Band1.162   

この管は錐体の下面の中央で頚動脈管の外口にはじまり,初めはかなり垂直にのぼてって,中耳の前壁の大きい部分を形成し,それから迷路の蝸牛の下で前内側方へ向かってほとんど直角に曲がり,軽い登り坂をなして,錐体尖で内口に終わる.錐体尖のところでは,頚動脈管の上壁は不完全にできていることが多い.頚動脈管からごく細い2本の頚鼓水管Canaliculi caroticotympaniciが鼓室に通じている.

2. 顔面神経管Canalis n. facialisは内耳道底の上部にはじまり(図227),ほとんどまっすぐに前方へ顔面神経管裂孔Hiatus canalis n. facialisにむかい,それから鋭い角をなして後外側方へ折れまがって,ここに顔面神経管膝Geniculum canalis n. facialisを形成する.それから鼓室と外側骨半規管の露出部との間に位置を占めながら,鼓室の前庭窓の上を通過し,外側半規管の下でふたたび今度はゆるいカーブで,下方へ向きを変え,茎乳突孔Foamen stylomastoideumに終わるのである(図233).このカーブの下で,鼓室の錐体隆起eminentia pyramidalisが,顔面神経管の壁につづいている.顔面神経管は茎乳突孔に開くすぐてまえで鼓索神経小管Canaliculus chordae tympaniとう重要な管を出す.この管は前上方へ伸びて鼓室溝の後縁にごく近いところで鼓室に開口する.

 顔面神経管の下部は乳突小管Canaliculus chordae tympaniと交叉している.この管は頚静脈窩にはじまって鼓室乳突裂に終わるものである.

 つまり顔面神経管の全経路は3つの部分にわかれるのである.膝に至るまでが第1の部分で,蝸牛と前庭との間で,それらの少し上方に位置している.第2の部分は中耳にあって,その位置は前庭窓と外側骨半規管の露出部によって定まっている.第3の部分は鼓室の後壁から1~2mmはなれて,それに平行して,ほとんど垂直に下方へ走っている.

3. 鼓室小管Canaliculus tympanicusは錐体小窩のなかで鼓室小管の外口Apertura externa canaliculi tympaniciにはじまる.そして鼓室の下壁を貫いて,鼓室小管の鼓室口Apertura typanica canaliculi tympaniciをもって鼓室に開く.それから先は鼓室の内側壁にある岬角溝Sulcus promunturiiを通って上方へむかい,鼓室の上壁にある小浅錐体神経小管の鼓室口Apertura tympanica canaliculi n. petrosi superficialis minorisにいたる.小浅錐体神経小管Canaliculus n. petrosi superficialis minorisは鼓室の上壁を貫いて,顔面神経管裂孔の外側で,錐体の大脳面に開く.この開口が小浅錐体小管の内口Apertura interna canaliculi n. petrosi superficialis minorisである.

4. 頚動脈管の上部と平行に,その外側壁に接して筋管総管Canalis musculotubalisが走っている.その上半部が鼓膜張筋半管Semicanalis m. tensoris tympaniであって,下半の広い方の部分が耳管半管Semicanalis tubae pharyngotympanicaeである.両管ともに後外側方へ伸びて,鼓室の前壁に開口する(図232).

5. 前庭小管Canaliculus vestibuliは迷路の前庭に前庭小管の前庭口Apertura vestibularis canaliculi vestibuliではじまり,錐体の大脳面で前庭小管の内口Apertura interna canaliculi vestibuli(図229)をもって開口する.

6. 蝸牛小管Canaliclus cochlearは迷路の前庭に蝸牛小管の迷路口Apertura labyrinthica canaliculi cochleaeをもってはじまり,錐体の頭底面で蝸牛小管の外口Apertura externa canaliculi cochleaeとなって終わる.

 頚静脈孔内突起の前にある切れ込みと,そこから出て錐体部の下面に伸びる溝とが(4%において)管をなしていることがある.これが“Canalis glossopharyngei”(舌咽神経管) (v. Hayek1929)とよばれるもので,その中を舌咽神経が通る.

鼓室部Pars tympanica

 鼓室部は外耳道Meatus acusticus externusの底と側壁とをなしている.鼓室部の自由縁(外側縁)は側頭鱗とともに骨外耳孔Poorus acusticus externus osseusを囲んでいる.

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最終更新日13/02/03

 

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