起線によって,大きい上部と小さい下部とに分かれる.そして後者を時に側頭下面Facies infratemporalisとよぶのである.[形上]顎面は前面の一部で,正円管が開口するところである.

 大翼の縁はやはり3つある.そして3縁とも異なった様相の2つの部分に分けられる.上縁は大翼の基部から一番高い尖端まで伸びている.上縁の内側部は刃物のように鋭くなっていて,上眼窩裂の下縁をなしている.また外側部は広い粗面で,一部は鋸の歯のようなギザギザし,一部はノミの歯のようにとがった接合面で頭頂骨(後で)および前頭骨(前で)と接着し,前頭縁Margo frontalisとよばれる.前縁は上部がギザギザしていて,頬骨と結合する部分で,頬骨縁Margo zygomaticusとよばれ,下部は滑らかで下眼窩裂の上縁をなしている.

 後縁の前部は側頭骨の鱗部と境を接するので,鱗縁Margo squamalisという.この部は前の方では外方に歯のついたノモの形をしており,うしろの方はギザギザした粗面をなしている.後縁の後部はその凹凸に富む外側半で錐体に接し,滑かな内側半で破裂孔Foramen lacerumの縁の一部をつくっている.後縁の前後両部がつくるとがった角の近くに,下面から1本の鋭い突起が下方へ出ている.これを蝶形骨棘Spina ossis sphenoidisという.

 蝶形骨の第3の突起,翼状突起Processus pterygoidesは体および大翼から下方へ伸びている.この突起は外側板Lamina laealisと内側板Lamina medialisという2枚の非常にことなった骨板からなる.これらのうち内側板の方は初めに軟骨性にできる置換骨でなくて,結合組織骨なのである.

 これらの稜骨板のあいだに翼突窩Fossa pterygoideaというへこみが抱かれれる.翼突窩は下方へ伸びて翼突切痕Incisura pterygoideaとなっている.内側板は下端に翼突鈎Hamulus pterygoideusというカギ状の突起をもっている.この突起には翼突鈎溝Sulcus hamuli pterygoideiとう滑らかな溝があって,ここに口蓋帆張筋の腱をうけている.内側板の基部からは1枚の薄い骨板が内側に向かって,蝶形骨体の下面へ伸びている.これがすでに述べた鞘状突起Processus vaginalisである.この突起の自由縁に各側1つずつの鋤骨翼が接して,それによって頭底咽頭管Canalis basipharyngicusという管が囲まれる.鞘状突起の外側に,今まで述べたのとは別の溝あるいは骨の中を通る管がはっきり認められることがあり,これは口蓋骨によっておぎなわれて,咽頭管Canalis pharyngicusをなしている.内側板の基部の後面には内側下方へ傾いた浅いくぼみがあり,これを舟状窩Fossa scaphoidesという.その後外側に耳管溝Sulcus tubae pharyngotympanicaeが長く伸びている.この溝は耳管の軟骨が付着するところである.翼状突起の基部は翼突管Canalis pterygoideusによって矢状方向に貫かれている.翼突管は前方ではロウト状に開き,ここから下方へ翼口蓋溝Sulcus pterygopalatinusという溝に続いている.この溝は口蓋骨と上顎骨とによってかこまれて,翼口蓋管Canalis pterygopalatinusという管になっている.

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最終更新日13/02/03

 

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