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すなわち前の大きい方の切痕は眼窩頭蓋管Canalis orbitocranialisとなり,うしろの小さい方の切痕は眼窩篩骨管Canalis orbitoethmoideusとなるのである.あるいはこれら両管が,前頭骨だけ,またはいっそうまれに眼窩板だけによって形成されていることもある.

 縫合の痕跡が鼻縁から正中線上を上方へ伸びていることがある(図273).それはっこの骨が左右の両側半から生じたことを示すものである.前頭縫合Sutura frontalisがいつまでも存続する例も少ない.

 前頭洞の大きさは非常にまちまである.小さくて,やっとエンドウ豆ほどの大きさのが在るかと思えば,はなはだよく発達して前頭鱗や眼窩部にまで伸びていることにもある.眼窩部へ伸びている場合,それが異常に発達している例では蝶形骨の小翼,さらには大翼の中にまで達することがある.こうなると前頭洞が眼窩の上壁全体と側壁の一部にわたって位置を占めることになる.

γ)鼻骨Os nasale, Nasenbein(図239, 240, 268270)

 鼻骨は鼻腔の上前部の壁の一部を成している.上の方では厚くて狭いが,下の方ではかなり広く薄くなっている.

 鼻骨の上縁は前頭骨と結合するために強くギザギザがついている.

 鼻骨の上縁は前頭骨と結合するために強くギザギザがついている.下縁はとがった縁をなし,多少とも深いきれこみが1つ,内側縁よりに認められることが多い.外

側縁は上顎骨の前頭突起と結合し,内側縁は他側の鼻骨と結合している.前面は上部でややへこんでいるほかは凸面をなしている.後面には前篩骨神経の1枝のために篩骨溝Sulcus ethmoideusという1本の溝がある.この溝から骨を貫いて前面へ,鼻骨孔Foranlen nasaleという小さい孔が開いている.

 左右の鼻骨はしばしば不同である.まれには左右の鼻骨の下縁が前方で合する角のところに鼻間骨Ossa internasaliaという独立した骨がみられる.

δ)涙骨Os lacrimale, Tränenbein(図243, 268270)

 涙骨はうすい板状の骨で,前方は眼窩の内側壁で紙様板と上顎骨の前頭突起とのあいだにあり,上方は前頭骨に達し,下方は上顎骨の眼窩面に達している.

 外面は眼窩に面しており,前の方に1本の縦の流が垂直方向に走っている.これが涙嚢溝Sulcus lacrimalisで,上顎骨の前頭突起の回名流とともに涙嚢窩Fossa sacci lacrimalisという涙嚢を容れる長細いくぼみをつくる.涙嚢溝はそれよりうしろの眼窩面の部分からは1本の鋭い稜線でしきられている.これが後涙嚢稜Crista lacrimalis posteriorで,下方へ伸びて涙骨鈎Hamulus lacrimalisという,他方ヘカギ状にまがった突起に続いている.涙骨鈎は上顎骨の前頭突起の前涙嚢稜に接続している.涙骨の下縁の前部は上顎骨に接し,また下鼻甲介の涙骨突起とも結合している.涙骨の内面は前篩骨洞に外方からふたをして,それによって紙様板をおぎなっている.また涙骨の内面は下方で中鼻道に面している.

ε)鋤骨vomer,Pflugscharbein(図226, 241, 242, 272, 275)

 鋤骨は不対性で,うすい不等辺四角形の骨板である.左右の鼻腔の間で垂直に立っている.この垂直な部分は正中面にあるとはいうものの,やはりどちらか1側にまがっていることがしばしばである.この垂直板は上方で中央の溝によって左右1枚ずつの鋤骨翼Alaevornerisに分れている.

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最終更新日13/02/03

 

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