Band1.183   

全体としての頭蓋

 頭蓋には頭蓋函と顔面部とが区別される.前者は前頭骨・頭頂骨(2個)・後頭骨・蝶形骨・側頭骨(2個)・篩骨の8個の骨で構成されている.そのうち初めの3つは扁平骨であって,それぞれに,緻密骨質でできた外板Lamina externaおよび内板Lamina internaがあって,両板のあいだには海綿質がある.この海綿質は頭蓋函ではとくに板間層Diploe とよばれ(図178263)その中を板間管Canales diploiciという広い静脈管が通っている.頭蓋の外面をおおう骨膜を頭蓋骨膜Pericraniumという.後頭骨・蝶形骨・側頭骨・篩骨・前頭骨の一部は頭蓋底Basis cranii,Schädelbasisをつくる.

a)頭蓋縫合Suturae cranii,Schädelnähteと頭蓋軟骨結合Synchondroses cranii

 下顎骨・鼓室小骨・舌骨をのそいたすべての頭蓋骨は,縫合か,軟骨結合か,骨結合のいずれかによってたがいに結合している.縫合は網のように頭蓋の内外両面にひろがっているけれども,内面の網が外面のそれとすべての場所で一致しているわけではない.骨と骨とを結合するいわば接着剤となるものは,縫合においては結合組織であり,軟骨結合においては軟骨である.

 縫合においてたがいに結合される骨の縁はいろいろな形をしており,直線的なものや蛇行しているものがあり,その程度もさまざまである.このようないろいろな走り方はそれぞれの縫合に型が定つているが,また大きい個体差が,とくにいわゆる鋸状縫合Zackenähteでみとめられる.鋸状縫合は非常に多くの鋸歯状の凹凸をもつこともあれば,かなり直線に近い走行を示すこともある.それで程度の違った鋸歯の少い縫合鋸歯の多い縫合”zackennarme und zackenreiche Nähte”が区別される.

 頭蓋冠(図262, 274)にはほぼ平行する2本の縫合が前後にある.これが冠状縫合Sutura coronaria, Kranz nähtと人字縫合Sutura lambdoides, Lambdanahtである.冠状縫合の中央と人字縫合の頂点とは矢状縫合Sutura sagittalis, Pfeilnahtによって結ばれている.矢状縫合は胎児や子供では前頭縫合により更に前方まで伸びているが,前頭縫合はのちに骨化して,たいてい完全に消失してしまう(168頁参照).

 冠状および人字縫合はそれぞれ下端で,矢状縫合にだいたい平行しながら上つたり下つたり蛇行している1本の長い縫合と合している(図274).この縫合の形成には,上方で前頭骨と頭頂骨,下方で頬骨・蝶形骨の大翼・側頭骨の鱗部および乳突部があずかっている.すなわちこの縫合は頬[骨]前頭縫合Sutura zygomaticofrontalisではじまり,[]前頭縫合Sutura sphenofrontalisおよび蝶骨頭頂縫合Sutura sphenoparietalisとなって上方に凸のカーブをえがきながら蝶形骨大翼の上縁に沿って伸び,ついで頭頂側頭縫合Sutura parietotemporalisとなって,いっそう強く上方に凸出したさらに長い第2のカーブをえがいて後下方へ走り,最後に頭頂乳突縫合Sutura parietomastoideaとなって後方へ走る.

 頭蓋の側壁を矢状方向に走るこの縫合は,上方からは冠状および人字縫合をうける一方,反対の方向すなわち下方へは次の3つの縫合を送り出している.

1. 蝶[骨]頬[骨]縫合Sutura sphenozygomaticaは下眼窩裂の丸味をおびた外側端に終っているが,翼口蓋窩のなかにまで続いて,この窩の下端から,蝶形骨の翼状突起と口蓋骨の錐体突起のあいだの縫合を派生させている.

2. 蝶[骨]鱗縫合Sutura sphenosquamalisは側頭骨の錐体の前を横走している[骨]錐体裂Fissura sphenopetrosaに終っている.蝶[骨]錐体裂の中には[骨]錐体軟骨結合Synchondrosis sphenopetrosaがある.

3. 後頭乳突縫合Sutura occipitomastoideaは頚静脈孔にまで伸びている.さらにここから内側へ錐体後頭裂Fissura petrooccipitalisがづき錐体後頭軟骨結合Synchondrosis petrooccipitalisを含んでいる.頭蓋底の内面には,蝶形骨の小翼と前頭骨の眼窩部とのあいだに[骨]眼窩縫合Sutura sphenoorbitalisがあり,さらにその内側のつづきとして[骨]篩[骨]縫合Sutura sphenoethmoideaがある

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最終更新日13/02/03

 

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