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 この縫合はゲーテの切歯縫合Sutura incisiva Goetheiとも顎間縫合Zwischenkiefernahtともよばれ,鼻腔面にもあらわれていることがある.すなわち切歯管の鼻腔口から鼻切痕と平行して鼻甲介稜の近くにまでたどることができる.この結合は切歯骨Os incisivum(顎間骨Zwischenkiefer)の境界を示すものである.切歯の上で,鼻腔への入口の下に鼻前窩Fossa praenasalisという存在の不定なくぼみかおる.

 これは下等人種でいっそう深くて,その出現頻度も高い.――切歯骨の欠如した1頭蓋をFischelが記している.Anat. Anz., , 27. Bd.,1905.――非常にまれには切歯縫合が犬歯と第1小臼歯とのあいだの槽間中隔に達している.Schumacher, S., Anat. Anz., 29. Bd.,1906.――上顎体の空洞形成は篩骨からはじまる.上顎洞の中に甲介を有している哺乳動物がいくつかある.――上顎体の眼窩面の内側縁にしばしば眼窩蜂巣Cellulae orbitae(Halleri)があって,篩骨迷路をおぎなって,これを完全にすることに与かっている.――Michio Inoue,Der Zwischenkiefer. Anat. Hefte, 45. Bd.1912.

β)口蓋骨Os palatinum(図246251, 268270)

 口蓋骨は上顎骨をうしろから補なって,骨口蓋の後部をつくるとともに,鼻腔の外側壁の一部をもなしている.形はLという文字に非常によく似ていて,水平垂直の各1枚の板からなり,それにいくつかの突起がついている.

 水平な板は口蓋板Lamina palatinaとよばれ,その後縁は薄くなってとがって自由縁をなし,骨口蓋のうしろの境をなすとともに,軟口蓋すなわち口蓋帆の付着部にもなっている.

 口蓋板の前縁は横口蓋縫合Sutura palatina transversaによって上顎骨の口蓋突起と結合し,内側縁は正中口蓋縫合Sutura palatina medianaによって他側の口蓋骨と結合している.口蓋板の鼻腔面Facies nasalisには,正中部で左右の口蓋板が結合するところに鼻稜Crista nasalisが鼻腔へ向って出ている.鼻稜は後方で後鼻棘Spina nasalis posteriorという鈍い突起になっている.外側で,口蓋板と上顎板の結合するところに,口蓋板の下面に1本の溝があって,翼口蓋管Canalis pterygopalatinusの形成にあずかっている.口腔に面する口蓋面Facies palatinaはデコボコしており,鼻腔に面する鼻腔面Facies nasalisはなめらかで,左右がもちあがって中央が低くなっている.

 垂直の板は上顎板Lamina maxillarisとよばれ,薄くてこわれやすく,蝶形骨の翼状突起の内側面および上顎体のこれと隣接する部分に接している.

 上顎板の内面すなわち鼻腔面Facies nasalisは鼻腔に面し,ちょうど中ほどの高さのところに,水平方向の隆起線がはっきりみとめられる.これが[]介稜Crista conchalisで下鼻甲介が付着するところである.

 上顎板は鼻甲介稜より下方で,かぎのてに外側へ折りかえって下後方へ向う突起をつくっている.これが上顎突起Processus maxilllaris(図251)で,上顎骨の上顎洞裂孔の下縁にはまりこんでおり(図268),下鼻甲介の上顎突起とともに下鼻道の外側壁の一部をつくっている(Elze).

 上顎板の外面すなわち上顎面Fades maxillarisは上から下へ翼口蓋溝Sulcus pterygopalatinusで貫かれている.この溝は上顎骨および翼状突起とともに翼口蓋管Canalis pterygopalatinusを形成する.上顎面はこの管より前では上顎骨の鼻腔面に接して上顎洞裂孔を後方からせばめており,またこの管よりうしろでは,下方で上顎骨の後縁と結合し,上方で翼状突起の内側面と結合している. またこの管のほぼ中央で1つの小さい孔が上顎板を貫いている.この孔は下鼻甲介より上で鼻腔に開口し,その中を細い神経が通っている.

 口蓋板の後外側隅で,上顎板は外側後下方へ向くがつちりちりした突起をなしている.これが錐体突起Processus pyramidalisで,この突起には縦走する2本の粗な溝(内側翼突溝と外側翼突溝Sulcus pterygoideus medialis et lateralis, Elze)があって,その間に滑かな浅いくぼみをはさんでいる.

 このくぼみは頭蓋では蝶形骨の翼状突起の翼突切痕の中にあらわれる.

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最終更新日13/02/03

 

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