Band1.171   

c)内臓頭蓋の付加骨(被蓋骨)
α)上顎骨Maxilla, Oberkieferbein(図244248, 268270)

 上顎骨は臓弓性骨格に属する主要な骨の1つで,眼窩の底・鼻腔の底と側壁・口腔の天井の形成にあずかり,左右それぞれ上歯列の歯の全部をになっている.

 上顎骨には1つのと4つの突起が区別される.すなわち歯槽突起・口蓋突起・頬骨突起・前頭突起である.

 Corpus maxillaeを3面を有するピラミッド形とみれば,その底は鼻腔面Facies nasalisで鼻腔に面し,その頂点は頬骨突起ということになる.ほかの3面は前面Facies anterior,うしろの側頭下面Facies infratemporalis,上方の眼窩面Facies orbitalisである.

 前面Facies anteriorは第1大臼歯のあたりから発する鋭い隆起線すなわち頬骨下稜Crista infrazygomaticaと頬骨突起の付着とによって後面から分けられている.前面の上縁を眼窩縁Margo orbitalisという.上縁の5mmぐらい下方に卵円形の眼窩下孔Foramen infraorbitaleがみられる.これは眼窩下管Canahs infraorbitahsの前の出口である.この孔の下に浅い犬歯窩Fossa caninaがあるが,その位置と大きさは非常にまちまちである.前面は内側に鼻切痕lncisura nasahsという鋭いきれこみをもっており,ここへ鼻腔面が伸びて来ている.

 頬骨突起と頬骨下枝とのうしろにある後面すなわち側頭下面Facies infratemporahsには後方へ向ってふくらんだ上顎結節Tuber maxillaeという高まりがある.

 上顎結節は下方の少し細くなった部分に続いており,この部分は口蓋骨の錐体突起と蝶形骨の翼状突起の付着する粗面をなしている.この粗面を下内側へ向って1本の滑かな溝が通っている.この溝は口蓋骨の溝とあわさって,口蓋管Canales palatiniをなすのである.

 上顎結節には歯槽孔Foramina alveolariaという孔が2, 3個あいていて,後方の歯に達する神経や血管がこれを通って歯槽管Canales alveolaresに入る.側頭下面の上内側隅ではかどばっていて,凹凸があり,口蓋骨の眼窩突起の付着部をなしている.

 上面すなわち眼窩面Facies orbitalisはかなり平らで,三辺形をなし,外側へ傾斜しており,前面とのさかいは眼窩縁Margo orbitalisという鋭い稜をなしている.眼窩面の後縁は下眼窩裂を下方から境している.また内方の縁は口蓋骨・篩骨の紙様板および涙骨と接している.眼窩面には眼窩下溝Sulcus infraorbitahsという溝があって,そこで平面が中絶している.この溝は後縁にきれこみをつくり,前方へ走って次第に眼窩下管Canahs infraorbitalisという完全な管に移行する.

 内面すなわち鼻腔面Facies nasalisは鼻腔の周壁の一部をなしている.この面には不規則な四辺形の広い口が開いている. これは上顎洞の開口で,上顎洞裂孔Hiatus sinus nlaxillarisとよばれる.前頭突起へ移行するところに横走するデコボコした隆起がある.これは下鼻甲介のつくところで[]介稜Crista conchalisとよばれる.鼻甲介稜は前頭突起の涙骨縁と合して,後方へむかう1本の隆起線を形成する.この隆起線は涙嚢溝Sulcus lacrimalisを前方から抱いている.また涙嚢溝の後縁をなすものは,上顎洞裂孔の前縁の上部から起って涙嚢溝を抱くように巻きこんだ小骨板(ヘンレの半月Lunula von Henle)である.

 上顎洞Sinus maxillaris,Oberkieferhöhleまたハイモア腔Highmorehöhleとも呼ばれ,大きい広い空所で,その形は上顎体の形と同様に3面をもつピラミッド形である.上顎洞は中鼻道に開口する.

S.171   

最終更新日13/02/03

 

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