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 下垂体窩の中でその正中部に(成人では3.0%に)1本の重要な管の上口が認められる.この管は蝶形骨の体を貫いて,その下面で終わっている.これが頭蓋咽頭管Canalis craniopharyngicusで,ヒトでは胎生規の最初の2ヶ月間は必ず存在し,下垂体管Hypophysengangを容れている.しかしやはりここに存在する静脈の通る管と混同してはならない(Sokolow).

 頚動脈溝の終わりの部分は,小翼突起と中鞍突起とを結ぶ骨質の橋わたしによって,内頚動脈の通りぬける孔になっていることが少なくない.この骨質の橋はさらに後方にのびて,鞍背突起にまで達することがある.蝶形骨小舌の対岸にも,同様に弯曲した骨質の小板が内側にあって,そのために頚動脈はここでは骨性の半管で抱かれるのである.-卵円孔と棘孔とは合流していることがあり,また後方へ骨壁が開いていることさえもある.-卵円孔の内側に,かなり大きい静脈孔が大翼の基部を貫いていることがある.-上眼窩裂が大小両翼の結合によって外側で閉じていることは,しばしば見られるのである.

γ)篩骨Os ethmoides, Siebbein (図219221, 226, 268270)

 篩骨は立方体にちかい形の骨で,その大きさのわりには非常に軽い.それはこの骨が薄い骨板の間に多数の空隙が抱かれているからである.篩骨には正中部の垂直な板と,その側方にある2つの部分とが区別され,これらは上方で,フルイのように孔のあいた水平な板でつながり合っている.

 正中部の板すなわち正中板Lamina medianaは鼻中隔の上部をなす.正中板の上縁は,前方でとくに強く高まったトサカの形をなして,頭蓋腔のなかへ突き出ているので,ここを鶏冠Crista galliという(図226).鶏冠の前縁は垂直で,ふつう1本の溝をもち,下端は両側で翼突起Processus alarisという短い突起によって限られている.そして鶏冠の前縁とこの突起とで前頭骨の盲孔にかぶさり,盲孔はかくして形成されるのである.

 篩板Lamina cribriformisは鶏冠の両側にあり,その上に脳の嗅球が乗る.篩板は多数の小孔で貫かれ,ここを嗅糸ならびに前篩骨動静脈および同名神経が通りぬける.

 左右の側部すなわち篩骨迷路Labyrinthi ossis ethmoidisには壁のうすいかなり多数の空所がかこまれており,これを篩骨洞Sinus ethmoideiとよぶ.篩骨洞は前篩骨洞後篩骨洞Sinus ethmoidei aneriores et posterioresにわけられる.

 左右各々の篩骨迷路の外側面はその一部が薄い滑らかな骨板で被われており,これ眼窩板Lamina orbitalisまたは紙様板Lamina papyracesという.しかし篩骨迷路は前方では紙様板で被われていないので,,ここでは涙骨と上顎骨の前頭突起とに被われる.篩骨迷路の前下方部からサーベル形に弯曲した長くて薄い骨板が伸びている.これが鈎状突起Processus uncinatusで,後下方へ伸びて上顎洞への入り口を一部閉ざしている.またその後下端は下鼻甲介の篩骨突起に達して,しばしばこれと骨性に結合している(図270).

 篩骨迷路の内側面は鼻腔の外側壁の形成にあずかっている.この面は何本かの溝のある,デコボコした薄い骨板からなり,上方では篩板につながって,嗅糸とその枝の通る多数の管や溝をもっている.この面のうしろ半分には1本の深い溝がある.これが上鼻道Meatus nasi superior, oberer Nasengangで,ここに後篩骨洞が開口する.この溝の上へ突きだしている低い骨稜は上鼻甲介Concha nasalis media, mittlre Muschelで,その自由縁は角ばった曲がりの1線を描いている.中鼻甲介Meatus nasi medius, mittlerer Nasengangの天井をなしている.中鼻道の前方の部分から篩骨漏斗Infundibulum ethmoideumというロウト状の道が,鈎状突起と篩骨胞の間を経て,上顎洞および(50%において)前頭洞に通じている.

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最終更新日13/02/03

 

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